実際のところ、変化に対する耐性の強い組織と、変化に慣れていない組織では、コロナによる事業インパクトへの対応スピードに、はっきりと違いが出る結果になりました。例えば、20年は外食業界には総じて苦しい1年間だったと言えますが、そんな中で日本マクドナルドの業績は大きくプラスに転じていました。

マクドナルドは、従来テークアウトやドライブスルーなどのサービスを展開していたこともありますが、近年ではマックデリバリー、ウーバーイーツ、出前館などでのデリバリーサービスや、キャッシュレス決済、モバイルオーダーなど、テクノロジーへの投資を積極的に進めていました。これらは、以前からあった社会の変化に対して、受け身にならず先手を打って変化を自ら起こしていたと言えます。こうした変化に対する事前の準備により、コロナ禍という想定外の社会の変化にも即座に対応することができたのです。

また、コロナが日本で広がり始めた20年3月、4月ごろに「学校が休校になり親子が毎日家庭で過ごす」という生活スタイルの変化を受け、マクドナルドは即座にファミリー向けのクーポンをアプリで展開し需要を喚起していました。イートインで時間を過ごす学生やサラリーマンの単身利用が減った分の売り上げを、ファミリー客のテークアウト需要を喚起することで補い、全体としてはプラスにすることに成功していました。これも、変化が起きたら即対応できる組織体制を整備していたからできたことです。

組織は分散型へ移行し、一人ひとりが自ら考え行動できる組織を目指すべき

市場・顧客の変化に対し、マーケティングチームが即座に需要喚起するアクションを打って、店舗の店長やクルーたちが新たな需要に対応できる体制を整えていたからこそ、実現した結果です。マクドナルドの今の好業績は単にテークアウトやドライブスルーがあるからというだけではなく、こうした「変化に強い組織」を作り上げていたことにあったと言えるのではないでしょうか。

このように、組織はこれから「分散型」へと移行し、「変化に強い組織」が生き抜いていくでしょう。だからこそ、現場に適切に権限委譲を行い、一人ひとりが自ら考え行動できる組織を志向してゆくべきなのです。つまり、これからは「自走する組織」を構築し、経営トップや上司に依存せず個人の強みを最大化することで、どんな環境下でも事業と組織を成長させ続けることが必要になると私は考えています。

まずは「組織カルチャー」づくりから

自ら考え行動する強い組織を育てるためには、強い「組織カルチャー」が必要です。

企業は自社のカルチャーを定義し、浸透させ、社内外に共有する必要があります。私はこれまで、様々なカルチャーの会社で働いてきましたが、どの組織にもその会社らしい良いカルチャーが存在していました。そうした経験から、組織カルチャーは「何か一つの正解があるわけではなく、それぞれの事業モデルや経営スタイルにおいて勝つための道筋となるベストを追求すればいい」という考えに至っています。

まずは、自社の組織カルチャーについて、適切に言語化し、組織に浸透させる、そこから始める必要があります。従業員のエンゲージメントを高め、満足度の高い組織を作ることで、一人ひとりは生き生きと楽しく働いていける、それこそが良いカルチャーの会社であると言えると思います。

強いカルチャーはビジネスに直結し大きな成果を生み出すと私は考えています。組織の価値観や判断基準がすりあわされていれば、意思決定やその後の実行のスピードを上げることができるためです。そしてカルチャーは、いわゆる「ルール」や「規則」とは違い、解釈の余地があり、適切な余白の中で議論が促されることで、自ら考え、行動する人材を育てることができる。それは、「自走する組織」を生む第一歩になると思います。

唐沢俊輔
2005年慶応義塾大学法学部卒、日本マクドナルド入社。マーケティング部長や社長室長としてV字回復に貢献。メルカリに身を移し人事・組織の責任者を務めた後、SHOWROOMで最高執行責任者(COO)として事業と組織の成長を推進。現在は、Almohaを共同創業し、組織開発のためのコンサルティングやシステム開発に取り組む。グロービス経営大学院 客員准教授。『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』著者。

自走するチームの作り方

日経COMEMOでは、唐沢俊輔さんが登壇するオンラインイベント「自走するチームの作り方」を3月30日に開催します。唐沢さんのほか、中竹竜二さん(元早稲田大学ラグビー蹴球部監督)、古市優子さん(Comexposium Japan代表取締役社長)をお招きし、当日のZoomチャットを起点にトークを展開します。参加費は2000円(日経電子版有料会員は無料)
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