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地球にあった退屈な10億年 空には虫も山もない世界

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ナショナルジオグラフィック日本版

もしもあなたが10億年前の地球を探検できたとしたら、目を引くものがないことに驚いただろう。樹木や昆虫をはじめ、空を見上げても鳥もいない。生きものは、どろりとした原始の海のスープに浮かぶ単純な微生物だけだった。

このほど2021年2月12日付で学術誌「サイエンス」に発表された新しい研究により、当時の地球になかった可能性のあるものが、もう一つ加わった。高くそびえる山々だ。

今日の地球の表面を覆うプレートは常に移動し、そのスローモーションのダンスは表面の地形を作り出している。大陸どうしが衝突すると地殻は厚くなり、ヒマラヤのような山脈が隆起し、空に向かって成長していく。

しかし、地下深くで形成された鉱物の一種ジルコンに刻まれた手がかりは、当時のプレートが今日のように常に動いていたわけではなかったことを示唆している。18億~8億年前にかけての「退屈な10億年」と呼ばれる時代に、大陸の地殻はどんどん薄くなっていったようだ。

薄くなった地殻は、「退屈な10億年」に生命の進化が停滞した原因かもしれないとも論文は指摘する。山々の成長が止まったことで岩石の侵食ペースがゆっくりになり、海の生きものたちへの栄養素の供給が減ったと考えられるからだ。

「当時の海は飢餓状態でした」と、今回の論文の筆頭著者で、中国、北京大学の地球化学者のミン・タン氏は言う。しかし、大陸が再び厚くなりはじめると、すぐにまた大量の栄養素が海に流れ込むようになり、より大きく、より複雑な生物への進化を促したようだ。

「この論文は答えよりも疑問を多くもたらしています」と、プレートテクトニクスを専門とするカナダ、クイーンズ大学の地球化学者クリストファー・スペンサー氏は言う。とはいえ全体的には、今の世界がどのようにして誕生したのかをよりよく理解するための「足場」になるかもしれないと評価する。

小さなタイムカプセル、鉱物ジルコン

タン氏は、チベット南部のヒマラヤ山脈の花崗(かこう)岩を分析していたときに、その中に含まれるジルコンの不思議なパターンに気がついた。ジルコン結晶の化学的性質が、その結晶を取り囲む岩石が形成された時代の大陸地殻の厚みに応じて変化していたのだ。

ジルコンは地球の内部でマグマが冷えるときに形成される鉱物で、古代の地球の化学的状態を記録する小さなタイムカプセルになっている。この鉱物はほとんど壊れることがなく、地球が誕生して間もない時期に形成された44億年前のものまで見つかっている。

タン氏によれば、科学者たちはこれまで岩石に含まれるランタンとイッテルビウムという希土類元素(レアアース)の相対的な量を見て、大陸地殻の厚みを判断していた。しかし、地球が誕生した頃の岩石は今ではほとんど残っていない。そのため、岩石を使って地球の古い過去を調べるのは難しく、地質史には大きな空白がある。

「地質史の研究は、ページの4分の3が失われた小説を読むようなものだと言われています」と、オーストラリア、モナシュ大学の地質学者ピーター・カーウッド氏は言う。しかし、ほぼ永遠に変化しないジルコンは、地球の太古の物語の一端を明らかにしてくれる。なお、氏は今回の研究には参加していない。

タン氏のチームは、ジルコンを使って大陸地殻の厚みを推定する新しい方法を開発した。彼らは、ジルコン結晶に含まれるユウロピウムという希土類元素の量が、従来の岩石化学的手法で測定された大陸地殻の厚みと連動していることを発見した。

タン氏らは2020年9月4日付で学術誌「Geology」にこのモデルを発表し、さっそく使いはじめた。彼らは、これまでに調べられた1万4000点以上のジルコンのデータを世界中から収集し、その化学的性質が時間とともにどのように変化するかをプロットした。その結果、「退屈な10億年」の間に地殻がどんどん薄くなっていく、驚くようなパターンが浮かび上がってきたのだ。

