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野鳥で最高齢記録更新 70歳のアホウドリがヒナかえす

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

70歳のレイサンアホウドリの「ウィズダム」が2020年11月下旬にまた卵を産み、2021年2月1日にふわふわのひながかえった。

米ハワイ州ホノルルの北約1600キロメートルにあるミッドウェー環礁国立自然保護区には、毎年秋になると100万羽ものレイサンアホウドリが戻ってくる。島々には白い海鳥たちが点在し、それぞれがソーダ缶大の卵の上に座っている。オスもメスも、チャコールグレーで隈取りされたような目と、広げれば左右で約2メートルにもなるチョコレートブラウンの翼を持つ。

中でも、ウィズダムは特別だ。Z333番の赤い足環を付けた彼女は、これまで知られている中で最も高齢の野生の鳥とされている。

「ウィズダムが帰ってくると、いつもほっとします」。ミッドウェーでアホウドリの寿命を研究している米国魚類野生生物局の生物学者、ジョン・プリスナー氏はそう言う。

ウィズダムについて、科学者たちはすでに多くのことを知っている。1930年代後半以来、26万羽以上のアホウドリを識別している長期的な研究プロジェクトの一環として、1956年に足環を取り付けられたこと。彼女が巣作りをするお気に入りの場所はどこかということ。そして、少なくとも過去11年のうち8年はそうしてきたように、昨年も卵を産み、ひなを育てていること。

それでも、ウィズダムと彼女の仲間たちについて、科学者たちがまだ知らないことはたくさんある。例えば明らかな問いはこれだろう。彼女はどのくらいまで生きるのだろうか?

「本当に見当もつかないんです」とプリスナー氏は言う。「彼女が例外であるかどうかもわかりません。単に、私たちが知っている中では、彼女が最も年齢を重ねた個体だということです」

過去15年間、プリスナー氏のチームは、レイサンアホウドリのひなに足環を付け、50メートル四方の区画内にある巣を作る個体の番号を記録してきた。これらはいずれ、彼らの寿命に関するデータを提供してくれるだろう。プリスナー氏によると、課題はアホウドリの寿命が非常に長く、研究者の寿命を簡単に超えてしまうことだ。

ウィズダムの場合もそうだ。彼女に足環をつけた魚類野生生物局の生物学者、チャンドラー・ロビンス氏は、2017年に98歳で亡くなっている。

「ウィズダム」という名前の理由

ウィズダムは実際には70歳を超えている可能性が高い。彼女の年齢は1956年に、レイサンアホウドリが性的成熟に達する最も早い年齢である5歳、と控えめに推定された。

2002年、ミッドウェーを再訪したロビンス氏は、交換が必要なボロボロの足環を付けたアホウドリに気づいた。氏は間もなく2つのことを知るに至る。1つ目は、氏が自ら1956年にこの鳥に足環を付けていたこと。2つ目は、この鳥は推定51歳で、アホウドリの寿命の記録を更新するということだった。当時、生物学者はレイサンアホウドリの寿命をおよそ40年と考えていた。

アホウドリの命を脅かす津波やサメなどの危険に加え、気候変動による海の温暖化、プラスチック汚染、釣り糸など、人間がもたらす新たな脅威から長年逃れてきたことから、彼女は「ウィズダム(知恵)」と名付けられた。

それ以来、ウィズダムは国内外でインターネットの寵児となっている。ハワイ語では、レイサンアホウドリは「モーリー」と呼ばれる。先住民の文化では農耕と雨の神ロノの象徴と考えられており、重要な位置を占める存在だ。

彼女が有名になったことで、海鳥、特にレイサンアホウドリが直面している危険に注目が集まるようになったと、魚類野生生物局の野生生物学者でホノルル在住のベス・フリント氏は話す。

「彼女は人間に匹敵する寿命を持つ鳥です」とフリント氏は言う。「彼女の最大の貢献は、人々の興味を刺激していることだと思います。彼女はまた、より多くの人々を科学の世界に引き込んでいます」

40羽以上育てたベテランママ

毎年秋になると、何カ月もの間、海上にいたレイサンアホウドリたちは、ミッドウェーに戻って新しい繁殖期を迎える。それまで比較的空いていたターコイズブルーのラグーンの上空は、細長い翼を広げて飛ぶ鳥たちでいっぱいになる。

世界のレイサンアホウドリの個体数は約160万羽と推定されている。そのおよそ70%は、ミッドウェーの第2次世界大戦の軍事基地が国立野生生物保護区となった約5平方キロに営巣する。調査によれば、2020年には約49万2000個の巣があり、前年よりわずかに増えた。

