「多様性がイノベーション生む」 残業生む報酬形態の転換をワーク・ライフバランス社長・小室淑恵さん

こむろ・よしえ 1975年生まれ。日本女子大卒、資生堂入社。2005年資生堂を退社、06年コンサルティング会社、株式会社ワーク・ライフバランスを設立。代表取締役社長。働き方改革で1000社以上の企業のコンサルティングを手掛ける。「産業競争力会議」民間議員など複数の公務を歴任。
こむろ・よしえ 1975年生まれ。日本女子大卒、資生堂入社。2005年資生堂を退社、06年コンサルティング会社、株式会社ワーク・ライフバランスを設立。代表取締役社長。働き方改革で1000社以上の企業のコンサルティングを手掛ける。「産業競争力会議」民間議員など複数の公務を歴任。

日本経済新聞社(東京・千代田)と女性向け動画配信のC Channel(Cチャンネル、東京・港)が立ち上げた働く女性を応援するメディア「newme」。金融や政治、教育など各分野のプロフェッショナルをゲストに招き、従来の概念にとらわれない生き方を選ぶために必要な情報を提供していきます。今回は働き方改革で1000社以上の企業のコンサルティングを手掛けるワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さんに、日本で働き方改革が遅れている理由や生産性を高めるマネジメント手法について聞きました。

残業の背景は仕事の属人化

――休みを取りにくい雰囲気の会社も多いですね。

「日本で残業が多い最大の理由は、仕事が人に属していることです。個人事業主のような仕事の仕方をさせていると、誰か一人が休んだら終わりなので、(お互いに)プレッシャーを掛けながらやっている。この意識を作ったのは評価形態、声かけなんです。人は評価形態のなかで、何を成功体験にして、繰り返すかを決めています。日本人がみんな仕事を属人化させるのが大好きということではなく、そう思わせるような声かけをしてきたのです」

「大事なポイントは、これは『何の間違いでもなかった』ということです。日本人の労働力は1960年代から90年代は余っていたんですね。消費者も均一なものの大量生産を望んでおり、その時代では、極めて正しい経営戦略でした。現在は意思決定層にダイバーシティーがないなら、そこから先のイノベーションも生まれないということが起きています。男女で短い時間で、多様性で勝負するには、今の評価や報酬の形態、すべてがあだになっています。今までのことは今までのこととして、しっかり転換していく。完璧にできあがっている当時の規則を今の社会にどうやって入れ替えるかをやっています」

報酬形態を変え、意識を改革

――今までみてきた1000社以上の会社で、働き方改革の失敗例や成功例にはどのようなものがありますか。

「(働き方改革で成果を出した)チーム毎に表彰するのですが、評価の基準としてある一定の労働時間を超える人がチームのなかで、一人でも出たら対象外というルールを作りました。『チームの数字をあげるためには、若手を自分が教えればいいんだ』と、すごく個人商店型の企業が、(若手を)しっかり教える風土に変わってきました。また育児女性がいるチームが表彰され、その女性が期の前半で予算を達成して、後半はハワイ旅行に行ったということを表彰台で話したことで、社内の雰囲気はガラッと変わりました。ある一定の時間以上は対象外になるので、資格をとったり、経営学修士号(MBA)に通ったりするなど日中の自分の勝率をあげるような新たな学びを選ぶようになりました」

――残業代を当てにしている人だと残業時間が減ることに恐怖心があるのではないですか。

「残業代が減ることで『働き方を見直したくない』と感じてしまう、これがよく起きる失敗例です。いままでの報酬形態だと、会社に利益が少なくなるような働き方を社員に推奨してきました。そのため社員はその報酬形態に則れば残業時間を増やした方がいいと考えてしまいます。いかにして、逆のインセンティブとなるような報酬形態にするか、ここを各社と変えています。ある生命保険会社では、業務にかけた時間がある一定より長いと、評価形態にマイナス1が入り、短いとプラス1が入るので、営業成績が1位だった人が、生産性ポイントを加味すると2位と逆転するということが起きています」

心理的な安全性を高めるマネジメントが重要

――働き方改革でマネージャーの役割も重要ですね。

「生産性の高いチームに共通するのは、『心理的な安全性の高さ』だったという研究結果があります。この心理的安全性の高さは、『こんなことを言ったら笑われるのではないか』などと思わずに、人と違った意見でも思い切って言える職場です。これをいかに確保するかが、ほぼマネジメントの仕事のすべてになります」

「私の合言葉は『信じて任せる』。夫にも家事を信じて任せる、メンバーにもそれぞれの得意なことは信じて任せる、このマネジメントをすると、急に楽になります。自分の体調を崩さず、睡眠不足で怒りやすくなったりなどせずにマネジメントが続けられると思います」

(この企画は日経とC Channelが共同で展開しています)