健康や子育てに関するちょっとした相談もOK
薬に関すること以外でも、薬剤師ならではの見解を聞くことができるといいます。
「多くの医療機関からの処方せんを扱う薬剤師は、ネットワークもあるので、近隣のさまざまな医療機関の情報を持っています。『 ○○クリニックは薬をしっかりと出す先生』『△△医院は薬になるべく頼らない方針』といった情報や、『□□クリニックの先生は子どもに好かれる穏やかな性格なので、子どもが怖がらずに受診できるかもしれないですね』といった、個人的な見解ではありますが、小児科の情報を聞けることもあります」
「薬剤師は化学の知識があり市販品の成分についても相談に乗れます。医療用医薬品として用いられていた成分が市販薬に切り替わった医薬品(スイッチOTC医薬品)の最新情報にも敏感です。『病院に行く時間はないけれど、処方された保湿剤と同じ成分が入った市販薬が欲しい』といった相談もしてください」
「処方された薬を正しく使えているか、乾いたせきから湿ったせきに変わるなどせきの質が変わっていないか、などを聞いて、基本的には受診を勧める方向になりますが、受診するかどうか迷ったときは気軽に相談してください」
コロナ下でマスク着用が強く推奨されています。しかし、マスクを嫌がる子どもは多いでしょう。
「公衆衛生の向上および増進に寄与することも薬剤師の役割の1つですので、そうした相談も受けることができます。マスクに関しては、乳幼児(2歳未満)では着用のメリットよりも窒息などのリスクのほうが大きいため、マスクよりも3密を避けるなどの対策がコロナ感染予防には効果的です」
「おむつ替えのときはウェットティッシュで拭くよりも、洗い流したほうが肌に刺激になりません。その都度浴室に連れて行くのは大変なので、水を入れた携帯用スプレーを用意しておき、おむつの上でお尻を洗うのがお勧めです」
子どもの薬をもらいに行ったときに、ママ・パパ自身の健康相談をすることもできます。「病院に行くほどではないけれど、不調があり市販薬について相談したい」「健康食品やサプリメントについて相談したい」など、健康に関する質問や要望にも応じてくれます。
「患者がどこまで付加情報を求めているのか判断できないため、踏み込んで情報提供ができていないのが実情ですが、薬を受け取りに来たタイミングなどで質問をしてもらえば喜んで答えるので、遠慮せずに聞いてください」
薬局では毎回異なる薬剤師が対応する場合も少なくありません。2016年4月から始まった「かかりつけ薬剤師」制度は、患者があらかじめ指名した一人の薬剤師が毎回対応してくれる制度です。
「かかりつけ医」は健康に関することを何でも相談できる、身近にいて頼りになる医師を指すでしょう。「かかりつけ薬剤師」も考え方は「かかりつけ医」と変わりません。大きく違う点は、「かかりつけ薬剤師」になってもらうには、同意書での契約が必要ということです。薬剤師を指名することで、専属の薬剤師として毎回同じ薬剤師が担当する制度です。
「かかりつけ薬剤師」を頼むメリットは3つあります。
1 薬を管理してもらえる
一人の薬剤師が服薬状況をまとめて管理してくれるので、飲み合わせや重複の確認をしてもらえる。薬だけでなく、健康食品やサプリ、生活習慣についても確認やアドバイスしてもらえる。
2 薬局が開いてない夜間・休日も薬の相談ができる
24時間いつでも、電話で薬の使い方や副作用、薬に関する相談に応じてもらえる。
3 医療チームのサポートを受けられる
処方内容を確認し、必要に応じて医師への問い合わせや提案をしてもらえる。
「子どもがアレルギーを持っていたり、薬で下痢などの副作用が出やすかったりする場合でも、いつでも相談できる安心感があります。かかりつけ薬剤師は、研修認定薬剤師を取得した豊富な経験を有する人だけがなれます。すべての薬剤師が対応できるわけではありませんが、通っている薬局で、『この人なら信頼できそう』と感じた薬剤師がいたら、かかりつけ薬剤師になってほしいことを伝えてみてください」
コロナ下で地域のつながりがさらに希薄になり、子育ての知恵や経験を共有することが難しくなっている今、薬剤師は子育て世代にとって頼れる存在です。
「今回紹介したような質問事例を通して薬剤師とコミュニケーションのきっかけをつかんでほしいと思います。健康や子育てに関する相談相手として、もっと薬剤師を頼ってください」

(取材・文 中島夕子)
[日経DUAL 2021年1月15日付の掲載記事を基に再構成]