N
newme(NIKKEI x C Channel)

「生産性の基本は睡眠」 ワークライフシナジーを生み出そうワーク・ライフバランス社長・小室淑恵さん

2021/3/9

newme(NIKKEI x C Channel)

こむろ・よしえ 1975年生まれ。日本女子大卒、資生堂入社。2005年資生堂を退社、06年コンサルティング会社、株式会社ワーク・ライフバランスを設立。代表取締役社長。働き方改革で1000社以上の企業のコンサルティングを手掛ける。「産業競争力会議」民間議員など複数の公務を歴任。
こむろ・よしえ 1975年生まれ。日本女子大卒、資生堂入社。2005年資生堂を退社、06年コンサルティング会社、株式会社ワーク・ライフバランスを設立。代表取締役社長。働き方改革で1000社以上の企業のコンサルティングを手掛ける。「産業競争力会議」民間議員など複数の公務を歴任。

日本経済新聞社(東京・千代田)と女性向け動画配信のC Channel(Cチャンネル、東京・港)が立ち上げた働く女性を応援するメディア「newme」。金融や政治、教育など各分野のプロフェッショナルをゲストに招き、従来の概念にとらわれない生き方を選ぶために必要な情報を提供していきます。今回は働き方改革で1000社以上の企業のコンサルティングを手掛けるワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さんに、生産性を高めるコツについて聞きました。

起業直前に妊娠発覚 ワークライフバランスを実践

――起業の経緯について教えてください。

「どんな時間でも働ける、短い時間でも本格的な仕事を渡されるという職場に変えるだけで、今までドロップアウトしていた人がみんな戦力になるのに、なぜみんなで働き方を縛り、それに合わない人を排除するという大半の人が今後、不幸になる働き方をしてるんだろうと疑問に思いました。『これを変えないけない』と日本の未来に焦り、資生堂に辞表を出しました。辞表を出す前の年に結婚をしていたのですが、辞表を出した翌日朝に吐き気が襲い、私が妊娠していたこともまた衝撃でした」

「日本で一番、育児休業制度が恵まれている会社に辞表を出したというタイミングでした。右腕の女性に『一緒に起業しようって誘っていたけれども元の会社で頑張って』と泣いて謝ったら『何の会社を起業するんでしたっけ』と聞かれました。『経験もないのにワークライフバランスを語ろうとしていた』と思い、その方が危なかったということに彼女に気づかせてもらいました。そして産後3週間でとにかく営業に行ったというのが起業の始まりです」

ワークライフシナジーで好循環生み出す

――どうやって起業や出産を乗り越えたのですか。

「最初は不利としか感じませんでした。今思えば自分の時間が限られたことでやり方を徹底して追求しました。自分たちの組織で全部実践し、気づくたびに一個一個やめて、それをやめるためにはどういうルール、報酬形態にしたら良いのかを実践しました。あれがなかったら現在はありません」

――ご自身のワークライフバランスをどのように考えていますか。

「日本だとワークライフバランスというと割合をイメージすると思いますが、私たちの感覚に近いのは『ワークライフシナジー』だと思います。基本はこれらが切れる理由もなく相乗効果の関係です。人間の脳は朝起きてから13時間しか集中力が持ちません。そこから先は酒酔い運転と同じ集中力しかありません。そういう時間に仕事をしていると、本人は仕事をしているつもりだけど生産性はとても下がっているので、ミスだらけだったり、『すごい企画を考えた』と思っても翌朝見ると、平凡な話を書いていたり、ただ疲れてハイなだけなんです」

「12時間労働の人と8時間労働の人の生産性を比べると、4日目で逆転しています。本人はすごい頑張ってるつもりでも、全然仕事になってない状態です。だから一番基本となるのは実は睡眠。この睡眠をきちんと取れるような帰宅時間と出社時間にインターバルがあいているかどうかを基本につくらなかったら、そもそも日中の生産性が落ちてしまいます。日中の生産性が一度落ちると、それが理由で残業が発生し、また睡眠が削られるので翌日もっとミスするという、抜け出せない負のスパイラルに入っていきます。いかに『しっかり寝る』というすごく当たり前のライフを取るかによって仕事が捗り、早く帰れます」

「そうすると仕事外のコミュニティに行くこともできるようになり、そこでできた人脈が自分だけではどうにも立てられなかった企画を解決するような人脈だったりします。これが『ワークライフシナジー』で、好循環に入るのか悪循環をぐるぐるやってるのかっていうこの違いです。そのために生産性の根底にある睡眠をまず1回しっかりとるというこのスタートが一番大事です」

先進国で最低の生産性 『フラリーマン』を変える

――生産性が落ちている生活が長く続いて、趣味がなくなり、仕事をするしかないから仕事するという悪循環に陥るケースもあるかもしれませんね。

「まさに今、企業の意識がすごく変わってきています。労基法の改正で大企業に労働時間の上限ができたことで、『何時になったら帰ってください』と従業員に言い始めました。企業側が衝撃だったのは、会社からは出ても中間地点の新橋辺りでフラリーマンとなる人たちが大量発生しました。それまでの生活でライフが充実していないと家族から歓迎されない、もしくは行きたい趣味がないので行き先がない。残業代を減らされて、飲み代だけがかさんで、会社にものすごく不満をためる層が出てきました」

「これで会社が気づいたことは『自分が早く帰って会いたい家族』とか『早く帰ってやりたいこと』っていうのがない人は『自分の仕事の生産性を上げよう』という内的欲求がないということです。その蓄積がOECD(経済協力開発機構)の34カ国で、日本の生産性は21位とか20位。これは先進国の中で言うと20年以上ずっと連続で最下位なんですね。時間は一番長くて生み出している付加価値は一番低い。この大きな要因って、家族と断ち切るような、趣味を持たせないような会社に縛り付けるような仕事の仕方を長年させてきたことによって、戻りたいと思った時にはもう向こうが待ってなかったというようなビジネスパーソンを大量に生み出してしまいました。企業はやっと気付いてどうしたらしっかりと家庭との絆や自分でやりたいことをもう一度持ってもらって、『内的な生産性を上げたい』という気持ちをどう起こしていくかを必死でやっていて、私たちもそのお手伝いしています」

(この企画は日経とC Channelが共同で展開しています)