検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

史上最古のDNAを解読 マンモス進化の定説が変わる

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

科学者たちが古代のゲノム研究における従来の壁を打ち破り、史上最古のDNAの解析に成功した。そして、氷河期の北米大陸にいたコロンビアマンモス(Mammuthus Columbi)やケナガマンモス(Mammuthus primigenius)の進化の謎を解き明かす新たな扉が開かれた。

これまでに配列を決定された最古のゲノムより倍近くも古い、100万年以上前のマンモスのDNAを解析した結果が2月17日付で学術誌「ネイチャー」に発表された。マンモスのゲノム配列が決定されたのは初めてではないし、この研究によってマンモスを復活させられるようになるわけでもないが、急速に発展している古代ゲノム研究の世界において、画期的な進展がもたらされたと言える。

今回のDNAは、マンモス研究における伝説的存在であるロシアの古生物学者、アンドレイ・シェルが1970年代初頭にシベリアで発見した3本のマンモスの大臼歯から採取されたものだ。3本のうち最も新しい歯の年代は約50万年から80万年前で、古い方の2本は約100万年から120万年前と推定されている。これまでに解析された最古のDNAは、カナダのユーコン準州で発見された70万年近く前の馬の化石のものとされていた。

「100万年という見えない壁を破ることで、新しい『時間の窓』が開かれたというか、進化的観点における新たな展望が開けたように思います」と、論文の筆頭著者であるスウェーデン、ウプサラ大学の生命情報科学者、トム・ファン・デル・バーク氏は言う。同氏はこの研究を行っていた当時、ストックホルムにある古遺伝学センターに所属していた。

今回の発見によって、マンモスの進化に関する科学的知見に驚くべき事実が加わった。まず、この古代のDNAは、北米の主要なマンモス種の一つであるコロンビアマンモスが、40万年から50万年前に交雑により誕生した種であることを強く示唆している。古い方のDNAの系統は、この交雑が起きるかなり前から存在していたことがわかったのだ。「脊椎動物のような高次の生物で、種の起源よりも古いサンプルが調査された例は他にないと思います」と、共著者である古遺伝学センターの遺伝学者、ロベ・ダレン氏は言う。

DNAをさかのぼればさかのぼるほど、科学者たちは進化の仕組みについてより良く知ることができる。この研究の成功はまた、条件が完璧に整ってさえいれば、ひょっとすると数百万年単位で、進化の過去をより深く覗き見られる可能性を示唆していると、著者らは述べている(それ以上古くなると、おそらくDNAは再構築するには小さすぎるほどバラバラに壊れてしまう)。

歯の分析が始まったのは、古遺伝学センターがロシア科学アカデミーからサンプルを受け取った2017年のこと。コロナ禍にはおなじみとなった防護服を身に着けて、遺伝学者パトリチア・ペチュネロワ氏(現在はデンマーク・コペンハーゲン大学の博士研究員)が率いるチームが、それぞれの骨から50ミリグラムずつ骨粉を採取した。これを溶液に浸し、少量のDNAを慎重に抽出する過程を経て、DNAはコショウの実ほどの液体に凝縮された。

「フェイスマスクとフェイスシールドを付けて、まるでまゆの中にいるようでした。汚染を最小限に抑えるためです」とペチュネロワ氏は言う。「たった1つの(ヒトの)細胞が試験管に入るだけで」サンプルが台無しになってしまう可能性があるのだ。

DNAの塩基配列の決定は第1段階にすぎなかった。次に、ファン・デル・バーク氏らのチームが、このDNAの断片が真に古く、真にマンモス由来のものであることを確認する作業を行った。

歯は微生物だらけの永久凍土に100万年以上もの間、埋もれており、発掘から50年近くの間に数え切れないほどの科学者に取り扱われてきた。汚染を防ぐために最善の努力がされてきたはずとは言え、ここまでの旅路で付着してきた余分なDNAと、チームは格闘しなければならなかった。

何週間もかけてコンピューターによる解析を行った結果、短いもので35塩基対からなるマンモスのDNA断片を識別し、実際には30億塩基対以上だったゲノムにそれらをマッピングできた。

従来説を覆す驚きの配列

この最新の研究はすでに、マンモスがどのように進化したのかという問いに新たな光を当てている。研究者たちが驚いたのは、このDNAの配列が、かつて北米大陸を闊歩(かっぽ)していた2大マンモス種のうちの1つである、コロンビアマンモスの誕生よりも古かったことだ。これが、マンモスの進化についてこれまでにない洞察をもたらしている。

150万年前までに、ヨーロッパとアジアに生息したトロゴンテリーゾウ(ムカシマンモス)の近縁種が、現在はベーリング海峡に覆われている陸橋を渡って北米にやってきた。彼らがコロンビアマンモスの祖先にあたる。

約10万年から20万年前までには、北米には少なくとも2種類のマンモスが生息していた。北のケナガマンモスと、メキシコにまで到達した南のコロンビアマンモスだ。過去の遺伝学的研究からは、コロンビアマンモスとケナガマンモスが交雑していたこともわかっている。

