「ここ数年、世界の色々なところで『分断が進んでいる』と言われています。でも、美意識みたいな心の奥の部分で、分断より連続しているほうが美しい、と感じる人が増えれば、何かの問題解決のきっかけになるんじゃないかな、と考えたりしますね」

――大学では応用物理・計数工学科に学びました。アートとはどのような関係があるのですか。

「サイエンスとアートについて考えると、サイエンスは客観的な世界です。物理的な世界を支配する汎用的な法則を見つけよう、という考え方です。一方、アートは人にとっての世界の見え方とか、その人の価値観だと思うんです。僕はサイエンスのはっきりした世界観が好きだったんですが、大学生になったくらいから『人間とは何なんだろう』ということに興味を持つようになりました」

世界にまだない新しい価値観を生み出す

「人間は自分の行動や考え方に、意味を感じたい生き物だと思うようになりました。食べるとか、寝るといった単純な行動だけで人は生きているんではなくて、働いている人だったら『自分が働く意味って何だろう』とか考えたりすると思います。そうしたとき、何か意味のあることに自分のお金や時間を使いたい、と思うんじゃないかな。僕は自分にとって意味があることをしたい、それは世界にまだない新しい価値観を生み出すことでした。それがアートだったんでしょう」

小学校の裏山は自然が豊富な場所で、よく登って遊んだという(10歳前後の猪子氏)

「自然を表現するアート作品が多いんですが、小学校の裏山での体験が大きいかもしれません。原生林みたいな森があって自然が豊富で、とても立体的なんです。良くも悪くも境界なんて無くて、ぐちゃぐちゃで、それが美しいんです。そういう連続的であることが美しいと表現したいと感じたのが、創作活動の原点なのかな」

――チームラボではどのように人材育成に取り組んでいますか。

「特に育成とかは考えていないですね。それぞれの専門家が集まっているわけですから、こう育てようとか、こうなってほしいというのが無いんです。チームラボという組織で一番重視しているのは汎用的な知を発見して、ネットワーク化することです。とてもいいアイデアとか発見みたいなものを、皆が共有してすぐ使えるようにする。それが実現できれば、確実に組織としてのクオリティーが上がります。もちろん、アート集団なので作品のクオリティーが上がるということです」

入社希望者の面接はしない

「入社希望者の面接も僕はしないんですよ。15分くらい面接したって、僕にはその人が何かを生み出せるのかなんて見抜けません。僕は世の中は不確かなものであふれていると思っています。僕にとって知とか情報は、はっきりした確かなものなんですが、面接した人の中身って僕の想像にすぎないし、全く不確実で分からない。そこにコミットする時間がもったいないと思うんです」

「本当は代表が面接しなくてはいけないのかもしれないけど、それは優秀なメンバーが担当すればいいことです。それと、僕には人の中身をすぐに判断する能力なんかない、というのが一番大きいですね」

猪子寿之
1977年徳島県生まれ。2001年東大工卒、同年チームラボ創業。04年東大院情報学環中退。世界各地で作品展を開催するとともに、常設展示場を展開。これまでに全世界で累計2800万人以上の来場者を集めた。18年に東京・台場で「チームラボボーダレス」、東京・豊洲で「チームラボプラネッツ」(22年末まで)を開設。

(笠原昌人)

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