ヴェネツィアのカーニバルでは、仮面をつけた人が練り歩く。今年はコロナ禍によりオンライン開催に=PIXTA

さらに、この四旬節の前の数日間が、「カーニバル(謝肉祭)」。「謝肉」という言葉から、「断食」に入る前にありがたがって肉に食らいつくようなイメージがある。イタリア語では「カルネヴァーレ」といい、カルネ=肉、レヴァーレ=抜く、つまり、「肉断ち」期間が始まることをもともと意味する。

イタリアのカーニバルというと、ヴェネツィアの仮面をつけた男女による酒池肉林のシーンをつい想像するかもしれないが、「もうすぐ肉断ちの期間が来るので、肉をがっつり食べておきましょう」などとは、教皇はいまも昔も呼び掛けたことはない。謝肉祭は、もはやカトリックの宗教行事ではなく、俗世の祭りや慣習になっている。冬から春へ移る大地の豊かさを祝う、古代ローマ時代の儀式が始まりともいわれる。

謝肉祭にはイタリア全土で揚げ菓子が出てくる。ローマでよく食べられる菓子の一つ、フラッペ(菓子・写真提供:Litus)

吉川シェフによると、1960年代の謝肉祭にはホテルやリストランテで、まさに「肉のミックス・ロースト」がよく食べられていた。が、現在は、年に一度も教会へ行かない国民が約3割にも増えたイタリアなので、「断食」を厳しく守る者も、肉を食べ納めする者も少なくなった。むしろ謝肉祭というと、この時期しかない菓子を食べる人のほうが多い。

イタリアのミシュラン星付き料理店2店で働き、東京・新富町にイタリア菓子専門店「Litus(リートゥス)」を開いたオーナーパティシエールの塩月紗織さんによると、「謝肉祭の時期には、イタリア全土で揚げ菓子がたくさん出てきます。地方によって呼び名が違いますが、ローマではフラッペやカスタニョーレがよく食べられます」。

謝肉祭にローマでよく食べられる菓子の一つ、カスタニョーレ(菓子・写真提供:Litus)