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中野信子さん 容姿の良い女性、仕事で損になることも

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脳科学や心理学の知見から、人の感情や行動を解き明かしベストセラーも数多い脳科学者の中野信子さん。初の自伝『ペルソナ』(講談社現代新書)では、アカデミズムの男性原理社会での生きづらさや毒親についても語り、話題となっています。中野さん自身の経験も踏まえ、働く女性たちが抱える生きづらさの原因はどこにあるのかを聞きました。

美しいと仕事上の実力は目減りして見られる

―― 『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書』(行動経済学者の真壁昭夫さんとの共著、白秋社)の中で「女性の管理職は美人だと損」という衝撃のお話があったのですが、なぜなのか教えてください。

中野信子さん(以下、敬称略) 容姿の良しあしが仕事をするうえでプラスに働くかどうかは、残念ながら性差があるのです。

女性の容姿の良さは、例えば秘書などサポーティブな役割のときには、非常に高く評価されますが、リーダーシップを執る管理職などの仕事では「適切ではない」「決断力に欠けるに違いない」など、実力が目減りして見られます。また、実力ではない何かが働いているのではないかと、何らかの不正の手段を想定されやすいのです。

心理学の用語ではステレオタイプ・スレット(固定観念の脅威)というのですが、「この人はこういう外見だからこうに違いない」「女性だから論理的思考が苦手なはず」というふうに思い込んでしまう。無意識のバイアス(偏見)の一つですね。

―― 男性の場合は、見た目が良いと仕事ができるように見られるなど、見た目の良さが高評価につながることが多いと思うのですが。なぜ女性は違うのでしょうか。

中野 たしかに脳機能的には「美しさ=正しさ」というジャッジメントが働きます。それが女性の場合に逆転しやすいのは、行動科学の領域で「女性の正しさ」という社会通念が、必ずしもリーダーシップでないことに行き着きます。

容姿の良さはそれぞれ男性性、女性性をより強く感じさせる効果があります。女性は家にいるのが正しいとか、立場の強いものに従うのが正しいという社会通念がある場合、女性が高い地位についているのは不正である、適切でないと思われやすいという現象が起きてしまうのです。

女性が采配を振るうには心理的な壁がある

中野 さらに幼いころから「女の子だからこうしなさい」「あまり頭が良いように思われてはいけない」などと、陰に陽に言われてくることで、何か率先して発言しなければいけないときも一歩引いてしまう。

ここで発言することで「扱いにくい人間と思われたらどうしよう」という不安が、男性よりも出やすくなります。社会通念によって、女性自身も思い込み、ある程度能力を限定的に伸ばされてしまうのです。

すると、リーダーとして采配を振るうには勇気がいる。その心理的なハードルの高さは見えにくいものなので、そういう目にあったことのない男性には理解してもらいづらい。そうした点も女性リーダーの生きづらさになっていると思います。

東大の女子学生は「第二東大生」扱い

―― 中野さんご自身も、「東大卒の女性」というステレオタイプ・スレットにさらされてきたわけですよね。

中野 東大に行くと結婚できないんじゃない?などと親世代や祖父母世代の人からはかなりの頻度で無意識の脅しがありましたし、「女の子『なのに』数学ができるんだね」と謎の褒められ方をしました。そうした中で、徐々に「理系」であることと「女」であることは両立しないものだという、根拠は浅いけれども根の深い通念が刷り込まれていくのです。

当時は、実際に東大女子の数は少なく、94年入学の私の代で16%程度。工学部に進学すると応用化学科は女性が10%でした。そして女子の場合、東大に入った時点で「第二東大生」とでもいうような扱いでした。女性としては二流、東大生としても二流みたいな感じがありましたね。

脳の男女差は「飲み屋の話題」

―― 男性脳、女性脳とよく聞きますが、リーダーシップという点で、男女の性差による能力の違いは、やはりあるのでしょうか。

中野 男性脳、女性脳というのは「飲み屋の話題」程度の話です。実際は個人差の方が大きいという見解が主流ですし、意味があります。

例えば身長には性差がありますが、それは単なる統計上の違い(有意差)であり、男性なら全員が女性より背が高いかというとそうではありません。男性でも150cmの人はいるし女性でも180cmの人はいます。実生活に統計上の理屈を持ち込んでああだこうだというのは、飲み屋の話題程度なら面白いですが、現場では、その人の属性よりも個人の能力を見るべきです。それがフェアな態度であるし、実際に組織運営をするうえでもその方がよりスムーズですよね。