レイサンアホウドリのつがいは、直径約90センチメートルの円の中に小枝、葉、砂をかき集めて、土の中に浅いお椀状の巣を形成する。メスが卵を1つ産んだ後、つがいは共同で子育てをする。交代で数日から数週間に及ぶ採餌に出かけ、魚やイカを吐き戻してひなに与える。

真夏になるとひなは海に飛び立ち、3年から5年は陸地に戻らない。その後、さらに数年の間、海と陸地を行ったり来たりしながら、伴侶を求めて精巧な求愛の踊りを披露し、つがいが成立すれば長く絆を築いていく。

ウィズダムは何羽もの伴侶に先立たれてきた。プリスナー氏が言うには、40個もの卵を産んできたベテランママらしく、彼女の性格はかなり落ち着いたものだと言う。

「ウィズダムは多くの時間を巣で寝て過ごしています」と同氏は言う。「彼女のそばには目印を置かなければなりません。そうしないと溶け込んでしまって、全く目立たないんです」

アホウドリを脅かすもの

ミッドウェーのレイサンアホウドリを取り巻く最近の懸念は、卵を温めている成鳥を攻撃する外来種のネズミの存在だ。魚類野生生物局の生物学者は、かつて大型のラットを駆除したようにこのネズミも根絶したいと考えているが、そう簡単にはいかないようだ。

汚染も問題だ。毎年、何トンも太平洋に流出するプラスチックのとがった破片は、鳥の腸に穴を開けて死に追いやることがある。

ただ、アホウドリには他の海鳥よりも生物学的に有利な点がある。イカを多く食べる彼らは、フリント氏が「自然のプラスチック」と呼ぶキチン質でできたイカのくちばし(顎板)や、あるいはプラスチックの破片を塊にして吐き出すことができる。

とは言え、国際自然保護連合(IUCN)が近危急種(near threatened)に指定しているレイサンアホウドリに、プラスチックがどのような影響を与えるかはまだ不明だと専門家は言う。

また、北太平洋の温暖化や酸性化は、イカを始めアホウドリの餌となる生物の数にも影響を与える可能性がある。フリント氏によると、イカが減ったり、生息域が変わったりする可能性があり、それが鳥たちの食料事情にも影響を与えかねない。

アリューシャン列島より北でも

レイサンアホウドリにとっての脅威を減らし、長期的に保護していくためには、彼らの生態や行動についてより多くのデータが必要だ。

陸上にいる時のレイサンアホウドリは研究しやすい。体が大きく、地上に巣を作り、隠れないからだ。しかし、研究者の目が届かない海の上こそが、彼らにとって一番の居場所だ。

そこで最新の技術が登場する。現在では、アホウドリの羽の裏側や足環に様々な衛星タグが取り付けられ、彼らがどこを飛んでいるかについて詳しいデータが集まってきている。

このようなタグによって、繁殖中のレイサンアホウドリが時にはアラスカのアリューシャン諸島よりも北まで行って採餌していることが明らかになったと、米海洋大気局のアラスカ水産科学センターで海鳥を研究する海洋生態学者のロブ・スリヤン氏は言う。

「ウィズダムが海鳥保護のロールモデルになっているのは、ひなのためにどれほど遠くまで飛んで餌を採っているかがわかってきたからです」

タグの中には羽ばたきや飛行速度、飛行時間などの飛行力学的なデータが得られる加速度計が含まれているものもある。スリヤン氏によると、こうしたデータから、彼らがどのようにして効率的に長く海の上を飛べるのかなどが明らかになってきた。

それ以外にも巣立ったひなについて、例えば両親と同じコロニーに戻ってくるのか、など大きな疑問がまだある、とスリヤン氏は言う。

ウィズダムが与える希望

アホウドリの虜(とりこ)になったのはスリヤン氏だけではない。世界190カ国以上の人々が、2014年から2018年までカウアイ島に設置されていた米コーネル大学鳥類学研究所の「アルバトロス(アホウドリ)・カメラ」を見ていた。

「ウィズダムは自然界での可能性について、私たちの想像の限界を超えさせてくれます。発見されるべきことはまだまだたくさんあります」と、同コーネル研究所の鳥類カメラのプロジェクトリーダー、チャールズ・エルダーマイヤー氏は言う。「そして、そのことが私たちにさらなる希望を与えてくれます」

国際的に有名なウィズダムには、彼女専用のウェブカメラがあるべきかもしれない。残念ながら、プリスナー氏によると、ミッドウェーのインターネットは恐ろしく遅い。次善の策は、動きに反応するカメラで15分ごとくらいに静止画や短い動画を撮ることだ。

「その件は何度も話題に上がっているんです」とプリスナー氏は言う。「来年には話をしていくことになると思います」。ウィズダムに長生きしてもらいたい理由がさらに増えた。

(文 KIM STEUTERMANN ROGERS、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年3月1日付]

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