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イタリアとポルトガルの日常 ほっこり味わう郷土菓子

「ステファノ アンナ」のクッキーの詰め合わせ(税込み777円)は、味もたたずまいもイタリアの空気をそのまま運んできたかのよう
「ステファノ アンナ」のクッキーの詰め合わせ(税込み777円)は、味もたたずまいもイタリアの空気をそのまま運んできたかのよう

海外渡航が制限されて1年が過ぎようとしている。自由に行き来できる日が来るまで、現地の空気をそのままに伝えるディープな郷土菓子店で旅気分を味わうのはどうだろう。ヨーロッパの日常にどっぷりと浸れるイタリア菓子とポルトガル菓子の、いずれも都内の2店を紹介する。

イタリアの焼き菓子、「ホロッ」とした繊細な食感楽しんで 「ステファノ アンナ」(東京・吉祥寺)

人気の町、吉祥寺にあるとはいえ、JR中央線の吉祥寺駅と西荻窪駅のほぼ中間地点で、駅からは徒歩15分ほどの住宅地に静かにたたずむのが、「ステファノ アンナ」。店頭の冷蔵ケースには、ティラミスやカンノーリ、モンテビアンコ(モンブラン)など、有名なイタリア菓子も並ぶが、店のスペースの大部分を占めるのはイタリア各地の素朴な焼き菓子だ。その数60~70種類。一部は、現地のお菓子屋さんのように量り売りもしてくれる。

JR中央線の吉祥寺駅と西荻窪駅のほぼ中間地点にある「ステファノ アンナ」

イタリアの焼き菓子は、バターや砂糖よりも粉の存在が一番に感じられるものだ。この店の焼き菓子も一見素朴だが、職人が見えないところに施す隠し包丁のように細やかな仕事が潜んでいて精巧。それでいて親しみやすく飽きさせない。10年を超える常連客が多いことも、腕の確かさを証明している。

この店でまず手にしたいのが、中央に穴の開いたマーガレット形の郷土菓子「カネストレッリ」だ。華やかさはないが滋味にあふれ、「ホロッ」としたこの菓子ならではの繊細な食感に魅せられる。

カネストレッリはスペシャルバージョンもあり、食べ比べもおすすめ。右奥はカカオクッキーのココ

店主の石川晶子さんは、そのカネストレッリの故郷、イタリアのジェノバで修業した。修業先にジェノバを選んだ理由が、また面白い。調理師学校で調理と製菓を1年ずつ学び、2年生の時、卒業後の進路を見据えて母親と2人でパリを訪れた。お菓子屋さんを回るが、華やかな菓子を見てもなかなか心が動かない。日本へ帰る途中、父親がかつて仕事で縁のあったイタリアのジェノバに立ち寄った。地元の人が勧めてくれたお菓子屋さんをのぞき、たまたまカネストレッリを口にする。その瞬間、「ここしかない!」と修業先に決め、帰国。卒業後、単身ジェノバに渡った。

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ポルトガルの菓子は「働く人のおやつ」、赤ワインにも
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