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置いてけぼりになった故郷 被災の悲しみ、東北と同じ

震災10年・離れて今(4)千葉県 立山実弥さん

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NIKKEI STYLE

 東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故から10年。少年少女時代に被災し、現在は進学・就職などで地元を離れている若者たちは今、故郷にどんな思いを抱いているのか。連続インタビューの第4回は、千葉県旭市出身で現在は徳島大学歯学部に学ぶ立山実弥(たてやま・みや)さん(25)に聞いた。

太平洋に面した旭市の死者・行方不明者は、津波被害の大きかった飯岡地区を中心に16人。東北の沿岸部の町と同じ苦しみに襲われた故郷について、立山さんは「置いてけぼりになっている」と感じてきたという。

――「故郷の1枚」にかわいらしい写真を選ばれました。いつごろのものですか。

「私が3歳くらいのころ、祖父母の家の庭で撮影したものです。両親が仕事から帰るまで、昼間ずっと預けられていた家でした。津波の後、アジサイの咲いていた庭は更地になり、近所の家も多くがなくなってしまって、この家の建物だけぽつんと残されました。この写真を見たとき、当時の風景は津波に流されてもうないんだと、しみじみ感じたのです。それで選びました」

――2011年3月11日の震災発生時はどこにいましたか。

「旭市立飯岡中学校2階の教室にいました。ちょうど卒業式の前日。配られた卒業アルバムにみんなで寄せ書きなどをしていたタイミングで大きな揺れが来ました。校舎も建て替えが必要と言われていた時期で、こんなに動く机の下で助かるのか、と。人生で初めて私の命は大丈夫かなって思いました」

「いったん揺れがおさまると、荷物は全部放置してグラウンドに出ました。海が目の前の校舎でしたから、津波の危険を避けるため、なるべく(海から離れた)奥の方、高い方へとみんなで走って避難しました」

卒業式の校庭に漁船

――自宅にはどのように戻ったのでしょうか。

「たまたま半年前に高台に引っ越していたんです。そこで同居するようになっていた祖父が、全校で一番の早さで迎えに来てくれました。1960年のチリ地震で地元に津波が来たのを見ている祖父は『絶対に海の方に行っちゃいけない。家から動かないでくれ』と。なので私は津波そのものは見ていません。家の中はしっちゃかめっちゃかになっていましたが、家族は無事でした」

「私が次に学校を見たのは、延期されて3月18日になった卒業式のときです。浸水した床の上を片づけた体育館で開かれましたが、校庭はがれきだらけで、津波で乗り上げた漁船も残っていました。すでにがれき撤去を手伝っていた友達もいたのに、私は家族に止められたのを理由に行動しなかった。それはずっと後悔として残りました」

――青山学院大学在学中の16年、地元の防災教育などを支援する「トリプルアイ(飯岡地区の頭文字のI・一人称のI・愛)プロジェクト」に参加されました。どんな思いでしたか。

「小中高と同じ学校に通った大木沙織さんがSNS(交流サイト)で呼びかけたんです。東北と同じように被災しているのに、世の中にあまりにも知られていない。そんな地元のために何かできないか、と。私は震災当時、何もできなかったという気持ちがすごく大きかったので、積極的にやりたいと思いました」

「プロジェクトでは震災の教訓を語り継ぐ子ども向けイベントや防災パンフレットの作成などに協力してきました。飯岡地区は第3波とされる津波が一番大きく、いったん避難したものの、もう大丈夫だろうと海の近くに戻って亡くなった方が大勢います。幼い私が初めてのお遣いをした顔見知りの八百屋さんご夫婦もそうでした。そうした津波の怖さも広く伝えていかないといけません。近く新しい防災パンフをつくるためにクラウドファンディングを立ち上げることも計画しています」

――地元の被害が知られていないことで感じる気持ちは、「どうして東北ばかり注目されるのか」という疑問とは少し違いますよね。

「最も被害の大きかった岩手、宮城、福島の3県が重点的に報道されるのは間違ってないと思います。東北の大変さは、同じような経験をしているから、わかるんです。それでも、旭市の被災者の気持ちが置いてけぼりになっていると感じるんです」

「亡くなった方やその家族、復興住宅で生活している方もいて、その中には私が直接お世話になった人もいる。そういう方々の存在、心の悲しみや苦しみを、ないもの、なかったもののようにされてしまうのが、個人的にもしんどかった。全国に知ってもらいたいというと、地元民のエゴにされちゃうかもしれないけれど、なにか具体的な支援がほしいわけじゃないんです」

ありのまま受け入れてくれる

――進学で地元を離れて、故郷の見え方は変わりましたか。

「すごく自分は守られていたなと感じました。東京に出て、ひとり暮らしをしたいと思っていて、実現したときは『やったー』と思いました。なのに、バイトでまとまった休みが取れると、すぐに実家に帰っていました。それが答えのようなもので、東京にはない安心感があったんです」

「近所のおばあちゃんと会えば、今でも『実弥ちゃん、かわいいねえ』なんて言ってくれて。小さいころから私の良いところも悪いところも知っていて、なんでもありのままを受け入れてくれる。地元のありがたみを感じます」

――進学先では何を学びましたか。

「大学は教育人間科学部心理学科で、卒業研究は災害心理をテーマにしました。医療に関心をもち、卒業後に改めて医学部をめざしたのですが、父が開業している歯科クリニックを少し手伝ったのをきっかけに歯学部に志望を変えました。命を救うというより、よりよく生きることに貢献したいという思いで精神科医になろうと考えていたのですが、一生涯にわたって気持ちよく食べ、話すことにつながる歯医者の仕事も、自分がやりたいことに合致すると気づいたんです」

「それで20年10月に徳島大学歯学部2年に学士編入しました。いずれは旭市に戻って、奥羽大学(福島県郡山市)で歯科医をめざしている弟とも一緒に父のクリニックをもり立てたいと思っています。治療をしながら、子どもたちに旭市っていいなと思ってもらえるようにできたらいいですね」

――旭市らしさ、といえば何でしょうか。

「海かな。それは津波で地元を襲った海でもありますが、旭の象徴でもあって、切っても切り離せません。日の出も夕日もきれい。徳島に行ってびっくりしたのは、海に島がいっぱいあって、これって海なのと思うくらい波が穏やかだったことです。旭には私にとって特別な海があるんだと気づきました」

(聞き手は天野豊文)

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