ユニリーバ・ジャパン(東京・目黒)は19年7月から社員にワーケーションを推奨しています。8自治体と協定を結び地域交流事業への参画も促しています。「接点のない地域の人との交流で新しい発想が生まれ、イノベーションも期待できる」(広報担当)といいます。

ワーケーションは地域、働く人、企業の3者に利益をもたらす可能性があります。心身のリフレッシュ以上の効果をいかに企業にアピールできるか。自治体の知恵も試されます。

松田智生・三菱総合研究所主席研究員「定着へ、効果の『見える化』不可欠」

三菱総合研究所の松田智生主席研究員は地方創生の手段として「逆参勤交代」を長年提唱しています。人口が減少するなかで、都市と地方の間で人材を奪い合うよりも、都市居住者が期間限定で地方に滞在しリモートワークをすることで、関係人口を増やす狙いです。ワーケーションの期待と課題を松田氏に聞きます。

――ワーケーション(=逆参勤交代)は地方と企業、働く個人のそれぞれにどんな利点があるのですか。

松田智生・三菱総合研究所主席研究員

「人口が減ると地方経済はどうしても市場が縮小します。でもワーケーションを実現し、都市居住者を受け入れられれば消費がその分、喚起されます。首都圏と近畿圏にある大企業(従業員1000人以上)の社員は約1千万人います。その1割が年1カ月逆参勤交代したら、消費額ベースで年間1千億円の市場を創出できます。滞在中の消費活動に加えて、ワーケーションを支えるためのオフィスや宿泊施設などで雇用も生まれます。つまりネットワーク化で外力を取り込み地域の価値を最大化する狙いであり、都市と地方の自律分散協調モデルといえます」

「働く個人にとってはワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)が実現しやすくなります。自然環境に囲まれて働けば心身もリフレッシュでき、仕事へのモチベーションもあがるでしょう。セカンドキャリアを考えるシニア層ならば、ワーケーション先で新たな活躍の場と巡り合えるかもしれません」

「ワーケーションに経営上の利点をなかなか実感しにくいかもしれませんが、会社にも多面的な利点はあります。まずは社員のリフレッシュを図れ、健康経営が実現することです。ストレスが解消できればメンタルヘルス問題も減り、社員の生産性が上がります。さらに人材育成効果も見過ごせません。違う環境で働くことで新しい発想も生まれ、都市では交流機会がない地方の異質な人材と交流するなかで良い化学反応が起こり、ローカルイノベーション的な新規事業が芽生える可能性もあります」

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