――時代時代のファッションシーンを追いかけ、楽しんだんですね。
テリー「僕らは洋服を探さなくちゃいけなかったの。足を運んでね。でも今はある程度のレベルの洋服があちこちにたくさんあるでしょう。ユニクロに行けばいいし、ネットでも買えるし。平均値が高くなっているんですよ。昔はあのトレーナーどこで買えるんだろうと探し回って、たどり着くまで1カ月かかったんです。今は、ぱっと手に入る。ネットで買えば2日くらいで家に届いちゃう。飢え、がない。望まなくても、ある程度のファッションだったら、だれでも及第点に達しちゃう。だから、とびきりセンスのいい人が育たない環境になっているんじゃないかな」

ファッションへの関心、かき立てるのは「スター」
――インターネットで情報がどんどん入り、関心の対象が広がっていることもあります。
テリー「僕らはそれこそ、車と女の子とファッションしかなかったから」
石津「結局、おしゃれに関心があるかどうかは、異性を意識するかどうかだと思う。みゆき族だって、銀座におしゃれして現れること自体、異性を意識しているということ。軍服や作業着は異性の匂いがしないから、機能で選ばれる。長生きのコツは何ですかといわれて、僕は、異性欲、飲食欲、遊興欲、音楽欲、そして群れる欲だと答えるの。ファッションだって、異性に関心があるという、その欲望があるからこそ気を使うわけ」

テリー「車と一緒。僕らは、車があれば、女の子にモテるんじゃないか、とか、人生に勝ったんじゃないか、と錯覚するくらい、重要ポイントだった。でも今の子たちは生まれたときからすでに、ベンツの後部座席で生活しているわけだから。車に対する飢えなんてまったくない。車なんてなんだっていいわ、となっちゃう」
――そんな時代、何がファッションへの関心を刺激するのでしょうか。
テリー「今、おしゃれのセンスを得るって、もしかすると、絵なのかもしれない。僕らは知識として、赤と青と白のトリコロールは合うってわかっている。でも、絵の具を使っている人は、そこに茶色を置いてみる。あとは音楽。ファッションだって音楽的な感覚から入っていく。センスで抜きんでるなら、芸術をやっている人の方が次のファッションリーダーになりやすいかもしれません」