タン氏はこのパターンを「まったく予想していませんでした」と言う。その期間は、これまでにわかっていた、古代の造山運動の指標が消える時期にも重なっていた。侵食と関連するストロンチウムの組成は大きく変化し、海の岩石からはモリブデンとウランがほとんど姿を消していた。リンを豊富に含む岩石もほとんどなくなっていた。

「これらの変化は、大陸地殻がもっと薄かったとする私たちのモデルによって説明できます」とタン氏は言う。

超大陸が「地球の毛布」に

地殻が薄くなった詳しい過程はまだよくわからないが、タン氏らは、プレート運動の減速が一因ではないかと見ている。連続的な隆起がなければ、山々の頂上は風と水による侵食を受けて、徐々に平らになっていくだろう。

さらに、プレート運動が減速したのは、ほとんどの大陸が集まって1つの超大陸を形成していた「退屈な10億年」の間に、地球表面付近の熱の分布が変化した結果ではないかという。

今から約21億年前に、超大陸ヌーナの形成が始まった。その後の小さな再編成を経て、12億年前に超大陸ロディニアが形成され、5億年近く存続した。この超大陸は長期にわたって地球を1枚の毛布のように広く覆い、地中の熱をその下に閉じ込めた。

超大陸の下に熱がため込まれた一方で、海洋地殻の下の温度は下がり、海洋プレートの速度が下がったのではないかとタン氏は言う。

熱が地殻をもろくした可能性も

クイーンズ大学のスペンサー氏によると、プレート運動の減速は地質学的な記録と完全に一致しているわけではない。プレートがたいして動いていないとする時期にもまだマグマ活動はあり、現在の北米の40%近くがこの時代に形成されている。

南カリフォルニアとカナダ北東部のラブラドル半島の間に線を引くと、そこから南東にある陸地はすべて18億年前から10億年前にかけて形成されたとスペンサー氏は言う。プレート運動がまったくなかったら、そんな変化が起こるはずがない。

プレート運動の減速という問題とは別に、超大陸の毛布というアイデアからはもう1つの可能性が出てくる。毛布の下に過剰な熱が蓄積すると、その上にある岩石も高温になって高い山々を支えられなくなり、地表は平らになっていくというものだ。

「グーイーバターケーキのようなものです」とカーウッド氏は言う。米ミズーリ州セントルイス名物のグーイーバターケーキはバターと砂糖をたっぷり使った濃厚なケーキで、「グーイー(gooey)」とは「べたべたした」という意味だ。このケーキは冷たいうちは形を保っているが、温まるにつれてドロドロになる。

「それがこの論文の核心だと私は思います」とスペンサー氏は言う。おそらく地殻が薄くなったのは、山々を作る地殻変動が停滞したからではなく、その作用の仕方が変わったせいという見立てだ。

米ペンシルベニア州立大学の変成岩地質学者のアンドリュー・スマイ氏は、薄くなった地殻と過剰な熱という組み合わせは、超大陸ロディニアを形成した大陸の衝突によって生まれた珍しい岩石を説明できると言う。これらの岩石は、地下の深さの割に高い温度で形成されたように見えるが、薄くて高温の地殻なら説明がつく。

タン氏は、断続的なプレート運動と薄い地殻の両方の要素について論文で議論しているが、はるかな昔の地球の姿については、わからないことがまだまだたくさんあると言う。氏のチームの研究は、「退屈な10億年」にさらに多くの謎をつけ加え、同時に一部の科学者がこれまでに提案してきたことを裏づけるものだ。おそらく、「退屈な10億年」は、それほど退屈な時代ではなかったのかもしれない。

「退屈だったとは思いません。決して静かな時代ではありませんでしたから」とカーウッド氏は言う。氏自身はこの時代を地球の「中年期」と呼んでいるが、なんと呼ぶかは関係ないと言う。重要なのは、この時代がほかの時代と大きく違っていたということだ。

「明らかに、何か面白いことが起きていたのです」とスマイ氏は言う。

(文 MAYA WEI-HAAS、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年2月16日付]

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