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2階ビジネス書売り場のエレベーターを降りた正面に設置したワゴンに並べて展示する(八重洲ブックセンター本店)

2階ビジネス書売り場のエレベーターを降りた正面に設置したワゴンに並べて展示する(八重洲ブックセンター本店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。再度の緊急事態宣言で一度は落ち込んだ人出も少しずつ戻ってきてはいるが、売り上げを大きく回復させるほどの勢いはない。都心の書店は苦境が続く。そんな中、書店員が注目したのは、教養の大切さを説いてきたビジネスパーソンによる地政学をめぐるエッセーだった。

定住から始まった地政学

その本は出口治明『教養としての「地政学」入門』(日経BP)。著者の出口氏は、大手生命保険会社をへてライフネット生命保険を起業し、社長・会長を10年務めた後、2018年からは立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務める。出口氏が一貫して説いてきたのは教養の大切さだ。今回はその流れの中で、地政学を取り上げ、縦横に語っていく。

著者がまず考えていくのは、地政学とは何かについてだ。古代文明が始まったころのメソポタミアとエジプトの関係、日本の文明の始まり、中国を地政学的に特徴づける長江(揚子江)の話などをしながら、地政学の基本を考える。人類が「定住する場所を求めたこと、求めた定住地にも苦労は生じてくること。そして結局、地理的条件に左右されること。要は、地理と人間の知恵との戦いであること」。これが地政学の基本だと著者は考える。

この基本から世界史をたどり直していくのが続く2つの章だ。著者の明快な歴史語りから、地政学がとらえる国家戦略や軍事・外交の機微が見えてくる。第2章「陸の地政学とは?」で見ていくのは欧州史。「どうすれば自分の住む国や地域がサンドイッチの具にならずに済むか、という問題」の視点から、ローマ教皇領をめぐる攻防、フランス王家とハプスブルク家の攻防、プロイセンとビスマルクの戦略がたどられ、そこからはブレグジットの本質も見えてくる。

第3章「海の地政学とは?」では、古代文明にまでさかのぼる地中海のシーレーンから、バルト海を舞台にしたハンザ同盟の興亡、大航海時代以降の海の覇権をめぐる興亡史などをたどり、現代世界の覇権を握る米国の海の軍事力にまで考察をめぐらす。

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