頭を働かせたくないから「ラベル」を貼る

―― 現実には、女性だから気が利くとか、男性だから意思決定力があるとかいった、属性で判断しがちですし、されがちです。

中野 その現象を、私はある意味面白いと思ってしまうのですが、人間の脳は、相手を属性で判断せざるを得ないぐらい情報処理の不得手な、割とだめな脳なのですね。本当なら、個人の情報を丸ごと受け取って判断するのが一番正確でいいのですが、それができないので、この属性の人はこういうタイプの人間に違いないと粗く処理してあとで辻つまを合わせようとする。

「女性だから」「子どもがいないから」「体育会系出身だから」などさまざまな情報ラベリングであらかじめ整理して分類しておき、そこに当てはめる。するとすごく計算が軽く済み、だめな脳でもこれくらいの処理ならできる。あの人はこうに違いないとまずラベルを貼って処理しようとするのは、頭を働かせなくても判断過程をショートカットしたい、ちょっと残念な脳の性質なんです。

こうしてラベリングをすると必ず見落としてしまう情報があります。とはいえ、正確な処理はなかなか迅速にはいかないので、普段から行うには現実的ではない。ですので、相手に対する自分の判断が間違っていた、と気づいたときに、いち早く修正できるようにしておくのが大事ですね。

新しい情報を得たら修正できる能力をそれぞれが身に付けておくべきなのだと思いますし、「あなたは女だからどうこう」と言っている人がいたら、ああ、この人の脳は手抜きをしているんだなと思ったらいいですよね。

属性でなく個人で見られる組織は強い

―― 著書『ペルソナ』の中でも「実力があっても、成果を上げてもじゃあ子どもは産んだのか、だったり、旦那さんはどんな人? なんていうことを聞かれる。男性研究者がそんなことを言われるだろうか?」とありましたが、日本はまだまだ男性原理社会。コロナ禍で世界の対応を見ていると、彼我の差を感じます。

中野 中でも活躍がクローズアップされたのはオードリー・タンさんですね。新規感染者の数を200日以上ゼロに抑え込んだ台湾のデジタル担当大臣。トランスジェンダーであることを公表し、性別欄に無と書きます。性別がないという、これまでのステレオタイプでは測れない人です。そういう人が、実力を発揮できて、国の大事な政策に意見を述べて新しいシステムを構築できる。それが可能だった台湾の仕組みはすごいと思って見ています。

属性でなく個人で見ることができた組織がどれだけ結果を出したかという、素晴らしい例。すでに話題ですが、もっと注目されてもいいと思いますね。

台湾(蔡英文総統)だけでなく、ドイツ(メルケル首相)やニュージーランド(アーダーン首相)、フィンランド(マリン首相)など、比較的コロナ感染者数を抑えている国や地域には女性リーダーが多いですが、女性がすごいというよりも、結果的にそうなっているのではないでしょうか。女性がリーダーになれることそのものが、組織の柔軟性を表しているということですよね。ステレオタイプがある世の中で、女性をリーダーにできる柔軟性がある組織だから、結果的に良い手を打てている、ということに注目すべきなのだと思います。

選択肢がいくつかあるときに、本当に有効な策、先例を踏襲した策、既得権益に配慮した策のいずれを取るか。柔軟に有効な策をきちんと打つことは、ステレオタイプにとらわれているとちょっと難しいのではないでしょうか。

ステレオタイプが優勢な世の中で、リーダーの性別は問題になりませんという人々の国や組織が、新しい有効な策を取っていけるのだと感じます。

中野信子
1975年生まれ。東日本国際大学特任教授。東京大学工学部応用化学科卒業、東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2008年から10年までフランス国立研究所ニューロスピンにて博士研究員として勤務。MENSA元会員。

(取材・文 中城邦子)

[日経ARIA 2020年12月16日付の掲載記事を基に再構成]

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