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孤立しない子、育てるには ひきこもり支援者に聞く

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子どもがひきこもってしまったら、親はどうしたらいいのでしょうか。NPO法人パノラマ代表理事の石井正宏さんは、ひきこもり当事者や親の支援を20年以上担ってきました。近年は高校と連携して、生徒に社会参加の機会を提供し、「ひきこもり予備軍」をつくらないための活動などにも取り組んでいます。石井さんに支援の実態や、孤立しない子を育てるために親が今できること、子どもがひきこもった時の親の心構えなどを聞きました。

◇  ◇  ◇

無理に引き出そうとしないで

「子どもがひきこもっても頼るべき行政組織や支援者、医療機関は用意されており、親が情報を持つことができれば、パニックになったり、絶望したりせずにすむのではないでしょうか」とNPO法人パノラマ代表理事の石井正宏さんは言います。

政府は都道府県や政令指定都市に「ひきこもり地域支援センター」を設けています。同センターでは、相談対応や家庭訪問を通じて当事者の状態を把握し、必要な場合は、医療機関や生活困窮者向けの窓口、ハローワークなどの専門機関につなげます。

各市町村が個別に相談会を開いたり、ひきこもりを脱して外に出始めた人の「居場所」を設けたりもしています。また当事者同士が自発的に集まり、交流する会なども開かれています。石井さんが設立したNPO法人パノラマも、本人と親の相談に応じるほか、「居場所」や地域住民との交流の場を提供しています。

ただ、「福祉の枠組みでは対応しきれず、親の経済力頼みになっているケースも多々ある」と石井さん。職員の理解不足から、ハローワークで「なまけてはだめだ」と当事者が説教された、相談窓口で「育て方が悪かったせいだ」と親が責められた、といった話も後を絶たないといいます。

行政の支援に失望した親が、ひきこもりの子を、本人の同意なしに施設へ連れ去る「引き出し業者」に委ねる。そんな事態も起きています。しかし本人にとって、無理に引き出されるのは親が考える以上に恐ろしいことだと、石井さんは解説します。

「当事者は自分自身に絶望し、外の世界に生きる道があるとは到底思えなくなっています。親や業者が無理に引き出そうとするのは、子どもにとって崖っぷちで背中を押されるのと一緒。『殺される』と思うほどの恐怖なのです」

ひきこもった本人が、自分からSOSを発することはほとんどありませんが、石井さんら支援者は、少しずつ当事者と関係をつくり、無言のニーズを察知して、外へ出る道を探っていくのです。

将来ひきこもらせないために与えたい「資本」とは

では、子どもを将来ひきこもらせないため、親にできることはあるのでしょうか。

石井さんは、子どもになるべく多彩な経験をさせて、多くの「好き」をつくること、つまり「文化資本」を提供することではないか、と提案します。昆虫採集や山歩き、アニメやアイドルなど、分野は問わないといいます。

「文化資本が豊かな人は、外の世界でやりたいことが多いのでひきこもりにくいし、ひきこもっても『推し』アイドルのライブに行きたいなど、外に出やすくなります。外に出てからも、趣味の話題などがあれば他人とのコミュニケーションを回復できます」

不登校になっても、例えば釣りざんまいの生活を送れば、釣りのスキルや魚に関する知識を蓄積できます。「昨日よりも少し成長し、新しい知識が増えたと実感することで生活の質(QOL)を高められます。それが外に出やすい環境をつくり出し、ひきこもりへの移行や長期化を防ぐことにもつながります」

ひきこもりは社会全体で解決すべき問題

しかし、親が豊富な文化資本を与えたとしても、いじめのトラウマや発達障害などによって、生きづらさを抱える人もいます。

また、貧困家庭の子どもは、「文化資本」がどうしても乏しくなってしまいます。このため貧困も、ひきこもりを生む要因の一つだと、石井さんは指摘します。「実は費用を捻出できないからなのに、表向きは『つまらないから行かない』などと言って修学旅行を欠席する子どももいます。貧困家庭で、習い事や旅行などの経験が圧倒的に少ないと、友人と共通の話題が乏しくなり、語彙力や共感力、意思を伝える力が育ちにくい傾向がみられます」

