将来に対する不安を訴える人も少なくありません。漠然とした不安を抱く若手や、「このまま今の会社、今の業界で仕事を続けていけるのか」と悩むベテランが見受けられました。
密閉、密集、密接の「3密」を避けるために、人とも会えず気晴らしもできない――。こうした状況がさらに精神的に良くない方向に拍車をかけているといえるかと思います。
在宅勤務下でメンタル不調を訴え、休職する人も少なからずいます。相談を受けて専門医を受診してもらうと、うつ病や適応障害と診断されることが多いようです。まずは規則正しい生活、周囲とのコミュニケーションを心がけることが大切といえるでしょう。
リモートワークの執務環境
リモートワークの普及で、産業医として気になるのは執務環境です。会社であれば社員の健康保持のため、オフィスの照度や机・椅子、温度・湿度などを管理していますが、在宅勤務では社員がそれぞれ自分で注意しなければなりません。会社は在宅でも適切な執務環境を保てるようにアドバイスするなどして、社員の健康保持に努める必要があります。
新型コロナのワクチン接種が進めば、感染者数も少なくなるでしょう。多くの人が一定の抗体を持ち、免疫力を獲得するようになれば、重症化や感染拡大の恐れが低減されることが期待されます。そうなれば、私たちも普通の生活を取り戻せるはずです。
コロナ禍は私たちに不自由を強いています。ただ、その中で見えてきたものもあります。自宅に家族みんながいて、たわいもない話に花を咲かせたり――ひと昔前なら当たり前だった風景が戻り、家族のつながり、人と人の絆、互いに支え合うコミュニティーの大切さを再認識する機会にもなったかと思います。
コロナ禍は誰もが感染する可能性があるという点において平等といえるでしょう。誰もが同じように将来への不安を抱える中、互いの考えや意見を共有しながら、過ごしていくうちに、以前であれば交わることのなかった人たちが交わり、人と人の新しいつながりができてくるのかもしれません。それはリアルに限らずオンラインでもいいのでしょう。新型コロナの問題をとおして、私たちは意識改革を求められているのかもしれません。

=おわり