「家族リスク」を考える 大人の距離感どう保つべきか

大人同士の家族対話は先々のリスク回避に役立つ(写真はイメージ) =PIXTA
大人同士の家族対話は先々のリスク回避に役立つ(写真はイメージ) =PIXTA

家ごもりの時間が長くなって、家族と語らう時間も増えたと聞く。忙しさにかまけて、家族での対話が減っていた家庭では、結びつきを取り戻すきっかけにもなっただろう。せっかくの機会を生かして、腹を割った意見を交わせば、1人の振る舞いが残りの家族にダメージを与える「家族リスク」を避けやすくなる。

家族は大切だが、時に悩ましい。基本的には別人格なのだが、家族の振るまいが自分にも降りかかってくることが起こり得る。家族との間柄が良好でなければ、リスクはさらに高まる。年齢を重ねて、子供が大人になれば、踏み込んだ対話を敬遠するようになりがちで、家族の対話も表面的になりやすい。

「家族リスク」は永田町も揺さぶっている。菅義偉首相の長男が総務省官僚と会食していた件では、菅首相の放送行政への影響力を、官僚側が意識したのではないかと指摘された。官僚らは長男の勤め先からの働きかけはなかったとするが、報じるメディアの視線には「何かあったのでは」という疑いが感じられる。

菅首相は一連の疑惑に関して「(長男は)別人格だ」と答弁した。その通りだ。一般論としていえば、とっくに成人して、自活している子供のふるまいを理由に、親がとがめられる筋合いはない。ただ、今回のケースは必ずしも一般論とは言い切れない。

理由はいくつかある。第1に長男の勤め先が放送関連企業であり、菅首相が影響力を持つとされる総務省の所管である点が挙げられる。第2の理由は、報じられている情報に基づく限り、会食の費用や頻度が常識の範囲を超えるとみえる点にある。そして、第3の理由は、そもそも長男の就職が実現した背景に、菅首相の存在が取り沙汰されている点だ。

長男の就職に関して、菅首相が口利きしたかどうかははっきりしていない。直接的な働きかけはなかったかもしれないが、採用側が考慮に入れた可能性は残る。世にいう「コネ(クション)入社」はあからさまな働きかけを伴うケースばかりではない。採用側の勝手な忖度(そんたく)が働く場合もある。

世論が今回の出来事に批判的なのは、コネ入社を含めて、「何だかずるい」というイメージが広がっているからだろう。

世間のネガティブな印象を、一段と強めたようにみえるのは、主にネットメディアで広まった長男の風貌だろう。あらかじめ断っておくが、人はどんな髪型も服装も自由に選べる。当然の権利だ。父親が首相だからといって、かしこまった身なりを求められる必要はない。装いは自己表現であり、本人の権利だ。

ただ、その大前提を踏まえていえば、装いを通して、第一印象が生まれる場合、風貌を選んだ本人は、その結果を引き受ける立場になる。つまり、他人がどのようなキャラクターを読み取るかは、見る側の勝手であり、本人の期待通りになるとは限らない。多くの情報を持っていない、初見の人はステレオタイプの読み取りをしがちだ。今回もそのパターン通りになった感じがある。

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