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原発被災の町「大切にしまった」 柳美里さんと劇公演

震災10年・離れて今(7)福島県 新妻駿哉さん

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NIKKEI STYLE

 東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故から10年。少年少女時代に被災し、現在は進学・就職などで地元を離れている若者たちは今、故郷にどんな思いを抱いているのか。「震災10年・離れて今」第7回は、福島第1原発が立地する福島県大熊町出身で駿河台大学(埼玉県飯能市)に通う新妻駿哉(にいつま・としや)さん(19)にオンラインで聞いた。

新妻さんは震災後に開校した福島県立ふたば未来学園高校(広野町)の演劇部時代、同県南相馬市に移住した作家、柳美里さん作・演出の「静物画」に出演した。「大熊にいたのは九歳までだから、九歳までの記憶しかないんですけど、あの家と庭には大切な記憶があります」。台本には新妻さん自身の声も織り込まれている。

被災ペットと神奈川で再会

――新妻さんが2匹の愛犬と写った「故郷の1枚」。どんな思い出がありますか。

「小学校低学年のころ、大熊町内の公園で撮った写真です。名前はラッキーとハッピー。毎日散歩に連れていったり、庭で遊んだりしていました。ただ、震災翌日に避難するときには犬を連れていけなかったんですよね。それで4日後に親がいったん家に戻ったときには、いなくなっていました。あとで知ったのですが、(被災ペットを)保護してくれた団体があったんです」

「神奈川県の里親のもとにいるのがわかって、一度だけ会いに行ったんですけど、元気にしていて、むちゃくちゃうれしかった。震災から1年たってなかったと思います。2匹は同じ日に生まれたきょうだいなんですが『いつだって一緒なんだなぁ』と、思わず笑みがこぼれました」

――2011年3月11日の地震発生時は、どこにいましたか。

「当時は町立大野小学校の3年生で、揺れたのは下校途中でした。近くの建物の前にいた大人の人たちが(緊急地震速報を表示したと思われる)携帯を見てあわてて中に入っていくのをみて、なんかおかしいな、と。そしたらぐらぐらっと来て、めちゃくちゃ揺れて、なんと表現したらいいか……。ほかの子たちもしゃがんだというか伏せたというか。うずくまって下をみて、自分も含めて悲鳴をあげていたと思います。何が起こっているのかわからない、みたいな感じでした。電線も切れたのか、ぶらさがっていました」

――地震後の津波で原発事故が起きます。帰宅後はどのように避難しましたか。

「避難したのは翌12日の朝です。父の知り合いで原発関係の方が『すぐ逃げた方がいい』と教えてくれたらしく、両親と祖母、曽祖父、自分の5人で(西側で隣接する)川内村にある母の実家に行きました」

「原発が爆発した(=12日午後3時36分、1号機の原子炉建屋で起きた水素爆発)というニュースのあと、今度は福島市の親戚の家に行き、そこに何日かいて、さらに栃木県宇都宮市に移りました。はじめに避難を勧めてくれた方に『まだ福島にいるのか。県外に出ないとダメだぞ』と父が言われたんです。宇都宮ではアパートに1カ月くらい住みました。その後、学校が校舎を借りて『大熊小学校』として再開した会津若松市で1年過ごしました。今はいわき市に自宅があります」

――大熊町は現在もほぼ全域が帰還困難区域のままです。震災後、一時帰宅などで戻ったことはありますか。

「家族は何回かありますが、自分だけは行っていません。実際に見ちゃうと、イヤだからですかね……。自分の故郷が荒れ果てているのを見るのはイヤですね」

「離れてわかったんですけど、大熊町って(心と環境の)どっちの意味でも明るいんです。あったかいというか。歩いていると(離れた)向こうのほうから普通にあいさつしてくれるし、街灯が多くて夜も明るかった。おじちゃんがやっている、歩いてすぐのタイ焼き屋に千円札を握りしめてお使いに行ったこと、休日のめちゃくちゃ広い町役場の駐車場で、両親と自転車の練習をしたこと、そんな思い出もあります」

「トッシー、いい!」

――高校2年のとき、柳美里さんの演劇ユニット「青春五月党」の復活公演で「静物画」に出演されました。その経験を通して何か変わりましたか。

「うーん……。なんか、でも、吹っ切れた感じがします、大熊のことに関して。それまで若干、未練があったんですけど、すっぱりなくなった感じがあります。なんか、大切なものをボックスにしまうみたいな」

――けいこ時に柳さんから「才能がある」と声をかけられていました。どんな気持ちでしたか。

「柳さんに才能があるって言われたのは覚えているんです。それも何回か。そりゃうれしいですよ、柳さんから『いい!』って褒められたら。(呼び名は)『トッシー』でした。あるセリフを口にするとき『手をつないで輪になってみたら』とアドバイスされて、うまく感覚がつかめたことがありました。(柳さんの演出は)すごいなあというか、形容しがたい。尊敬というか。あまり言葉にしたくない感じです」

――20年春に駿河台大学の経済経営学部に進学。地元を離れていかがですか。

「家事ってめちゃくちゃ大変だなと感じました。食器を洗うときも手が冷たくて、これいてえな、みたいな。洗濯物を干すのも大変です。一人っ子で甘やかされているので、一度ひとり暮らしをして、何でも自分でやれるようになっておかないとまずいかなって思っていたんですが。両親からは『ちゃんとめし食っているか』とか『洗濯物ためてないか』とか言われています」

――コロナ下の大学生活は。

「さびしいですね。入学式もなかったし、まだ友達もつくれていません。早くコロナが終わって、普通に大学に行きたいなと思います。演劇部の仲間とは、東京で一度だけ会いましたね。1年もたっていないので当たり前ですが『変わってないな』と。たわいもない話をしました」

――将来の希望は。

「裕福じゃなくてもいいので、楽しく暮らしながら、なんか社会の役に立っていると感じられるといいかなって思いますね」

「友達と笑ってしゃべっているときが楽しいですよ。話を聞いているのも好きです。(友人から)『気楽に生きているよな』と言われたことがあって、自分でもそう思いますね。(努力型では)絶対にないです。努力、一番嫌いです。受験勉強もめちゃくちゃ大変でした」

(聞き手は天野豊文)

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