ファッションの進化 「欲望と飢えから」テリー伊藤氏石津祥介×テリー伊藤 おしゃれ対談(下)

ベストドレッサー賞石津謙介賞を受賞したともあるテリー伊藤さん(右)。「トラッド卒業生で、彼ほどおしゃれな人はいないよ」と石津祥介さん(東京・港の石津事務所)
ベストドレッサー賞石津謙介賞を受賞したともあるテリー伊藤さん(右)。「トラッド卒業生で、彼ほどおしゃれな人はいないよ」と石津祥介さん(東京・港の石津事務所)

ファッションを楽しむ原動力は「欲望や飢え」だった。服飾評論家の石津祥介さん、演出家のテリー伊藤さんの2人は、そう明言する。だれもまだ手に入れていない憧れのスタジャンを探し回ったこと。女性にモテたい一心でおしゃれを勉強したこと。そうした経験の積み重ねで、自由自在の着こなしが身についたのだ。かわって現代では、若者のファッションへの興味が薄れている。情報も商品も簡単に手に入り、興味の対象も多岐にわたる。そんな今、いったい何がおしゃれ心をかきたてる動機になるのだろうか。後編では、ファッションと「欲望」の関係について、2人が率直に語り合った。(この記事の〈上〉は「個性爆発のおしゃれ テリー伊藤氏『全部VANに学んだ』」




――テリーさん、こちらの写真で着ているセーター、MEN'S CLUBの表紙と同じですね。

テリー伊藤「ついに手に入れたの。55年前のメンズクラブの表紙で目にして、僕はこんな柄のセーターがほしくてほしくてたまらなかったわけ。ずーっと探していたら、この正月たまたま行った古着屋さんで見つけたの。あ、僕が好きな柄がある!って。見ると色も柄もほぼ一緒。メンズクラブのセーターはたぶんVANのものだったと思いますが、僕が買ったのはUSAの古着」

石津祥介「おそらくメンクラの表紙のセーターはVANのものだと思うよ。VANはもともとアメリカの衣料をそっくりまねて商品を作っていたからね。あるいは、輸入してVANで売っていたものかもしれないな」

1966年のメンズクラブの表紙モデルとそっくりのセーターを着たテリーさん。55年恋い焦がれたセーターを今年の正月に偶然見つけた

服は探すものだった 今は2日で届いちゃう

――それにしても、テリーさんの記憶力と思いの強さには驚かされます。服探しに情熱を傾けていますね。

テリー「昔、テレビで加山雄三さんが着ていたセーターでずっと欲しいものがあって、今でも探していますもん。僕のファッションの教科書はVANでした。VANはクラシックな方程式で、まず基本を学びました。そのあと20歳ぐらいの時に、トラッドやアイビーとは別に、ヒッピーブームにカルチャーショックを受けたんです」

「ヒッピーをみていると、トラッドの人なんて1人もいない。それから今度はロンドンのロックシーンでロンドンブーツがはやる。どうしてもほしい。既製のものが売っていないから作りに行きました。青山に『カルツェリア細野』(現カルツェリアホソノ)という伝説的な靴屋さんがありまして、そこで最初に作ったのがシルバーのロンドンブーツ。前を切った細いパンツに合わせてはいていましたよ。すると今後はDCブランドブームがきた」

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