マイナーチェンジを受けた「ベントレー・ベンテイガ」のV8モデルに試乗。大きく変わった内外装デザインと、リアトレッド拡大やドライブモードの追加で磨きのかかった走りを中心に“元祖ラグジュアリーSUV”の進化を確かめた。
大胆に刷新されたデザイン
ベントレーによれば、2015年に発表したベンテイガは、ラグジュアリーSUVの先駆けであり、まったく新しいセグメントを創出したパイオニアなのだという。2000年以降、あまたのSUVがリリースされ、高級なモデルはプレミアムSUVなどと呼ばれてきたが、ベンテイガはそれらと一線を画す存在ということなのだろう。
プレミアムブランドとラグジュアリーブランドは何が違うのか調べてみたところ、前者はターゲットとするセグメントおよびユーザーを定め、機能や品質といった商品力を磨くことで、競合との差別化を図って立ち位置を確保していく一般的なマーケティング手法によってブランディングするのだという。対して後者は、そういった意識は薄く、つくり手が持つ独自の世界観をひたすらに磨き上げることで成立するのだそうだ。
ユーザーが選ぶ基準となるのは機能や品質といった相対的な価値ではなく、「ブランドの世界観という絶対的な価値」であるということらしい。つまりベンテイガを選ぶ動機は「ベントレーだから」ということになる。わかったような、わからないような、モヤモヤとした気分になるが、実際にベンテイガを目の当たりにすると「ベントレーなんだからすごいに違いない」と圧倒されてしまうのは確かだ。

大幅改良を受けて新型となったベンテイガは、大型化されたフロントグリルがより垂直に近くなり、丸型から楕円(だえん)形へと改められたLEDマトリクスヘッドライトは従来よりも外側の30mm高い位置へ移動したことで、押し出しが強くなっているから余計に圧倒される。ベントレーではおなじみのクリスタルカットガラスをモチーフにしたというヘッドランプは、自動車用としてはおそらく世界一きらびやかなこともあって、フロントマスクから放たれるオーラは一層強くなっている。そうした一方でボンネットの形状を変更し、先端を延長。開口部の位置が変更されたことで、正面から目に留まる隙間をなくした。

リアはさらに大胆に刷新されている。テールゲートが車幅いっぱいまで伸ばされたことで、こちらも開口部の隙間が後方からは目立たなくなった。「B」の文字をモチーフとした長方形から新たに楕円形へとデザインが変更されたテールライトは、従来の分割式ではなく一体式になった。さらに、ライセンスプレートをバンパー下へと移動したことでテールライト左右間にすっきりとした面が広がり、そこに配されるエンブレムが際立って見える。必要のないデザインエレメントをそぎ落とすことで洗練されていくという、シンプル&クリーンのお手本のようなデザインだ。
