――税金の使い道を自分で決められるふるさと納税を通じて、社会貢献や公的な分野への関心は高まってきていますか。

「ふるさと納税を4~5年やるとそういう意識が育ってくる。初めは返礼品がお得だからという理由で始めた人がほぼ100%だったが、自治体のお金の使い道などをブログなどで丁寧に伝えていくと、意識が醸成されていく」

「例えば、災害が起こったとき、被災地にふるさと納税できるよう毎年、自分で寄付枠をつくる人が出てきた。災害が相次いだ年には枠を使い切ってしまって寄付できず、残念がっていた。寄付したお金の使い道への関心は高まってきている」

――寄付文化は根付いてきたといえるでしょうか。

「日本に寄付文化は育たないという固定観念は少しずつ外れてきていると感じる。寄付白書によると、米国の寄付の市場は30兆円といわれる。人口が日本の3倍なので、米国並みの寄付文化があれば、日本では10兆円が一つの目標になる」

――日本の寄付市場が10兆円をめざすには何が必要だと考えますか。

「税制優遇が大事だ。ふるさと納税は寄付額の100%近くが控除される有利な制度だが、寄付先は自治体に限られている。これを大学や研究機関、NPOなどに拡大すれば、お金の流れががらっと変わってくる」

「寄付には2種類ある。攻める寄付と守る寄付だ。NPOはどちらかといえば『守る寄付』で、大学や研究機関は『攻める寄付』だ。大学や研究機関へのお金の流れは国力に関係してくるので大事だが、なかなかお金が回らない。ここに寄付が増えれば日本全体にとって大きなメリットになる」

――ふるさと納税は使う側の意識も変えます。

「ふるさと納税が1兆円規模になるのは今のままでは難しいと思うが、仮に1兆円になったとしても国の予算の1%だ。地方交付税の16兆円に比べても、それほど大きいわけではない。しかし、自治体が自由度の高いお金として意識できるのは大きい」

「例えば、寄付を受けるとすぐに自治体の口座に着金するので、災害時はこれがありがたいという首長が多い。国も特別地方交付税などで支援してくれるが、査定などがあって時間がかかるためだ。ふるさと納税の使い道を表彰しているが、今回はオンラインでの医療相談を始めた自治体が受賞した。基金にしておけば、コロナのような緊急時にも使いやすい」

「地方の人口減少は驚くほど早い。地域にあった新しい産業を生みだし、限られたお金を地域で循環させる仕組みを早くつくらないと衰退してしまう。ふるさと納税は自治体にとって自由に使える小遣いのような性質のお金だ。自治体は『攻め』に使い、今まで地域になかった産業をつくり出すきっかけにしてほしい」

(編集委員 斉藤徹弥)

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