TikTok発ヒット 注目の覆面シンガーソングライター特集 2021年の主役(2)

日経エンタテインメント!

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2021年に注目すべき若手を取り上げていく特集。俳優編に続く第2回は躍進が期待されるミュージシャンに焦点を当てる。

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瑛人を筆頭に、TikTokから火がつきブレイクするミュージシャンが増えている。最近は、TikTok内での楽曲の使われ方にも変化が見られることで、ヒットする楽曲のジャンルも多様化しつつあるようだ。 

TikTokで話題となった楽曲がチャートに反映されやすいのが、10代20代のユーザーが約6割を占める、音楽ストリーミングサービスのLINE MUSICだ。同社のコンテンツマネージャー出羽香織氏は、「以前は、ダンス動画のBGMに合うようなアップテンポな曲がTikTok内でブームとなり、LINE MUSICのチャートに多数入ってきていました。しかし昨年あたりから、弾き語りや、日常を記録した動画にマッチするような、落ち着いたテイストの楽曲が増えています。なかでもヒットトレンドとして、2021年も騒がせそうなのが、“覆面シンガーソングライター”と“チル系J-ラップ”です」と分析する。

2曲目のヒットが鍵に

りりあ。 2020年5月に配信した『浮気されたけどまだ好きって曲。』は、そのインパクトのあるタイトルとエモーショナルな歌声が受け、TikTokに多数カバー動画が上がり、LINE MUSICの週間チャートでも1位を記録。11月にメジャーデビューも果たした
もさを。 “女性目線のラブソング”を歌う男性シンガーソングライター。2020年春からTikTokにギターの弾き語り動画の投稿を開始。かけがえのない相手について歌った、初のオリジナル曲『ぎゅっと。』が話題となり、YouTubeの総再生数が1000万回を突破。その後も、『きらきら』『好きが溢れていたの』『会いたい』と出す度に話題となっている

「覆面シンガーソングライター」とは、顔出しすることなく活動を続けるミュージシャンのこと。『浮気されたけどまだ好きって曲。』が話題となったりりあ。や、『ぎゅっと。』などで注目のもさを。らによる弾き語りのカバー動画が多数投稿され、人気を集めている。「TikTokでは、カバー動画などをきっかけに、アーティストを知るケースも多いんです。今の若者たちは、見た目だけではなく、歌詞の世界観や共感できるかどうかをより重視している傾向があるので、覆面シンガーソングライターのヒットにもつながっていますね。なかでも、りりあ。、もさお。のような、2曲目以降もヒットを飛ばしているアーティストが21年も活躍を続けると思います」(出羽氏、以下同)。

Rin音 18歳からキャリアをスタートした現役大学生ラッパー。2020年2月にリリースした、恋人への淡い気持ちをメロウなサウンドに乗せた『snow jam』は、TikTokで火がつき、ミュージックビデオの再生数は1500万回超え。9月にHey! Say! JUMPが発売したシングルのカップリング曲『hearts color』の作詞作曲も手掛ける
変態紳士クラブ 大阪を拠点に活躍する3人組ユニット。ヒップホップとレゲエを軸に様々なジャンルを組み込んだサウンドが魅力。2020年2月にメジャーデビュー。同年4月に発売したEP『HERO』に収録する、ノスタルジックなサウンドとリリックの『YOKAZE』は、現在もストリーミングチャートでロングヒットを記録中

もう1つのトレンドである「チル系J-ラップ」とは、日常を切り取った叙情的な歌詞や、比較的ゆったりとしたメロディーを持つ日本語ラップのこと。カップル動画に多く使われ、TikTokに多数投稿されている『snow jam』のRin音や、ヒップホップにレゲエを合わせたメロウなダンスチューン『YOKAZE』で人気の変態紳士クラブが、その筆頭だそうだ。

「世界的なヒップホップ人気や、国内のMCバトル人気を受けて、若い子たちの間でのラップ人気はもはや定番化しています。ただそのなかでも、TikTok内で、若者たちの日常を切り取った動画のBGMとして使われ、LINE MUSICのチャート上位に入るラップ曲は、ゆるく聴けて歌詞が共感できる、チル系の日本語ラップが多い。本場の洋楽ラップはカッコよくても、歌詞が英語のため世界観に共感しづらいのも大きいのかなと思います」

(ライター 中桐基善)

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[日経エンタテインメント! 2021年2月号の記事を再構成]