だからこそ、ひきこもりを各家庭の「自己責任」として片付けるべきではないと、石井さんは強調します。「ひきこもりは行政による福祉の枠組みを中心に、社会全体で解決すべき問題なのです」

ひきこもったら…家庭の「パワーバランス」を崩さない

石井さんは、もし子どもがひきこもったら「親は家庭内のパワーバランスを、なるべく崩さないほうがいい」とアドバイスします。

上げ膳据え膳で食事を部屋まで届けたり、腫れもの扱いしてリビングルームを譲ったりせず、以前と同じ接し方を心がけるのです。

また「自分がひきこもったのは、好きなスポーツをさせてもらえなかったからだ」などと、子どもに恨みをぶつけられても、すべて真に受けて言いなりになるのは禁物だといいます。「もちろん親も子育てをする中で間違ったことがあるかもしれません。しかしひきこもりを長引かせないためには、子どもに支配されず、『はいはい』と受け流すことも重要です」

虐待などがあれば別ですが、ひきこもりは多くの場合、家庭の内外でさまざまな出来事が積み重なり、本人が持ちこたえられなくなった時に起こります。「子どもは、ひきこもったのが100%自分のせいだと思うと、罪悪感や苦しみに耐えきれません。親に責めを負わせようとするのは、当事者が自分の精神を守るための生存戦略でもあるのです。子ども本来の姿ではなく『症状』と考えたほうがいいでしょう」

親世代と子世代の環境の違いも知って

石井さんは「子ども世代の生きる環境が、親世代に比べて厳しさを増していることも、肝に銘じる必要がある」とも話します。

「今日より明日は良くなるという右肩上がりの経済を、多少なりとも経験した親世代と、人口減少や高齢化、就職難に直面する子ども世代とでは、子ども自身の社会への期待度も環境の厳しさも、全く違うのです」

ある時「うちの子は能力があるのに、どうして働けないのか」と嘆く父親に、石井さんは「それなら、あなたの勤務する会社で雇ってみては?」と提案しました。すると父親は「それは無理です」と即答。現代社会を生きる子どもが、いかに厳しい状況に置かれているかを客観視できるようになったといいます。

NPO職員やボランティア、中小企業の経営者といった、なるべく多彩な「大人」の姿を見せることも、子どもが外の世界で楽に生きられるようになる一つの方法だと、石井さんは考えています。

「ひきこもり予備軍」を地域へつなぐ

正社員の親や教師とだけ接していると、子どもの「あるべき大人」のストライクゾーンは狭くなってしまいます。「フリーターなんてダメだ」「あの仕事はおまえにふさわしくない」などと、親が価値観を押し付けるのも同様です。

「ストライクゾーンの狭い子どもは、少し道を外れると『自分はもうダメだ』と思いがち。ひきこもった後も『親と同じ道に戻らなければ』と自分を追い詰め、外に出るハードルを上げてしまいます」

石井さんが代表理事を務めるパノラマは、高校内に生徒と地域住民が交流できる「居場所カフェ」を設けたり、地元の中小企業に高校生を送り込む職業体験プログラムを実施したりしています。不登校の子や中退しかかっている若者、職が決まらないまま卒業しようとしている高校生らに、社会にいるさまざまな大人との接点を持ってもらうためです。

「ひきこもりの人を対象とした政府の支援は、雨漏りの家にバケツを置くようなもの。人数が増えるとバケツからたらいへと、より大きな器を用意しなければなりません。私たちは『ひきこもり予備軍』を社会につなげ、屋根の穴をふさぐ支援ができればと考えています」

(取材・文 有馬知子)

[日経DUAL 2020年10月7日付の掲載記事を基に再構成]

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