球根ごと掘られるのに色が変わるのはなぜ?

人間の影響で花の色が変わったのだとしても、球根が掘り起こされることでそれ以外の個体が茶色くなるというのは、いったいどういうわけなのだろうか。

アンダーソン氏はこう説明する。「人間がやってきて、目立つものから採取します。掘り起こされた植物は、次の世代を残すことはできません。しかし、カムフラージュした植物は最後まで生き抜くことができます。こうして自然選択が起こるのです」

F. delavayiが繁殖できるようになるには、5年が必要だ。つまり、明るい色の個体は、その遺伝子を次世代に伝える前にすべて採取されてしまうかもしれない。人がよく来る場所では、1世代か2世代の間に灰色や茶色のDNAが大半を占めるようになった可能性がある。ただし、F. delavayi の遺伝子分析はまだ行われていない。

人間が他の種に影響を与えてきたことはよく知られている。アンダーソン氏は、漁の対象になることが多いタイセイヨウダラやカラフトマスなどの魚が小型化していることを授業で取りあげている。体が大きければ網にかかってしまうが、小さければ網をすり抜けることができる。つまり、やがて種全体が小さくなるということだ。

アンダーソン氏はこう述べる。「この論文では、動物でよく用いられてきた考え方を植物に適用しています。葉や花の色などの重要な特性に対する採取の影響をはっきりと研究テーマにした論文を読んだのは、これが初めてです」

人間が植物の特徴に影響を及ぼした例は他にも記録がある。たとえば、同じ中国の希少植物であるトウヒレンの一種は、よく摘み取られる場所では100年前より背丈が10センチほど低くなっている。米国東部に生息するアメリカニンジンも、この100年の間に小型化し、葉も小さくなっている。

牛氏によると、中国政府はF. delavayiに対する脅威が増していることを踏まえて保全状況を再評価しており、おそらくは保護を強化することになるだろうという。現在、どのくらいの数が生育しているのかはわかっていないが、最近の調査によれば、野生環境での生育数は減少している可能性がある。

「この論文で現状が記録されただけでも、第一歩として大きな意味があります」とルービン氏は話している。

(文 SARAH GIBBENS、訳 鈴木和博、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年2月11日付の記事を再構成]

ナショジオメルマガ