だが、7千万円の調達だけではどうにもならなかった。

鉄道会社はメンテナンスにおカネがかかります。線路の改修・保全ですぐに消えました。民事再生法など様々な法的措置の研究も始めました。当時、従業員は25人、パートは40人。鉄道会社なので労働組合があるのですが、労組から借金して給料を支払う状態に陥りました。

実は銚電は1995年から「ぬれ煎餅」を販売しています。銚子はしょうゆの街だったので、その当時からぬれ煎餅は名物だったのです。もはやネットでぬれ煎餅を売るしかない。そう思って自分の小遣いでサーバーを借りて通販サイトを急ぎ立ち上げました。当初は月30万円ほどの売り上げで、厳しい経営状況を改善するには至りません。

「木更津からでも珍しいのに、銚子に塾高出身者がたくさんいて驚いた」と話す

そんな折、あの経理課長から一発逆転のホームランが飛び出しました。公式サイトに「ぬれ煎餅を買ってください。電車修理代を稼がないといけないんです」と書き込んだのです。まあ、事実をそのままに書いただけですが、これがネットの「2ちゃんねる」などで話題になりました。なんと06年はぬれ煎餅の売上高が約2億円から約4億2千万円、鉄道は1億1千万円から1億円6千万円と大幅な増収になりました。観光バスが次々来て、預金残高は1億円を超え、借金を返し、黒字が続きました。

おかげで中古の車両も購入できました。しかし、ホッとしたのもつかの間、再び危機が来ました。2011年の東日本大震災です。赤字になり、預金残高は50万円に。買収話も浮上する中、今後の方針を巡って取締役会は紛糾しました。その結果、社外取締役であった私が暫定的に経営を任される形で、12年末に銚電の社長に就任することになるのです。

銚電はわずか6.4キロのローカル鉄道。年間輸送人員は全盛期の1950年代は170万人を超えていましたが、現在は5分の1程度にとどまっています。銚子市も人口減に歯止めがかからない状況です。「銚子の街にとって、本当に銚電は必要なのか」。2013年に地元で銚子電鉄運行維持対策協議会が組織され、熱い議論が交わされました。この結果、銚電は地元に必要不可欠という意見がまとまりました。

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