所有から体験へ アートとお金の「新たな関係」に挑むチームラボ 猪子寿之代表(下)

チームラボ代表 猪子寿之氏

最先端のデジタル技術を駆使した映像作品で注目を集めるデジタルアート制作会社、チームラボ(東京・千代田)。体験型のデジタルアート作品の評価は高く、東京・臨海部にある2つの展示場は開館1年で計350万人以上を集めたほどだ。さらに欧米やアジア、中東などで作品を披露、活躍の場を世界に広げている。代表の猪子寿之さんは「アートを買うのでなく、体験することにお金を払ってもらう仕組みを世界中で作りたい」と語り、従来の美術界の仕組みを変革しようと先頭に立つ。

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――現在につながる成功体験にはどのようなものがありますか。

「2つあります。一つはチームラボを2001年に立ち上げて、アート活動をずっと続けてきたことです。最初はお金にならないし、周囲からもほとんど評価されませんでした。僕自身、空気を読まない性格だし、世間の常識を教えてくれるような『大人の意見』に素直に耳を傾けるタイプではないことが影響しているのかもしれません。でも、ずっと続けることで活動がだんだん知られるようになって、国内外で展示会の機会を多く持てるようになりました。やり続けた、ということが成功体験です」

「もう一つは友達と活動を始めたことです。友人4人とチームラボを創業して、今も何人かのメンバーは残ってくれています。立ち上げ当初、組織の目的は特になかったんですよ。有名になりたいとか、お金もうけしようとか全くなくて、共同で何かを創造するのって楽しいよな、というところから始まったんです。それが続けてこられた理由だと思います」

東京・六本木で開催中の「チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ 六本木」では、アートとサウナを同時に楽しめる (c) チームラボ

「常設展示や大きな企画展を開くには場所や資金の確保が大変なんですが、チームラボは上場企業ではないから『何日までにいくら集める、売り上げ目標がいくらだ』といったプレッシャーがありません。先方から声をかけてもらって取り組んでいる、といった感じです。知名度が上がって声がかかるまでが長かったのですが、その期間がとても大変でしたね」

経営は幹部に一任

――経営と創作活動をどう両立しているのですか。

「僕は経営が分からないので、担当する幹部に任せています。でも、本当の意味での経営者的な役割の人って、チームラボにはいないかもしれない。経営は僕の専門分野ではないので、よく分かってなくてすみません」

「でも、お金を否定しているわけではないんです。アートや芸術は誰かからお金を払ってもらって成り立っていますが、その仕組みを新しいものにしたいのです。昔のヨーロッパでは、王侯貴族がパトロンとして芸術家にお金を払っていました。近代になると裕福な商人などのお金持ちが絵画や美術品を買って、手元に置いて鑑賞するようになりました」

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体験してお金を払ってもらう仕組みを目指す