「にぎり」も「巻き」もサーモン。フランスの「Sushi」にサーモンは不可欠。サーモンオンリーのラインアップもよく見かける。サケ・サーモンの養殖については、食の安全性やサステナビリティといった観点からヨーロッパでは語られることが多いが、日本ではどうか

さて、サケの仲間たちについてだいぶ理解が深まってきたところで、なぜそれらが私たちの生活にこんなに身近な存在になったのかも探ってみよう。意外なことに、元来日本では、サケを生で食べる習慣はほとんどなかったようだ。というのも、天然のサケやマスは、アニサキスなどの寄生虫を持つことが一般的。 そのため「サケは生食できない」という定説があり、「荒巻ザケ」などのように保存方法を高める加工をした塩蔵物が一般的に消費されていた。

「サケ缶の発明」という革新があったのは1910年のこと。これによりサケの保存・簡便性が飛躍的に進歩したうえ、第2次大戦後、「サケ・マスふ化事業」の技術向上により北海道のサケ・マス漁獲量が増加。誰もが食べやすい「サケフレーク」などの加工品が開発された結果、サケの消費量は大きく拡大した。

しかし、1970年代後半には「200海里水域制限」などの相次ぐ海洋規制により、国内における天然のサケの供給が伸び悩む。一方、海外では1980年代後半以降、ノルウェーやチリを中心にサーモンの海面養殖が盛んに行われ、幾多の困難を重ねながら「身色や鮮度、脂乗りの良さ」をアピールできるものにまで到達した。

そして日本では、この時期に相まった回転ずし店の伸長により、「生食可能なサケ」として輸入モノの「アトランティックサーモン」や「サーモントラウト」が出回り始め、現在のサーモン人気の礎が築かれることとなった。近年では、日本各地でも養殖のサケ・マスを地域ブランド化した「ご当地サーモン」に取り組む動きがあり、サーモンはますます「魚を食べる楽しみを広げる」重要なアイテムとして定番化している。

その証として、マルハニチロが全国の男女3000人に対して行った「回転寿司に関する消費者実態調査2020」によると、回転ずしでよく食べているネタは9年連続でサーモンが1位だ。そしてここフランスでも、アジア系の総菜店などで気軽に買える「Sushi」といえば必ずサーモンが入る。これほどまでに世界で愛されている魚があるだろうか。

「ここ最近では、『完全陸上養殖』の発展に注目が集まっています」と、マルハニチロの本島さん。これは、孵化場から種苗の育成、成魚に至るまでの養殖をすべて陸上のプールで行う、人手による完全管理の養殖方法で、日本国内でも大規模な養殖場の建設が始まっている。

「沿岸漁業での漁業権や、海面養殖による環境汚染の問題を解決する画期的な方法でもあり、今後の日本への『サーモン』供給にも大きく影響すると考えられます。マルハニチロでも、山形県でサクラマスの陸上養殖の実証実験を行っています」(本島さん)

天然のサケやサーモンは、広大な海の栄養を蓄えながらも、人間の住む生活圏に最も近くまで接近する大きな魚として、古来ほかの魚種とは異なる「人間とのかかわり」があった。本島さんはこう締めくくる。「この『人間とのかかわり』が文化として根付いていたことにより、『養殖サーモン成功への熱意』につながったのだと思います。このような貴重なサーモンが今後も人々から愛され続け、常に食卓を楽しませることを願っています」

酢飯と自家製サケフレークで作ったマルハニチロのレシピ「サケフレークの手まりずし」

普段、何気なく食べているサケとその仲間たち。その複雑で不思議な世界を一度知ってみると、いつものサケをより味わい深く感じることできるはずだ。マルハニチロがこの季節にイチオシのレシピ「サケフレークの手まりずし」を、酢飯と自家製サケフレークで作ってみた。桜の画像と一緒に、ステイホームでお花見気分はいかが?

(パリ在住ライター ユイじょり)

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