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凍てつく海、衰弱するウミガメ5000匹救出 米テキサス

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

米テキサス州で、「骨まで凍るような寒さ」が停電や断水を引き起こした。同州のメキシコ湾沿岸のサウスパドレ島も予想外の寒さに襲われ、島民を挙げてのウミガメ救出作戦が行われた。

救出されたウミガメの数は4900匹以上だ。

これほどの数のウミガメが寒さで動けなくなったのは、米海洋大気局(NOAA)の機関、ウミガメ座礁・救助ネットワークが1980年に記録を取り始めて以来初めてのことだと、同機関のコーディネーター、ドナ・シェイバー氏は話す。その数は州全体で7000匹以上という。

テキサス州では、2021年2月の中ごろに北極圏から厳しい寒気が入り込み、気温が急激に低下した。ウミガメのような冷血動物の体温は周囲の温度に大きく影響される。そのため、サウスパドレ島周辺ではめったにないことだが水温がセ氏10度下回ったため、ウミガメの心拍数が下がり、意識はあっても動けなくなってしまった。

「ひれを動かして、呼吸のため水面から頭を上げなければいけないと分かっていても、体が言うことを聞かなくなってしまうのです」と説明するのは、サウスパドレ島でウミガメに関する教育、リハビリ、保護活動を行っている非営利組織「シータートル・インク」の事務局長、ウェンディ・ナイト氏だ。同組織は今回のウミガメ救助活動の指揮をとった。

救助されたあらゆる年齢、あらゆる大きさのウミガメが至る所にいるという。「ありとあらゆる場所です」とナイト氏は強調する。「お皿で言えば、サラダ皿サイズのウミガメから、ディナー皿サイズ、子ども用プールサイズのものも少なくありません」

そのうちの約500匹は動かず、救助センターに敷かれた防水シートの上でじっとしていた。みやげ物売り場まで含めて、すべての床がウミガメで埋め尽くされた。そのほかにも約4400匹(ほとんどがアオウミガメ、ケンプヒメウミガメ、アカウミガメ)が、島のコンベンションセンターに収容されていた。見かねた観光局が使用を許可したのだ。「建物内に、少なくともサッカー場1.5個分のウミガメがいました」

救出されていなければ、この寒波で島のウミガメは激減していただろうとナイト氏は言う。絶滅が危惧されるウミガメを40年にわたって保護してきた取り組みが帳消しになったほか、ウミガメが船にぶつかったり漁具に絡まったりする危険もあった。

これほどの数の動物を世話する苦労に加えて、当初、救助センターと広大なコンベンションセンターでは何日間も電力が使えなかったことが問題を大きくした。ただし、ナイト氏によれば幸運だったのは、寒さで動けなくなったウミガメは、徐々に温めなければならないということだった。暖房は使えなかったものの、屋内で防水シートの上にいるのは、水中に比べればはるかに暖かかった。

島民総出の救出劇

救助は海から始まった。21年2月13日から14日にかけて、商船や小型ヨットに乗った人びとが極寒の海を見て回り、低温のために動けなくなって水面に浮いている数百匹のウミガメを引き上げた。

21年2月16日になると、ウミガメが海岸に打ち上げられるようになった。救助のため野生生物に介入するタイミングを見極めるのは、保護活動家にとっても難しいことだが、今回は迷うまでもなかったとナイト氏は言う。この島のウミガメは、楽しみのために海岸で休んだりはしない。それが海岸にいるとすれば、苦しんでいるのは明らかだった。

長年シータートル・インクでボランティア活動を続けているジーナ・マクレラン氏は、海岸に行って数十匹のウミガメを救助し、自分のスバルのステーションワゴンに乗せて運んだ。何十人もの住民が、同じことをした。150年以上も生き、180キロ以上にもなるウミガメをトラックの荷台に引き上げるのは、少なくとも10人がかりだ。マクレラン氏によれば、16日の午後にはコンベンションセンターの外に、ウミガメを運んできた車の列が300~400メートルも続いたという。

「夕方6時まで列が途切れることはありませんでした。ウミガメを1匹乗せた車も200匹乗せた車も、じっと待っていました」とマクレラン氏は語る。ある5歳の少女とその家族は、ウミガメを運んできた次の日に、防水シートなどの物資を積んでもう一度やって来た。

ナイト氏は、島民の奉仕精神に心を打たれたという。「みなさん自宅の電気や水道が3日も4日も使えないという中で、ウミガメを救おうと1日15時間から18時間も働いてくれました。ガソリンも売り切れ、食料品店では水が売り切れていた状況ですが、それでもカメを助けに来てくれたのです。地域社会の懐の深さが表れています」

一難去ってまた一難

今回の大規模な救出作戦が行われる前まで、シータートル・インクのタンクにいたのは、もともと飼育されていたウミガメ5匹と、治療中のウミガメ38匹だった。その中のアオウミガメのアリソンも、アカウミガメのフレッドも、ひれが1つしかない。2月15日午前2時に救助センターが停電すると、タンクの水温が急激に低下した。スタッフは水からウミガメを出して、箱や防水シートに移さなければならなかった。ウミガメにとってはつらいことだったとナイト氏は説明する。

これを知った近隣のスペースX社ボカチータ・センターの技師らは、直ちに行動を開始した。2月17日の深夜0時を超えた頃に救助センターに到着した彼らは、ナイト氏によれば「見たこともないような巨大な発電機」を携えていた。「午前1時半には、私は駐車場に座って明かりがつくのを見ていました」

職員らは、収容中のウミガメは生き延びられると楽観しているが、タンク内の水を適温に戻すにはまだやらなければならないことがある。水温調整に使っていた10台のヒーターが停電ですべて故障してしまったため、シータートル・インクは、その交換のための資金調達に追われている。

新たに収容された数千匹を見守るセンターの職員やボランティアは、寒波が長引くことを心配していた。「一番やってはいけないのは、水温が十分上がる前にウミガメを戻してしまうことです」とナイト氏は言う。科学者らは島周辺の水温を監視しながら、セ氏13~18度程度に回復するのを待っていた。

その間にも、一番小さいウミガメの一部が目を覚まし始めた。小さい方が凍えるのも早いが、回復するのも早いという。「胸がわくわくします」と、小さなウミガメが意識を回復する瞬間についてナイト氏は語る。

「今は、なんてかわいいのだろう、と思います。でも、そうとばかり言ってはいられないかもしれませんね」。ウミガメが昏睡状態の間は、食べる、動く、排せつするなどの身体機能は停止しているが、目を覚ませばすぐに再開される。

ナイト氏は続けた。「早く暖かくなってくれないと、4700匹のウミガメが目を覚まして動き出してしまいますからね」

次ページでも、カメを救った人たちと救われたカメを写真でご覧いただきたい。

(文 NATASHA DALY、訳 山内百合子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年2月25日付の記事を再構成]

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