「自走する組織」では、権限委譲しながらおのおのの判断に任せる「分散型」の組織マネジメントを行います。また、決まった型通りに安定的に組織運営をするよりも、おのおのが自走する中で、現場での化学反応的な変化に期待しながら組織を成長させていく側面ももっています。そういう意味で、「自走する組織」は4象限で言うと「全員リーダー経営」の組織モデルをとることになります。

この4つの組織モデルは、どれかが正しいということではありません。おのおののビジネスモデルにフィットしたモデルを意図的に選定し、それを組織的な強みに育てていくべきだと思います。しかしコロナ禍を経て、組織のあり方の前提が一変してしまい、今の社会に求められるのは「全員リーダー経営」、つまり「自走する組織」一択になったと、私は考えています。

その理由は2つあります。

(1)「密」から「疎」の組織モデルへ

そもそも中央集権型の組織モデルは、産業革命以降、工場などに物理的に人が集まることによって、圧倒的に生産性が向上することが証明され浸透していきました。オフィスも同様の形をとるようになり、それに伴い、情報や権限を一極集中させることで組織全体の統制をとって、生産性を高め続けてきました。

こうした組織モデルは、電車や車などの移動手段、そして高く広いオフィスビルの設計など、技術的な進化によって可能となってきたわけです。しかし、このモデルは「密」であることが組織づくりの大前提だったと言えます。コロナ禍以降、物理的に距離をとった組織運営が必要とされるため、中央集権型の強みがどうしても生かせなくなっています。

こうなると、密の反対の概念としての「疎」の社会を前提に、分散型でありながら生産的に成果を上げられる組織へと移行することが求められます。「Zoom」に代表されるオンライン会議ツールや、「Slack(スラック)」といったチャットツールなど、技術の進化により物理的に離れていても即時的なコミュニケーションをとることが可能になりました。くしくも、テクノロジーの進化により実現してきた中央集権型の世界が、次のテクノロジーの進化によって分散型の世界に取って代わられることになったと言えます。

分散型での働き方の典型はリモートワークですが、これにより「マネジメントができない」「組織カルチャーが浸透しづらい」といった課題をよく耳にします。しかし、オンライン上で無理に「密」を演出することよりも、「疎」の遠心力を活用し個の力を最大限引き出す組織マネジメントが、これから求められると思います。

働き方が変化する中、組織モデルも再考を求められる(写真はイメージ=PIXTA)

こうした分散型への力学は、コロナ禍の以前からあったものです。コロナ禍はいろいろな変化を生み出しましたが、「もともとあった流れをコロナ禍が加速させた」というのが多くの方の共通理解ではないかと思います。これは、個人の働き方だけではなく、組織論の観点でも同様だということですね。

(2)変化を前提とした組織モデルへ

VUCA(不安定、不確実、複雑、曖昧)の時代といわれて久しくなり、世の中の変化が激しくなっていることは言うまでもありません。昨今のコロナ禍を経て、私たちがより一層認識しなければいけないことは、「こうした外的な環境変化はいつでも起こりうる」ということを前提に経営する必要があるということです。

「売上高を毎年2%ずつ成長させる」といった、安定成長を志向して着実に経営したところで、外部環境の変化によりすべてがひっくり返ってしまうリスクがあることを目の当たりにしたのが2020年でした。

しかも、これから人口が減少して市場自体が縮んでいくわけですから、前年と同じことを着実に繰り返してもマイナスになる一方です。つまり、着実な安定という選択肢は極めて取りづらくなっており、変化が起きること、そして自ら変化を起こすことを前提に組織づくりをしなくてはならなくなったと言えます。

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