古生物学者は長い間、マンモスの特徴的な上顎の臼歯を使って種を区別してきた。従来、歯の化石からは、約150万年前以降に北米に生息していたマンモスは、コロンビアマンモスとされてきた。しかし、化石研究からは連続性が示唆されてきたのに対し、今回の遺伝的研究では、そこに明確な変化があったことがわかったのだ。

今回調査が行われたゲノムのうちの2つは、後にケナガマンモスが生まれた系統に属している。しかし、発見場所近くの川の名から「クレストフカ」と呼ばれる最も古い歯のDNAは、これまで知られていなかった遺伝的系統に属しているとみられる。この系統は、約150万年前に他の2本の歯を含む系統から分岐していた。

ファン・デル・バーク氏らがこの謎のマンモスのゲノムを、すでに配列が決定されていたコロンビアマンモスのDNAと比較したところ、驚くべき結論に達した。コロンビアマンモスは、40万年から50万年前に、シベリア、北米、またはかつて両者を結んでいたベーリング陸橋のどこかで、クレストフカのマンモスとシベリアのケナガマンモスが交配して生まれた種だったのだ。

約20万年前に北米で起こった2度目の交配の後、コロンビアマンモスはさらに11~13%のゲノムをケナガマンモスから得た。コロンビアマンモスが絶滅した約1万2000年前には、ゲノムの約5分の3がケナガマンモスに、残りの5分の2が、たった一つの歯からしか情報を得られていない、謎に包まれたクレストフカマンモスに由来するものとなっていた。

この研究はまた、マンモスがいかにうまく、そして早く、寒さに適応できたかを示している。これまでの古代ゲノム研究でも、ケナガマンモスがどのようにして寒冷な環境で繁栄したのかが分析されてきた。しかし、ケナガマンモスに寒さへの耐性をもたらした遺伝子の多くは、ケナガマンモスよりはるかに古いマンモスにすでに現れていた。今回の研究で、ケナガマンモスのこうした遺伝子の85%以上が、100万年以上前にケナガマンモスの祖先にあたるシベリアのトロゴンテリーゾウに存在していたことがわかった。

化石証拠によれば、100万年前までにマンモスはすでに高緯度地域に生息していたので、彼らが寒さを乗り切れるよう適応していたのは驚くべきことではない。しかし、今回の研究で、この適応の過程は独特のペースで進んだことがわかってきた。マンモスは、寒さに適応した遺伝子を突発的にではなく、多かれ少なかれ安定したペースで進化させてきたらしいのだ。

50万年以上前の北米のマンモスは何者か

コロンビアマンモスがケナガマンモスと謎のマンモスの交配種であったことが明らかになり、北米のマンモスの化石記録を再評価する動きに拍車がかかるだろう、と古生物学者たちは述べる。

マンモスの歯の化石を系統図と照合した最近の研究からは、歯の形状は北米全域でかなり似通っていたことがわかっている。今回の新しい研究でも、同様の点が強調されている。50万年以上前とそれ以降の北米のマンモスの歯に大きな違いはない。コロンビアマンモスを生み出した遺伝的な変化は巨大であったにもかかわらず、だ。

「DNAがなければ、通常は形態的なもの、形状の違いを見ることになります。形が違わなければ、種の違いはわかりません」。米テキサス州ウェーコ・マンモス国定公園の古生物学者、リンゼイ・ヤン氏はそう言う。「遺伝的観点が加わることで、差異が見えてきます。そのデータが得られるのです」

論文の共著者であるエイドリアン・リスター氏は、英ロンドン自然史博物館の古生物学者であり、世界有数のマンモス専門家の一人だ。同氏によれば、この研究はまた、研究者たちの中にある一つの緊張を浮き彫りにしている。DNAが発見されていない場合に、マンモスの歯をどのように定義するかということだ。

遺伝子的にみて、コロンビアマンモスが40万年から50万年前まで存在しなかったのであれば、全く同じように見えるより古いマンモスの歯をどのように定義すべきなのだろうか? これまでのところ、50万年以上前の北米のマンモスの歯のDNAを解読した報告はない。

このパズルを完成させていくためにダレン氏らは、今回の画期的な発見を可能にした自分たちの技術を、他の北米のマンモスの歯でも試してみたいと言う。今後、カナダで発見された50万年前のマンモスの歯と、おそらくケナガマンモスのものと思われる20万年前の歯の配列決定を行いたい考えだ。

100万年の壁が突破された今、さらに古いDNAからの情報が得られるのも時間の問題だ。「それこそ100万ドルに値する問いですね」とダレン氏は言う。「手元のデータを分析してきた上で思うのは、良いサンプルさえあれば、200万年の壁を超えるのは比較的簡単だろうということです」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年2月23日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
画面例: 日経電子版 紙面ビューアのハイライト機能
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_