2021/3/28
「ミライ」のボディーカラーは、今回の試乗車がまとっていたオプションの「プレシャスホワイトパール」を含め、全8種類から選択できる。洗車などによる小さなすり傷などを自己修復する「セルフリストアリングコート」が全車に標準採用されている

同程度のEVよりも軽い

新型ミライの乗り心地とハンドリングはちょっとしたものだ。車体姿勢はとにかくフラットに安定しているのに、路面の凹凸はしなやかに吸収して、加減速や操舵(そうだ)による荷重移動にはしっとりと反応する。そして接地感はそれなりにビビッドに伝わってくる。

新型ミライの味つけ最終確認役を担当したひとりに、トヨタ社内で「匠」の称号が与えられる操縦安定性の名人、片山智之さんがいる(というか、今のトヨタの新車開発にはすべて匠がかかわるのが基本である)。片山さんは2~3代目「レクサスLS(当時の日本名トヨタ・セルシオ)」の開発では最前線に立って、当時のドイツ車と日本車との差をつくづく思い知らされたのだそうだ。新型ミライは、そんな片山さんが「ついにここまで来られた」と遠い目で語るトヨタ車である。

本革のシート表皮が標準仕様となる「Z」グレードの前席には、「快適温熱シート」や「シートベンチレーション」も備わっている
初代「ミライ」のリアシートが2人掛けだったの対して、新型では3人掛けとされた。センターのアームレストにはオーディオやエアコンなどの操作スイッチが内蔵されている

とはいえ、新型ミライはゴリゴリのスポーツセダンではない。ダンピングはあくまで柔らかく、路面のタッチは優しいが、ときにフワフワと大きめに上下するクセは個人的に気にならなくはない。ただ、いかなる場面でもロールやピッチングめいた動きが出ることはほとんどなく、水平姿勢が崩れることはまずない。なるほど、これぞ“フラットライド”の典型例といえば、そうかもしれない。

エンジンのような重くかさばるコンポーネントをもたない新型ミライは、前後重量配分がピタリ50:50に調節されている。さらに低重心でもあるが、EVのように重量物のカタマリ(=バッテリー)をおなかに抱えた人工的な低重心ともちょっと異なる。車重1.9t強の新型ミライは絶対的に軽いとはいいがたいが、かといって、車体サイズや航続距離でこれと比較対象になるEVは、優に200~300kg、場合よっては500kgも重い。つまり、これも一種のEVとみると、ミライは軽いのだ。

今回の試乗における、水素価格(1kg=1210円・税込み)から算出した1kmあたりの走行コストは17円(税込み)。現状ではハイオクガソリンを使用するEセグスポーツモデルと同程度の燃料コストといえそうだ

完全なシャシーファスター

GA-Lの中でもLSとの共通点が多い骨格構造や足まわりは、いかにけり出しから最大トルクを発生する電動モーターといえども、300N・m程度ではビクともしない。新型ミライは完全なシャシーファスターカーで、駆動するリアタイヤ周辺は安定しきっている。無理に振り回そうとしたころで、ジャジャ馬めいて暴れることはまずなく、良好な重量配分にステアリングは常にキッチリと効いて、アンダーステアにおちいることもない。いやホント、ロングホイールベースですこぶる安定しつつも、素直で軽快な旋回性は心地よい。

「ミライ」にはステアリングやアクセル、ブレーキだけでなく、シフト操作も車両が自動制御し駐車をサポートする「アドバンスドパーク」が標準装備されている
「アドバンスドパーク」で並列駐車を作動させた様子。車両が自動で行っているとは思えないほどのスピード感とスムーズさが確認できた

今回の新型ミライを乗り出した初日は、とても寒い日だった。満タンでの航続距離は約850km(WLTCモードによる参考値)をうたうが、一応の満タンで貸し出されたこの時点で、メーターに表示された航続距離は約550km。もっとも、その直後にエアコンのスイッチを入れると、その数字が即座に500kmを切ったのには笑った。律義というかなんというか、暖房が“燃費”にもっとも悪影響を及ぼすのは、ミライはやはりEVだからだ。

水素インフラがどうなるとか、そもそも水素なんてものを次世代の交通エネルギーとして使うべきなのか……といった、こむずかしい話をひとまず横に置くと、EVでありながら普通のEVほど重くもなく、ナチュラルに低重心で重量配分も良好なFCVは、純粋にとても気持ちのいい乗り物ではある。

(ライター 佐野弘宗)

■テスト車のデータ
トヨタ・ミライZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4975×1885×1470mm
ホイールベース:2920mm
車重:1930kg
駆動方式:RWD
モーター:交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター)
最高出力:182PS(134kW)/6940rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-3267rpm
タイヤ:(前)245/45ZR20 103Y/(後)245/45ZR20 103Y(ファルケン・アゼニスFK510)
燃費:135.0km/kg(WLTCモード)
価格:790万円/テスト車=826万9380円
オプション装備:ボディーカラー<プレシャスホワイトパール×ホワイトパールクリスタルシャイン>(5万5000円)/245/45ZR20タイヤ&20×8.5Jアルミホイール<ブラックスパッタリング塗装・ブラックナット付き>+カッパー加飾<インストゥルメントパネル、センタークラスター、ドアトリム>(12万7600円)/ITSコネクト(2万7500円) ※以下、販売店オプション 360度ドライブレコーダー(7万6780円)/フロアマット<エクセレントタイプ>(8万2500円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:3163km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:435.1km
使用燃料:6.12kg(圧縮水素)
参考燃費:71.1km/kg(満タン法)/68.0km/kg(車載燃費計計測値)

[webCG 2021年3月5日の記事を再構成]

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