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ナショジオスペシャル

2021/3/10

ナショジオスペシャル

採取の多い場所、少ない場所

人間による採取が進化を促したという考えを検証するため、牛氏らは地元の植物学者らに協力を依頼してF. delavayiの生育場所と採取数について6年分の記録を入手、人間が立ち入りやすく大量に採取された場所と、立ち入りにくい岩場を特定した。さらに、分光器を使って場所ごとに植物の色を測定したところ、採取された度合いと花の色に相関があることがわかった。

立ち入りにくくほとんど人間が来ない場所では、F. delavayiは明るい黄色と緑色のままだったが、球根が大量に掘り起こされた場所では、くすんだ色になっていた。

人間がよく採取する場所では、Fritillaria delavayiの葉や茎、花が灰色や茶色になり、周囲と見分けがつきにくくなる(PHOTOGRAPH BY YANG NIU)

さらに、カムフラージュした植物がどのくらい見つけやすいのかを試すため、「Spot the Plant」というオンラインの実験も行った。岩場の画像からF. delavayiを探すというゲーム式の実験で、くすんだ色の方が見つけるのに時間がかかることもわかった。

「とてもすばらしく画期的な論文です」と、米ミズーリ州にあるダンフォース植物科学センターの進化生物学者マシュー・ルービン氏(本研究とは無関係)は評価する。

「人類は食料を得るために植物を栽培してきました。その結果、植物の姿かたちが何千年もの間に変わってきたことは周知の事実です。この論文は、人類が自然選択に介入した格好の例です。植物の姿が変わったことを裏付けているだけでなく、その変化と人間が与える圧力、この場合は採取圧との関係を明確にしています」

人間が間接的に植物の適応を促すことは珍しくない。植物の生育環境を変えることによって適応させるのもそのひとつ。しかし、この論文で示されているのは、それよりも珍しい人間と植物の直接的な関係だ。

米ジョージア大学の生物学者であるジル・アンダーソン氏は、この論文の結論を「非常に興味深い仮説」と表現する。ただし、人間がこのカムフラージュを引き起こしたという証拠をもっと示す必要があるとも述べている。

論文では、ヤクなどの草食動物が色の変化の原因ではないとしている。しかしアンダーソン氏は、高地で紫外線が強くなるなど、気象条件の変化が影響した可能性もあると考えている。

ルービン氏はこう述べる。「当然、他の条件がこの変化に影響している可能性もあるでしょう。気象や標高かもしれませんし、たまたま草食動物を見かけなかっただけなのかもしれません。しかし、採取圧と色との相関性は非常に強く出ています。採取圧が強い場所では、特に背景になじんだ色になっているのです」

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