『すくってごらん』は、ミュージカル仕立てのシーンが多数。「歌は事前にある程度収録して、現場でも流しながら歌ったりしました。とにかく良い曲ばかりでしたので、単純に楽しく演じさせていただきました」

金魚すくいのコツは、待つこと

3月12日公開の初主演映画は、『すくってごらん』。ウォン・カーウァイ監督設立の映画祭「Journeys Awards」で審査員グランプリを受賞した気鋭・真壁幸紀監督が、「このマンガがすごい!2015」(オンナ編)にランクインした同名マンガを映画化した作品だ。松也さんは、左遷されてやって来た田舎町で、金魚すくい屋の美女・吉乃(百田夏菜子)らと出会って成長する銀行員・香芝誠を演じる。

「ずっと映画に出演したかったのですが、まとまった時間が取れないと難しい。今回はタイミングが良く、しかもまさかの主演という立場で参加させていただけるということで、お話をいただいたときはとてもうれしかったです。

脚本は非常にトリッキーで、急にラップでセリフを言ったり、歌ったり踊ったりする。しかもラップのシーンだけ、なぜか全編英語なんですよ。今までにないチャレンジングな作品を作ろうという心意気に、自分としてはグッときましたね」

香芝誠役を演じる尾上松也さん(c)2020映画「すくってごらん」製作委員会 (c)大谷紀子/講談社

「香芝は、ちょっと歪んだプライドや偏見が混在していて、人と素直に向き合いきれない銀行マン。僕自身も香芝と同じようにコンプレックスを抱えながらやってきましたので、共感できるところがありました。観客のみなさんにも共感していただけるように、うまく表現できたらいいなと思いました」

役作りで力を入れたのは、金魚すくい。水に漬けると破れやすくなる「ポイ」と呼ばれる道具を片手に、練習を繰り返したという。

「ある程度サクッとすくえるようにしておかないと撮影がスムーズにいかないので、事前に練習しました。コツは、待つことです。金魚すくいって、たくさん取りたいと思うから、どうしても追いかけてしまうじゃないですか。ですが、そうするとすぐにポイが破れてしまう。心を落ち着かせて、追わない、焦らない。ポイの上に自然と乗ってくるのを待って、すくい上げるイメージです。少しでも破れたら諦めがちですが、ベテランのみなさんには、その概念がないんですよ。ポイがひとかけらでも残っていたら、そこに引っ掛けてすくおうとする。人生も、諦めたら終わりですよね? 金魚すくいと出合って考え方が変わっていく、香芝の気持ちがよく分かる気がしました。

撮影は、奈良県で1カ月弱。その間、毎日みんなで顔を合わせて、この作品のことだけを考えて日々を過ごす。映画作りの醍醐味を改めて感じましたし、本当にスタッフ、キャストのみなさんに恵まれて幸せでした。歌も良い曲ばかりで、監督がこだわっていた日本ならではの美しい映像にも感動しましたね。この映画の唯一無二感を、みなさんに感じていただきたい。僕にとっては、一生忘れられない映画になりました」

次のページ
1カ月に10足以上、ナイキ愛が止まらない
MONO TRENDY連載記事一覧