――「食」への関心も当時からあったんですか。

「そうですね。多感な時期の自分にとってクールに映ったのが、工業的な食に対する代替としてビール、チョコレートから、パンやチーズに至るまで、伝統的な加工品を手仕事に誇りを持ちながら作り上げる職人たちや、オーガニック野菜を作る農家の方々でした。それらは一見すると先祖返りに見えるかもしれませんが、昔から続くスモールビジネスを現代の感性でデザインしていることが、とてもかっこいいと思ったんですよね」

「大学3~4年のときには、東京・青山の国連大学前で展開していた『ファーマーズマーケット』でバイトしていました。初めて見たとき、ファッションの街で野菜を売るという行為がすごくロックでかっこいいと思って。今の勤め先との出合いもこのマーケットでした。大学4年の夏からインターンして、そのまま卒業後に入社したんです」

――就職活動はしなかったんですか。

「就活は全然ちゃんとやっていなかったですね。思ってないことを平気で言うような風潮などが、うさんくさいなと思っていて。でも自分の幸福観を、就活のときにじっくり考えることができたのは良かったです」

――幸福観とはどんなものですか。

「食事のときに誰かが一緒にいて、他愛もない話をするような時間をイメージしたんです。だから、自分の幸福とは、自分だけが幸せなときじゃない。周囲の人が明るくなる環境をつくりたいと思ったんですよね」

正しそうなことは本当に正しいのか

成田さんは明治大卒業後、「食」を発信するメディアで編集・ライターの仕事をしている(2020年11月)=成田さん提供

――思い出に残っている恩師の言葉はありますか。

「都市政策のゼミの教授が話していたことで、すごく自分に刺さった言葉があります。『正義とは多様である。しかし多様なものを全て受け入れるだけでは根無し草になってしまうから、軸を持たなければならない』。例えばエコバッグがいいという話がありますが、一方で、それを作る過程でのエネルギーがどれだけ必要なのか、という問題提起もできるじゃないですか。正しそうなことって、本当に正しいかどうか分からない。だからこそ何がいいのかを選択するためにも、勉強し続けたいですね」

――最近、何を勉強しましたか。

「『日本文化における時間と空間』(岩波書店)という本をいま読んでます。日本人って『今=ここ』という感覚が強いという話なんですけど。備えて何か対策していくのは日本人は苦手なのかもしれないなって思ったりします」

――震災について、今思うことは。

「(震災後に)『言葉と論理』という変わった授業があり、社会の先生から『復旧と復興、どっちがいいと思いますか』という問いを投げかけられて、全然答えられなかったんですよ。本当に正解はないんですけど、大人になって思うのは、復興なんだろうなと。だって変化していくじゃないですか。きのうと違うきょうが来るということを、ニュースの遠い世界の話ではなく、肌で感じてきた。だからあしたを考えて生きていかなきゃいけないって思います」

――将来の夢はありますか。

「いずれは空間や都市の『編集』をやりたいですね。つまり町づくりです。町づくりっていう言葉はあまり好きじゃないんですけど」

――どんな空間をつくっていきたいですか。

「ヒューマンな視点に欠けた都市政策って多いなと思っていて、逆に、そうじゃない面白い場所をつくっている同世代の動きがとてもすてきだなと思ってます。例えば地元の仙台市でも、数年前にコーヒースタンドをオープンした方がいて、近隣の焙煎(ばいせん)所を集め、官民連携して定禅寺通りや公園でコーヒーの催事を実施してにぎわいを生み出しています。そういう場づくりを仙台に限らず、色々なところでできたらいいなと。行きたい場所がどんどん増えていく人生っていいじゃないですか」

(聞き手は安田亜紀代)


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