終の棲家、どうすればいい?
脚本家、大石静さん
終(つい)の棲家(すみか)に悩んでいます。大手企業に就職し、転勤を繰り返しているうちに、50歳になってしまいました。この先、終の棲家をいつ、どこに決めたらいいでしょうか?(愛知県・50代・男性)
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まだ50歳ですよね。人生100年と考えると、まだ半ば。80年と考えても3分の2までも行っていません。
私自身のことを考えても、50歳は、まだ30代と体力も気力も変わらず、衰えたという自覚は、まったくありませんでした。仕事ももっとも乗っていたイケイケな時代です。
そのあなたが、今なぜ「終の棲家」について悩まなければならないのでしょうか。
お子さんに資産となる家を持てとか言われたのですか? 終活が美徳とされる昨今ですが、それに洗脳されてしまったのでしょうか? 持ち家がないと不利であると、突然思われたのでしょうか?
あなたは大手企業の社員で、家賃補助が恵まれていたので、マイホームを持たなかった。多くのサラリーマンが住宅ローンに使うお金を、貯蓄に回したのか、遊興に使ったのか、何となくなくなっちゃったのかわかりませんけれども、それはそれでよいのではないでしょうか。
しっかりとビジョンを持ち、実現にまい進するだけが尊い生き方でもないと思います。
日本は高度経済成長のころから、マイホームを持ち、マイカーを持ち、毎年海外旅行に行けるような生活をするためにシャカリキに働いてこそ、立派な大人だという価値観が生まれました。
そんな中で、あなたは家を持たず楽しく生きて来た。ステキじゃないですか! そのままでよろしいと思います。
貯蓄があるなら、いい老人ホームにも入れるでしょうし、お金を使い残っていないなら、それはそれで何とかなると思って、開き直るしかないんじゃないですか。
ちなみに私も持ち家はありません。この先のビジョンもありません。何とかなるだろう……と思って生きています。親はもうなく、頼るべき兄弟も親戚もいません。ひとりぼっちでのたれ死んでも、それはそれで、私らしいことかもしれないな~と思っています。
地震列島日本では、どこにいてもいつ大地震に襲われるかわかりませんし、コロナ禍も先が見えません。安定も安心もないのです。誰も彼も、実はイチかバチかで生きているのです。そう思えば、終の棲家をどうしようかと、50歳のあなたが考えることはないのではないでしょうか。
悩まず、このまま流されて行くことをオススメします。
[NIKKEIプラス1 2021年3月20日付]
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