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2021/4/18

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ボディーシェルの一部に遮音発泡材を採用したり、ダッシュパネルまわりの遮音材をAピラーの側面やフロア部まで延長したりと、新型「Sクラス」では静粛性のさらなる向上も図られている

ADASについては“通信アップデート”に期待

車台は先代Sクラスが採用した「MRA」の流れをくみながらも、各部を大幅にリファインした第2世代のアーキテクチャーとなり、剛性向上と軽量化を両立したものとなっている。構造部位の中空部には発泡ウレタンを充填(じゅうてん)させているが、これは剛性うんぬんよりも共振を抑えて静粛性を向上させる狙いだ。ほかにもキャビンと外部との貫通孔のシーリングや、ウインドーまわりのストリップモールの形状などにも工夫を施し、遮音対策を徹底している。

開発に際しては、再生プラスチック製のケーブルダクトや再生ナイロン糸でつくられたフロアカーペットを採用するなど、サスティナビリティーにも配慮。生産設備の省エネルギー化も図っている。

足まわりは前:4リンク、後ろ:マルチリンクと先代の形式を踏襲しながら、新しいメカニズムとの親和性を高めるべく設計を改めている。日本仕様はエアサスペンションの「エアマチック」が標準となり、本国仕様ではオプションで用意される電動アクティブサス「E-ABC」は選択できない。また、新型Sクラスの目玉である4WS(4輪操舵)も標準装備となるが、後輪の切れ角は60km/h以下では逆位相で最大4.5°、60km/h以上では同位相で最大2.5°と、本国仕様に対して大きく規制されている。これはシュトゥットガルト空港などで実証が進む“レベル4”相当の自動駐車システムに対応した「インテリジェント・パーク・パイロット」が選択できないことも関係しているのだろう。裏返せばメルセデス側も、最大10°の後輪逆相角は狭所の駐車時など限定された状況でしか威力を発揮しないとみているのではないだろうか。

ちなみに先進運転支援機能(ADAS)関連では、ドイツ国内で認可待ちとなる“レベル3”相当のドライブ・パイロットも日本仕様には搭載されていない。LiDARや高精度GPS、ダイナミックマップなどのデータを連携させるこれは、当面はアウトバーンでの渋滞時のハンズオフドライブを実現させるためのシステムとなるだろう。車両側のデジタライズ化に伴い、こういったローカライズにまつわる課題は増えてくることになるだろうが、新型Sクラスでは通信機能を標準装備し、OTAアップデートにも柔軟に対応していく姿勢をみせている。

ライバルの先を行くユーザーインターフェース

前型では2画面液晶パネルによって推し進められたコックピットのデジタル化は、さらに加速。あらかたの操作は、有機ELを採用した12.8インチタッチパネルモニターを軸とするかたちで集約された。各機能へのアクセスは、直接画面をタッチするほか、ステアリングのサムスイッチを介しても可能だ。もちろんAIボイスコントロールの「MBUX」も多くの機能に連携している。さすがに使用頻度の高い空調系のコントロールパネルは常時表示されているが、「暑い/寒い」と口で言えば、それに応じて温度設定が変わるわけで、ここにきてクルマの多機能化とAIまで持ち出して育ててきたボイスコントロールの存在意義が、いよいよリンクするようになってきた感がある。

ほかにも、内装の全周に張り巡らされるアンビエントライトがMBUXやADASと連動し、機能のオン/オフや衝突警告などを視覚的に伝えてくれる機能や、メーターパネルの疑似的3D表示機能、現実の景色にARナビの案内指示を重ねてHUDに表示する機能など、新型Sクラスに搭載される新デバイスは、枚挙にいとまがない。デジタル的な先進性で言えば、ライバルにまた一歩差をつけたという印象だ。

車載されるほとんどの機能のインターフェイスとなっている、12.8インチの縦型有機EL(OLED)ディスプレー。「3Dコックピットディスプレイ」の表示を切り替えると、こちらのデザインも連動して変化する
奥行き感のある表示が特徴の「3Dコックピットディスプレイ」。「ジェントル」「スポーティー」「エクスクルーシブ」「クラシック」の4つの表示デザインが用意されるほか、モニター全体にナビゲーションと連動した地図画面や、ドライビングアシストの作動状態を表示することもできる

試乗に供されたのは標準ボディーのS400d。実は少なくはないオーナードリブンに最も向くグレードということになるだろうか。オプションのAMGラインは、内外装のドレスアップとともに機能面では強化ブレーキやドリルドディスクを装着、そしてタイヤは標準の18インチから前後異幅の20インチへと変更される。

そのタイヤサイズに見覚えがあるなぁと思い起こせば、「日産GT-R」のそれとピタリ同じ。よもやSクラスにそんな物騒なイチモツが充てがわれるようになろうとは……と、乗り心地をある程度覚悟して走り始めると、その先入観はあっさりと覆された。路面補修やマンホールなど一般道にありがちな凹凸や首都高速の目地段差くらいでは痛い応答をみせることはまったくない。表層が柔らかく沈み込み、奥で体をむっちりと支える低反発タッチのシートも衝撃吸収に一役かっているのだろう。ショックといえば、微(かす)かなコツンコツンというバネ下のフィードバックがステアリングホイールを介して手のひらに伝わるくらいで、街なかをたゆたうように走りゆく。

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