ネット中傷「常習者」5タイプ もしかしたらあなたも

インターネット上での誹謗(ひぼう)中傷問題を題材としたテレビドラマ「アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~」がテレビ東京系列で放送されている。現実の世界でもSNS(交流サイト)を使った誹謗中傷やデマの拡散は社会問題化し、ようやく警察による摘発や被害者救済の取り組みが始まった。一方でこの問題が深刻なのは、誰もが加害者にもなり得ることだ。専門家はネット中傷の「常連」には5類型があるという。もしかしてあなたも当てはまりはしないだろうか?

ドラマ「アノニマス」の舞台はネット中傷問題に対応する「指殺人対策室」だ (C)「アノニマス」製作委員会

中傷やデマ摘発相次ぐ

「アノニマス」の舞台は、警視庁生活安全部に新設された設定の「指殺人対策室」。SNSなどネット上での誹謗中傷問題に対応する専門部署だ。対策室の捜査は、ネット上での「炎上」を苦に自殺した女性モデルの両親による相談から始まる。

ドラマを見て思い出されるのは2020年5月、フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラーの木村花さんがSNSで中傷され自殺したとみられる問題だ。警視庁によると、木村さんを中傷するツイッターの投稿は、死去するまでの2カ月弱の間に約200のアカウントから300件超確認された。中傷する投稿の多くは削除されていたが、復元するなどして捜査を進め、同年12月に大阪府の男を侮辱容疑で書類送検した。

18年には東名高速道でのあおり運転死亡事故を巡るデマが摘発された。事故を起こした被告の父親が、北九州市の建設会社の男性経営者であるかのようなデマをネット上で拡散させたとして、福岡県警が11人を名誉毀損容疑で書類送検。うち1人が在宅起訴され、5人が略式起訴されて罰金30万円の略式命令を受けた。全国の警察がネットを使った名誉毀損容疑で摘発した事件は19年には230件と14年の148件から1.5倍になり、増加傾向にある。

総務省や法務省も動き

総務省が今国会での成立を目指しているプロバイダー責任制限法の改正案は、中傷した投稿者の情報開示を迅速にさせようというものだ。これまでは情報開示を求めるため複数回の訴訟を起こす必要があり、費用や時間の面で被害者の負担が大きかった。改正法案が成立すれば、これらを1回の裁判手続きで行えるようになる新制度が創設される見通しだ。

法務省は20年12月、中傷被害を受けた際に求める対応に合わせてどの窓口に相談すべきかを判断できるフローチャートをサイト上に公開。IT企業がつくる「セーファーインターネット協会」が同年6月に開いた「誹謗中傷ホットライン」も掲載し、削除要請の代行を民間機関に相談したい場合などの窓口として紹介している。

ネット中傷問題は現実でも深刻な状況が続く(ドラマ「アノニマス」より (C)「アノニマス」製作委員会)

新型コロナが拍車

ただ、これだけ社会問題化しているにもかかわらず、同種の書き込みは後を絶たない。昨今では新型コロナウイルスの感染拡大に関連し、感染者を特定しようとしたりクラスター(感染者集団)が発生した施設を非難したりといった投稿が相次ぐ。

20年12月に新型コロナ誹謗中傷対策条例を施行した和歌山県では、同年10月~21年1月までに調べた匿名掲示板やSNSの書き込み約6万8000件のうち、13件を県民などに対する誹謗中傷と認定。プロバイダーに削除を要請した。条例では中傷の書き込みをした人物に対して県が削除を促したり「勧告」したりできることも規定。同種の条例を制定する動きは各地の自治体で広がり、「コロナ差別」の根深さを物語る。

針尾大嗣・摂南大准教授は、ネット中傷をする人は大きく5つのタイプに分かれると指摘する

だれもが陥る「5類型」

中傷そのものを止める術はないのか。サイバー犯罪に詳しい摂南大の針尾大嗣准教授(情報学・プロファイル分析)によると、ネット上で中傷を行う人物のタイプは大きく5つに分類できるという。以下にまとめてみた。

(1)「発散型」 普段抑えつけている怒りやストレスを瞬間的に発散したがる
(2)「自己顕示欲型」 周囲からの評価に不満があり、日ごろ満たされない自己顕示欲を満たそうとする
(3)「世直し型」 ゆがんだ正義感や価値観を持っていて、現実社会に対して自らの基準を押し付ける
(4)「ボーダー型」 好意を持つ相手に不当な扱いを受けたと感じると、自分を守ろうとして相手を非難する
(5)「ソシオパス型」 もともと攻撃的で人をたたきつぶしてやろうと考える

針尾准教授は、中傷投稿の多くが(1)~(3)のタイプによるものと説明する。「一般的な人格でありながら、自分が先に立っているので相手を傷つけている自覚がなく、誹謗中傷を止めにくい」。その上で「我々の誰もが、誹謗中傷の自覚なき投稿によって特定の人物を自殺するまで追い詰めてしまうことがあり得るということをまず認識しておくべきだ」と針尾准教授は戒める。

存在の希薄化も引き金に?

上記が個人の特性によるものだとするなら、ネットそのものにもある種、誹謗中傷を醸成しやすくしている傾向があると針尾准教授はいう。それが「没個性化」だ。没個性化とは、群衆の中にいると自らの存在が希薄になり、普段は抑えられている反社会的な言動が現れやすくなる心理現象だ。「インターネットという匿名で利用者の多い環境ではとりわけ、行動に対する責任が薄れ、さらに攻撃的になりやすい」と指摘する。「中傷対策としては事業者側の工夫やコミュニケーション教育の拡充も重要だが、こうしたネットやSNSの特性を理解した上で自制心を持って利用することが肝要だ」と訴える。

「死ぬなんて……」。第1話のクライマックスで、ネット炎上を仕向けて被害者を自殺に追いやった人物は悔やむようにこぼした。香取慎吾さん演じる主人公の刑事・万丞渉は重々しい口調でその人物を諭す。「人は誰でも、この指1本で傷ついてしまう。あなたが思っている以上に、人はもろいものなんだ」

(小安司馬)

アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~
(C)「アノニマス」製作委員会

テレビ東京系列で毎週月曜日午後10時放送。香取慎吾さん主演。動画配信サービス「Paravi(パラビ)」では本放送のほか、オリジナルストーリー「アノニマチュ!~恋の指相撲対策室~」も配信中。https://www.paravi.jp/title/63218
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