復活祭に食べられてきた「ローマ風カルチョーフィ(アーティチョーク)」。「メントゥッチャ」と呼ばれるミントの一種が欠かせない=PIXTA

このように、謝肉祭、四旬節をへて、ようやく復活祭を迎える。ローマではカルチョーフィ(アーティチョーク)が旬となり、ニンニクとハーブを芯に詰めて煮た「ローマ風カルチョーフィ」を食べる習慣が昔からあった。

春に生まれる子羊も、命の復活を祝う喜びにつながる。卵黄とレモン汁で風味づけした「子羊のブロデッタート(煮こみ)」など、子羊料理をローマっ子たちは食べてきた。

北イタリア発祥の復活祭の菓子「コロンバ」。(菓子・写真提供:Litus)

では、本家本元のカトリックの総本山、バチカンでは復活祭に何を食べるのだろうか。それを明かした本が、『ザ・ヴァチカン・クックブック』(英語版、2014年刊)。書いたのは、バチカンの門の前に立ち、教皇らを警護するスイス衛兵である。およそ500年の歴史ある職だ。

この本によると、復活祭の料理は、「ウサギ肉のアーモンドソース」。ウサギは卵や羊と同じく、命の復活を祝う多産のシンボルとして食される。シナモンとオールスパイス(ジャマイカペッパー)をすりこんだウサギのヒレ肉を焼き、炒めたタマネギと砕いたアーモンドに鶏のブイヨン、生クリーム、レモンオイル、タイムを加えたソースでいただく。

イタリア料理に詳しい方なら、この料理に疑問をもつにちがいない。アーモンドは主にシチリアでとれる食材だし、かといって、シチリア料理で生クリームが使われることはまれだ。オールスパイスもイタリア料理ではまず使わない。

『ザ・ヴァチカン・クックブック』の表紙。行事食ほか、歴代の教皇が愛した料理も載っている

そう、グローバリゼーションが始まるはるか前から、バチカンには教皇をはじめ、いろいろな国籍の人が集まり、食文化がミックスされた新料理が生まれていたのだ。復活祭をきっかけに、キリスト教の行事食に目を向けてみると、さまざまなことが見えてきておもしろい。

(イタリア食文化文筆・翻訳家 中村浩子)

中村 浩子
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。著書に『イタリア薬膳ごはん』『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』『スローフード・バイブル』

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