――化学部の醍醐味と課題は?

浅野 醍醐味はもちろん実験です。課題は、下級生の統率をとることですかね。

土屋 醍醐味はやっぱり実験です。教科書には一部が切り取られて書かれているだけです。でも自分で実験してみると全部がわかりますし、仮に失敗してもさらに化学に対する興味がわきます。

――今後の目標は?

浅野 部長として、引退まで務め上げることです。

土屋 化学部員としては、下級生にしっかり指導をしながらいっしょに化学を楽しめたらいいなと思います。個人としては、僕、負けず嫌いなので、最低でも化学グランプリの2次予選までは進みたいと思っています。

軽々と顧問を超えていく部員たち

物理部員のコメントに何度も出てきたのが榎村博仁さんだ。榎村さんの声がけによって、これまで何人もの生徒が自分でも気づかなかった才能に気づくことができた。ちなみに19年に国際物理オリンピックで銀メダルを獲得した卒業生は、柔道部員としても活躍する文武両道の生徒だった。大阪星光学院の物理部は決してオタク集団ではなく、兼部する部員も多い。

キリスト教の学校だが、まわりはお寺だらけ

いったいどのように物理オリンピック選手として育成するのかと、榎村先生に尋ねると意外な答えが返ってきた。「そういう生徒たちは、すぐに私が教えられるレベルを超えてしまうんです。国内で行われる物理チャレンジの優秀者が集う合宿に参加して帰ってくると、『あ、もう超えられたな』とはっきりわかります」と苦笑い。

「07年に初めて国際物理オリンピックに出場し銅メダルを獲得してから、国際大会が生徒たちにとっても身近なものになったようです。いまではオリンピック出場を経験した先輩が指導してくれることもありますから、それが力になっているのでしょう」(榎村さん)

たった1人の生徒の成功体験が学校の空気を変え、何年にもわたって後輩たちに影響を与える力をもつことがある。それが科学の分野のみならず、スポーツの分野でも芸術の分野でももちろん受験に関しても蓄積されていく。そのすべてが学校の文化となって、新しくそこに入ってきた生徒たちに作用する。学校とはそういう力をもつ空間なのである。

大阪星光学院中学校・高等学校(大阪市)
世界138カ国で約2500もの学校を運営する教育修道会サレジオ会によって1950年につくられた男子校。1学年は約190人で、高校から約10人の募集がある。2020年の京大合格者数は30人、東大は6人、国公立大医学部は36人。東大・京大・国公立大学医学部合格者数の直近5年間(2016~2020年)平均は92.2人で全国17位。卒業生には、吉本興業元会長の林裕章氏、精神科医の名越康文氏、俳優の内藤剛志氏、作詞・作曲家のヒャダイン氏などがいる。

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超進学校トップ10名物対決 (日経プレミアシリーズ)

著者 : おおたとしまさ
出版 : 日本経済新聞出版
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