スパコン富岳の世界一 起点は「2位じゃだめですか」『富岳 世界4冠スパコンが日本を救う』より

スーパーコンピューター「富岳」。「京」の跡地に設置された(提供:理化学研究所)
スーパーコンピューター「富岳」。「京」の跡地に設置された(提供:理化学研究所)

日本が世界に誇るスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」。年2回発表される「トップ500」というスパコンの性能ランキングで2020年6月、11月と2連覇を成し遂げた。日本のスパコンがトップ500で1位になったのは2011年11月の「京(けい)」以来だ。しかも富岳は4種類ある性能ランキングのすべてで2位に3倍以上の差を付けて1位を取った。京の開発から富岳まで何が起こったのか。新刊『富岳 世界4冠スパコンが日本を救う』(日経BP)から紹介しよう。

「2位じゃだめなんでしょうか」が残したもの

日本のスパコン開発の、ターニングポイントになったのが2009年に行われた「事業仕分け」だ。蓮舫参議院議員による「2位じゃだめなんでしょうか」の名セリフは、多くの人がご存じだろう。

当時の民主党が科学技術への理解がなかったことの象徴のように捉えられているこの発言だが、実際にはそういったものではなかった。

このとき仕分け対象となった「次世代スーパーコンピューター事業」とは、総額1230億円を費やし、1秒間に1京(けい)回の計算ができるスパコン「京速計算機」を開発するというもの。これが後に世界一になったスパコン「京」である。もちろん、その名前は1京回の計算能力にちなんでいる。

理化学研究所(理研)が中心となり、NEC、日立製作所、富士通が共同開発していたが、事業仕分けの半年前にNECと日立が開発から離脱していた。リーマン・ショックの影響による業績悪化が表向きの理由だが、両社が担当していた「ベクトル部」の性能が上がっていないということも背景にあった。

さらには米国での次世代スパコンの開発状況や、急上昇していた中国の状況から見ても、世界一を取るのは厳しいと思われたのだ。

蓮舫議員の発言は1位を取れなかったときに、このプロジェクトの意義がどこにあるのかを聞こうとしたものだった。1位でなくても企業が利用しやすいものであれば役に立つのではないかと、むしろ助け舟を出していた。

問題があったのは1位になることに固執した文科省側の返答であり、事業凍結の判定になったのは当然の帰結であった。

結局、政治的判断で予算は復活し、残った富士通と理研が開発した京は世界一になったが、蓮舫発言は、富岳の開発にも影響を与えている。

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