2021年に注目すべき若手を取り上げていく特集。俳優編に続く第2回は躍進が期待されるミュージシャンに焦点を当てる。
瑛人を筆頭に、TikTokから火がつきブレイクするミュージシャンが増えている。最近は、TikTok内での楽曲の使われ方にも変化が見られることで、ヒットする楽曲のジャンルも多様化しつつあるようだ。
TikTokで話題となった楽曲がチャートに反映されやすいのが、10代20代のユーザーが約6割を占める、音楽ストリーミングサービスのLINE MUSICだ。同社のコンテンツマネージャー出羽香織氏は、「以前は、ダンス動画のBGMに合うようなアップテンポな曲がTikTok内でブームとなり、LINE MUSICのチャートに多数入ってきていました。しかし昨年あたりから、弾き語りや、日常を記録した動画にマッチするような、落ち着いたテイストの楽曲が増えています。なかでもヒットトレンドとして、2021年も騒がせそうなのが、“覆面シンガーソングライター”と“チル系J-ラップ”です」と分析する。
2曲目のヒットが鍵に


「覆面シンガーソングライター」とは、顔出しすることなく活動を続けるミュージシャンのこと。『浮気されたけどまだ好きって曲。』が話題となったりりあ。や、『ぎゅっと。』などで注目のもさを。らによる弾き語りのカバー動画が多数投稿され、人気を集めている。「TikTokでは、カバー動画などをきっかけに、アーティストを知るケースも多いんです。今の若者たちは、見た目だけではなく、歌詞の世界観や共感できるかどうかをより重視している傾向があるので、覆面シンガーソングライターのヒットにもつながっていますね。なかでも、りりあ。、もさお。のような、2曲目以降もヒットを飛ばしているアーティストが21年も活躍を続けると思います」(出羽氏、以下同)。


もう1つのトレンドである「チル系J-ラップ」とは、日常を切り取った叙情的な歌詞や、比較的ゆったりとしたメロディーを持つ日本語ラップのこと。カップル動画に多く使われ、TikTokに多数投稿されている『snow jam』のRin音や、ヒップホップにレゲエを合わせたメロウなダンスチューン『YOKAZE』で人気の変態紳士クラブが、その筆頭だそうだ。
「世界的なヒップホップ人気や、国内のMCバトル人気を受けて、若い子たちの間でのラップ人気はもはや定番化しています。ただそのなかでも、TikTok内で、若者たちの日常を切り取った動画のBGMとして使われ、LINE MUSICのチャート上位に入るラップ曲は、ゆるく聴けて歌詞が共感できる、チル系の日本語ラップが多い。本場の洋楽ラップはカッコよくても、歌詞が英語のため世界観に共感しづらいのも大きいのかなと思います」
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2021年2月号の記事を再構成]