2021/4/11
リアのドライブトレインには、状況に応じて左右輪の駆動力を可変制御するスポーツディファレンシャルを装備。コーナリング性能を高めている

「クワトロ」と「スポーツディファレンシャル」の合わせ技

連続可変ダンパーによるフットワークは、コンフォートモードではフワリと優しく、そこから「オート」、ダイナミック……とモードを切り替えるごとに、少しずつ引き締まっていくのはご想像のとおり。ただ、この種のクルマではいかにダンピングが柔らかくとも、その奥底に低偏平タイヤ特有のゴツゴツした鋭い突きあげが感じられるものだ。しかし、今回のRS 4では、そういうお約束のクセが見事にない。

とにかく、その高速性能からすると、RS 4は望外ともいうべき素晴らしい乗り心地である。これがダンパー制御によるものか、あるいはベースのA4に由来するものか、はたまた対角線上のダンパーを連関させた特徴的なサスペンションによるものかはともかく、今回またひと皮むけた感があったのは事実だ。

RS 4は、ところどころ舗装がヒビ割れた路面だろうが、カーブの曲率がいかにタイトで複雑だろうが、とにかく“踏める”クルマである。ターンインでヨーが出たら、あとは積極的にトラクションをかけるほど安定して曲がる……のは、さすがセンターにLSDを備えて後輪優勢のトルク配分をもたされた本物のフルタイム4WDというほかない。最上級のクワトロの走りだ。

RS 4には、さらに左右後輪の間でトルクを可変配分する「スポーツディファレンシャル」も備わっている。このステキなオンザレール感覚には、このスポーツデフも多大な貢献をしているのは間違いないだろう。ただ、他社の同種システムの一部のように、これ見よがしにテールを振り出して曲げるような演出過多は感じられない。クルマ全体としてはあくまで安心感の強い弱アンダーステア的な挙動に終始する。前情報がないと、ただただ自分の運転がうまくなったようにしか思わせないのが、またRSの流儀である。

足まわりには、右前と左後ろ、左前と右後ろのダンパーを油圧パイプとバルブを介して連結し、ピッチやロールの動きを制御する「ダイナミックライドコントロール(DRC)付きスポーツサスペンションプラス」も装備される

自分流の走らせ方を模索してみたい

……と、いくら走ってもなかなかボロを出さない(?)RS 4だが、伝統的なコイルを使うバネのレートはマジモノのスポーツモデルらしく、かなり引き締められている。よって、いかに連続可変ダンパーを備えるといえども、快適志向のコンフォートやオートより、ベース段階でバシッと挙動が引き締められるダイナミックモードがもっとも調和しているのは否定しない。これに比べると、柔らかいダンピングモードでは車体の上下動が大きすぎるシーンもあり、本気でクリップを射るような走りを意識すると、操舵(そうだ)反応のわずかな遅れが気になってくる。

また硬質なダイナミックモードにしても、タイヤのアタリや突き上げに低級感がまるでない点は、さすがというほかない。とくにクルマに酔いやすい人は、この一体感のある硬いモードを快適と感じるかもしれない。ただ、クルマを前後左右バラバラに蹴り上げるような路面のウネリを前にすると、入力を吸収しきれない場合もあるのがダイナミックモードの弱点で、そういう路面ではオートやコンフォートのほうが結果的に速くスムーズに走れるケースもある。RS 4のハードウエアがいかに優秀でオールラウンドといっても、突き詰めれば真の意味での万能とまではいかない。

大きく張り出したサイドボルスターが目を引く、ヘッドレスト一体型の「Sスポーツシート」。表皮の色はシルバーとブラックの2種類で、後者の場合はレッドとグレーからステッチの色が選べる
可変ダンパーに電子制御4WD、スポーツデフと、頭のてっぺんから足のつま先までハイテクで身を固めた「RS 4アバント」。いかにも最新のスポーツモデルといったクルマに仕上がっていた

こういうときに重宝するのが、ステアリングホイールに新設された「RSモード」のボタンである。これは各項目のモード設定を任意で組み合わせたパターンを、「RS1」と「RS2」という2つのショートカットメニューに割り当てられる機能だ。

なので、たとえばクルマに酔いやすい人(もしくはいつでも硬い乗り心地を好む本物のマニア)は、シャシーはダイナミックとしたまま、状況に応じてパワートレインの特性だけを切り替えたり、あるいはパワートレインをダイナミックに固定してのスポーツ走行時に、カーブや路面状況に応じて即座にシャシーモードを切り替えながら走ったり……なんて使い方もRSモードでは可能である。

こういう細かい妄想をしたくなるのも、前記の乗り心地を含めて、RS 4の味つけがいよいよ繊細きわまる機微の領域に踏み入れつつあるからだ。また、このRSモードと同種の機構は、BMWのMなどにはすでに備わっており、いかにも全身電子で走る最新スポーツモデルらしい装備でもある。

(ライター 佐野弘宗)

■テスト車のデータ
アウディRS 4アバント
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4780×1865×1435mm
ホイールベース:2825mm
車重:1820kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:450PS(331kW)/5700-6700rpm
最大トルク:600N・m(61.2kgf・m)/1900-5000rpm
タイヤ:(前)275/30ZR20 97Y XL/(後)275/30ZR20 97Y(コンチネンタル・スポーツコンタクト6)
燃費:9.9km/リッター(WLTCモード)
価格:1250万円/テスト車=1519万円
オプション装備:RSスポーツエキゾーストシステム(19万円)/RSデザインパッケージ グレー+フラットボトムステアリング アルカンターラ(20万円)/カーボンスタイリングパッケージ(80万円)/アルミホイール 5セグメントスポークデザイン グロスブラック 9J×20(7万円)/シートヒーター<フロント/リア>(7万円)/デコラティブパネル カーボン(11万円)/スマートフォンワイヤレスチャージング+リアシートUSBチャージング(6万円)/ヘッドアップディスプレー(15万円)/セラミックブレーキ<フロント>+カラードブレーキキャリパー<ブルー>(96万円)/パークアシストパッケージ<パークアシスト+サラウンドビューカメラ>(8万円)

[webCG 2021年3月12日の記事を再構成]

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