マンション平均価格6千万円超 コロナでも90年以来の高値
高額マンションが売れています。2020年の首都圏で発売された新築マンションは3万戸を割り込み、バブル崩壊後の1992年以来の少なさでした。一方で1戸あたりの平均価格は6000万円を超え、90年以来の高値になっています。高額のマンションが安定して売れているのが理由です。
安定供給続く高額物件
販売価格が1億円以上で3.3平方メートルあたりの単価が1000万円を上回るような高額物件はここ数年、2000戸前後で安定した供給が続いていています。これが平均価格を押し上げています。
高額マンションは投資目的に購入するイメージがありますが、コロナによりニーズに変化が出てきているようです。実際にいま売りに出ている高級物件に行って聞いてきました。訪れたのは住友不動産の「グランドヒルズ目黒一丁目」。去年、完成した物件で6階建て総戸数25戸の中層型マンションです。現在販売中の部屋はすべて2億円台です。「コロナによって在宅期間が増えたことで住宅の考え方も変わってきた。実際に住むためだったり、郊外に家を持ってる方がセカンドハウスとして購入するケースが多い」(住友不動産住宅分譲事業本部の柳沢淳一氏)。リモートワークや家での時間を有意義に使うため、広くて利便性のあるマンションを好む人が増えてきているそうです。
首都圏の販売数はバブル崩壊後の1992年以来の少なさだったのも、決して需要が冷え込んだわけではないのです。コロナの影響で事業者が新築販売をストップさせたのが大きいです。「販売している都内のマンションは、新品だけでなく中古も以前と変わらず、安定して売れている」(住友不動産の柳沢氏)
東京カンテイによると、1月の中古マンション平均希望売り出し価格は東京23区で6000万円を超えました。人気の高い都心6区は前の月と比べ1.4%高い8786万円で2002年の集計開始以来の最高値を更新しています。流通量が少ないなかで価格が上がっています。
リモートワーク普及の影響は
リモートワークの普及による郊外シフトの影響はどうなんでしょうか。リクルート住まいカンパニー(東京・港)の「SUUMO住みたい街ランキング2021関東版」によると神奈川県や埼玉県など郊外エリアが人気になっています。コロナで郊外に居住を移す人も増えましたが、今後コロナが落ち着けば、オフィスで働く人が今よりも増えるのは間違いなさそうです。やはり職場に近い都心部のマンションは強そうです。
リーマンのときは金融が発端となり幅広い業種に影響が出ました。今回のコロナは外出制限による飲食店やアパレルといったサービス業のダメージが大きく、業種による濃淡が大きいです。最近は日経平均株価も戻ってきていて富裕層はコロナの影響をあまり受けていないようです。
増えるオンライン見学会
コロナにより新築販売の売り方にも変化が出ています。モデルルームを訪れることなくウェブ上で物件紹介する「オンライン見学会」が増えています。部屋の設備や周辺環境を動画で見てもらい購入してもらう方法です。コロナ過の中、移動が難しい地方在住の人に人気になっているそうです。オンライン見学のみで購入したケースもあるようです。高額な物件をオンラインだけで購入するのも富裕層の余裕のなせる技なのなのかもしれません。
(BSテレ東日経モーニングプラスFTコメンテーター 村野孝直)
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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