QBハウス、新業態の挑戦 重ねる「自己破壊」キュービーネットホールディングス 入山裕左専務(下)

「QBプレミアム」はゆったりした広さで、ウッディなしつらえ
「QBプレミアム」はゆったりした広さで、ウッディなしつらえ

ヘアカット専門店「QBハウス」は創業当初「1000円(税込み)、10分」のわかりやすさで認知度を高めた。しかし、その後の成長は自ら広めたサービスを進んで書き換えるかのような試みを重ねた結果だ。1200円への値上げはその象徴的な取り組み。さらに、「予約不可」「男性客中心」といった、従来のイメージを覆す新業態を開発して、QBハウスは今もポジティブな「自己破壊」の途上にある。

<<10分ヘアカットは創業者の不満から QBハウスの25年

日本を代表するオフィス街の東京・大手町。ここで働くビジネスパーソンの最寄り駅である東京メトロ・大手町駅の通路内に「QBプレミアム 大手町メトロピア店」はある。2020年3月のオープンからちょうど1年を迎えた。通常の「QBハウス」は入り口の券売機をはじめ、やや素っ気ないしつらえが多いが、こちらはレジがあり、ウッディな内装にも上質感が漂う。香港やシンガポールで展開してきた新業態の日本初出店だ。事業会社のキュービーネットを傘下に持つキュービーネットホールディングスの入山裕左専務は「海外で得たノウハウを注ぎ込んだ」と期待を寄せる。

料金は1650円と、通常の「QBハウス」(1200円)より450円高い。予約を受け付けているのは、「QBハウス」との大きな違い。スマートフォンを使った順番待ちシステムが導入されているので、待ち時間を店外で過ごせる。待合スペースはゆったりしていて、コーヒー(有料)も頼める。ヘアカットに加え、整髪料を使った仕上げのスタイリングサービスを受けられるのも、従来店舗との違い。店内には無料のWi-Fi、充電用コンセントが用意されている。無駄をそぎ落とした「QBハウス」の店舗とは別物と映る。

「QBプレミアム」ではコーヒー(有料)を飲んで順番を待てる

「QBハウス」は基本的に10分程度という「時短」メリットが強みの一つだ。しかし、実際の混み具合によっては、10分を超える待ち時間が発生する場合がある。プレミアムでは来店前に予約できるので、待ち時間を減らせる。あらかじめスケジュールを立てて行動したいと考える、忙しいビジネスパーソンにとっては「前後の時間を有効に使いやすいメリットがある。『時間創出企業』というミッションを、従来とは別の形で実現できる業態」(入山氏)と位置づける。

創業当初から低価格で支持を広げた「QBハウス」にとって、価格改定は客離れを引き起こしかねない鬼門だ。しかし、これまで2度の値上げを乗り切って、店舗と利用者を増やしてきた。値上げが致命的なダメージにつながらなかったのは、利用者側が「おおむね妥当」と、サービスと価格のバランスを受け入れている結果とみえる。

だが、08年に東京の戸越銀座店で当時の1000円から1050円に引き上げたテストケースでは、「期待した結果は得られなかった」と、入山氏は振り返る。この実験で導かれたのは「価格にふさわしい価値を実感してもらう必要がある」という結論。この教訓が社員教育やカットスクール開校につながる。11年からは外部に委託した覆面調査員によるチェックも導入した。サービスを磨き上げる取り組みを重ねて、14年4月の消費税率アップに合わせて、通常価格を1000円から1080円へ値上げ。さらに、19年2月に同1200円へ。しかし、客足の鈍りは想定の範囲内にとどまった。

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