フランスではサケフレークが一般的に売られていないので、いつも自作だ。脂の乗ったサケの身を軽く湯どおしして、フライパンでほぐしながらいって酒や白だしや塩で味をととのえた自家製のサケフレーク。卵黄をのせたサケフレークTKG(卵かけご飯)は最高だ

そもそもサケとマスは見た目や味が酷似しているが、一体何が違うのだろうか。筆者が調べたところ、サケの仲間は、一生を淡水(塩分を含まない水)で生活するものと、一生のある時期、海水で生活を送るものとに分類できるらしい。

英語では、淡水生活オンリーのものを「trout」(トラウト、日本語訳はマス)、海に降るものを「salmon」(サーモン、日本語訳はサケ)と呼んでサケの仲間を区別しており、日本語もそれに準じているが、その名称の付け方は極めて曖昧なのが現状。例えば、「マスノスケ」という種。英語では「キングサーモン」と呼ばれる降海型の種なので、前記の区分にあてはめれば、本来「サケノスケ」とされなくてはならないはずだ。

パリ市内のスーパーのサーモン売り場にて。左がマスで右がサーモン。見た目に大きな違いはないが……

ここでふと筆者の頭に浮かんだのが、日本でもっとも有名なサケ缶のひとつ、「あけぼの さけ」。商品のパッケージには「からふとます」の表記が……。これは一体どういうことなのだろう?

販売元で、漁業、養殖、水産物の輸出入・加工・販売を手掛けるマルハニチロコーポレートコミュニケーション部の本島さんによると、「『あけぼの さけ』には、身質が缶詰に適しており、適度な脂質と軟らかさが味わえるとされる北海道東沖で獲れた旬のカラフトマスを使用しています」

1910年の誕生以降、100 年以上にわたり愛され続けてきたロングセラーブランド「あけぼの さけ」。魚のイラスト部分には「PINK」と描かれている(写真提供:マルハニチロ)

ちなみにカラフトマスは海に降りる種で、英語では「ピンクサーモン」と呼ばれている。よって、厳密に区別すると本来なら和名も「サケ」なはずだが、なぜか「マス」なのだ。さらに発売当時のパッケージを見ると、「からふとます」の表記がない。当時は原材料の表示義務がなかったため、「さけ」およびピンクサーモンの「PINK」とだけ表記していたようだ。「現在は食品表示法のもと一括表示において原材料の『カラフトマス』を表示しています。加えて、お客さまへの誤認防止のため、あえて正面にも分かりやすく表示しています」(本島さん)

なるほど、サケとマスが併記されているのには消費者への細やかな配慮があったということか。とにもかくにも、サケ・マスの区別や呼ばれ方については古今東西、非常に複雑なことは理解できた。実に奥深くそしてまか不思議なサケの世界だ。