検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

ユリ科の黄色い花、人目避け高地で目立たぬ色に進化?

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

中国南西部の高地で、ある植物が見つかりにくくなっている。

ユリ科バイモ属の一種、Fritillaria delavayiだ(クロユリもバイモの一種)。年に1度、チューリップのような黄色い花を咲かせ、葉や茎も明るい緑色をしている。

ところが、本来なら目立つこの花や葉の色が、灰色や茶色に変化している場所があるという。これは、最大の敵から見つかりにくいよう進化した結果ではないかと、研究者は考えている。その敵とは、人間だ。

中国と英国の研究チームが2020年11月に学術誌「Current Biology」に掲載した論文によると、Fritillaria delavayiが高い確率で採取される場所では、この植物がカムフラージュしている確率が高いという。

植物の中には、過剰に採取されると小さくなるものがある。大きなものは繁殖できるようになる前に摘み取られてしまうからだ。だが、植物が身を守るために目立たない姿に進化するのは、F. delavayiが初めての例かもしれない。この植物は気管支や肺の病気に効果があるとされ、古くから中国で伝統薬として使われてきた。

需要拡大で価格が高騰

F. delavayiは、少なくとも2000年にわたって薬として使われている。だが、高まる需要に供給が追いつかず、薬になる球根は1キログラム当たり約480ドルと高騰している。球根は小さく、親指の爪ほどの大きさなので、1キロの球根を集めるには3500本以上が必要になる。

バイモには栽培できるものもある。しかし、F. delavayiは高山の生育環境を再現するのが難しいうえ、消費者は野生の球根の方が効能が高いと考えがちだ。ただし、野生の方が効くことを示す証拠はないと、今回の論文の著者である牛洋(ニウ・ヤン)氏は言う。

11年、牛氏のグループはこの植物の受粉方法の調査に乗り出した。雄花と雌花が咲く年もあれば、すべてが雄花の年もあることに興味を持ったからだ。しかし、その研究は失敗に終わった。印を付けた植物が掘り起こされ、研究対象がなくなってしまったからだ。おそらく、売られてしまったのだろう。

牛氏らは以前、カムフラージュして草食動物から身を隠す植物について研究していた。そのため、動物が食べないと考えられているF. delavayiに興味を持った。「人間による採取が、(進化を促す)強力な選択圧になる可能性があると考えたのです」と、牛氏はメールで回答している。

採取の多い場所、少ない場所

人間による採取が進化を促したという考えを検証するため、牛氏らは地元の植物学者らに協力を依頼してF. delavayiの生育場所と採取数について6年分の記録を入手、人間が立ち入りやすく大量に採取された場所と、立ち入りにくい岩場を特定した。さらに、分光器を使って場所ごとに植物の色を測定したところ、採取された度合いと花の色に相関があることがわかった。

立ち入りにくくほとんど人間が来ない場所では、F. delavayiは明るい黄色と緑色のままだったが、球根が大量に掘り起こされた場所では、くすんだ色になっていた。

さらに、カムフラージュした植物がどのくらい見つけやすいのかを試すため、「Spot the Plant」というオンラインの実験も行った。岩場の画像からF. delavayiを探すというゲーム式の実験で、くすんだ色の方が見つけるのに時間がかかることもわかった。

「とてもすばらしく画期的な論文です」と、米ミズーリ州にあるダンフォース植物科学センターの進化生物学者マシュー・ルービン氏(本研究とは無関係)は評価する。

「人類は食料を得るために植物を栽培してきました。その結果、植物の姿かたちが何千年もの間に変わってきたことは周知の事実です。この論文は、人類が自然選択に介入した格好の例です。植物の姿が変わったことを裏付けているだけでなく、その変化と人間が与える圧力、この場合は採取圧との関係を明確にしています」

人間が間接的に植物の適応を促すことは珍しくない。植物の生育環境を変えることによって適応させるのもそのひとつ。しかし、この論文で示されているのは、それよりも珍しい人間と植物の直接的な関係だ。

米ジョージア大学の生物学者であるジル・アンダーソン氏は、この論文の結論を「非常に興味深い仮説」と表現する。ただし、人間がこのカムフラージュを引き起こしたという証拠をもっと示す必要があるとも述べている。

論文では、ヤクなどの草食動物が色の変化の原因ではないとしている。しかしアンダーソン氏は、高地で紫外線が強くなるなど、気象条件の変化が影響した可能性もあると考えている。

ルービン氏はこう述べる。「当然、他の条件がこの変化に影響している可能性もあるでしょう。気象や標高かもしれませんし、たまたま草食動物を見かけなかっただけなのかもしれません。しかし、採取圧と色との相関性は非常に強く出ています。採取圧が強い場所では、特に背景になじんだ色になっているのです」

球根ごと掘られるのに色が変わるのはなぜ?

人間の影響で花の色が変わったのだとしても、球根が掘り起こされることでそれ以外の個体が茶色くなるというのは、いったいどういうわけなのだろうか。

アンダーソン氏はこう説明する。「人間がやってきて、目立つものから採取します。掘り起こされた植物は、次の世代を残すことはできません。しかし、カムフラージュした植物は最後まで生き抜くことができます。こうして自然選択が起こるのです」

F. delavayiが繁殖できるようになるには、5年が必要だ。つまり、明るい色の個体は、その遺伝子を次世代に伝える前にすべて採取されてしまうかもしれない。人がよく来る場所では、1世代か2世代の間に灰色や茶色のDNAが大半を占めるようになった可能性がある。ただし、F. delavayi の遺伝子分析はまだ行われていない。

人間が他の種に影響を与えてきたことはよく知られている。アンダーソン氏は、漁の対象になることが多いタイセイヨウダラやカラフトマスなどの魚が小型化していることを授業で取りあげている。体が大きければ網にかかってしまうが、小さければ網をすり抜けることができる。つまり、やがて種全体が小さくなるということだ。

アンダーソン氏はこう述べる。「この論文では、動物でよく用いられてきた考え方を植物に適用しています。葉や花の色などの重要な特性に対する採取の影響をはっきりと研究テーマにした論文を読んだのは、これが初めてです」

人間が植物の特徴に影響を及ぼした例は他にも記録がある。たとえば、同じ中国の希少植物であるトウヒレンの一種は、よく摘み取られる場所では100年前より背丈が10センチほど低くなっている。米国東部に生息するアメリカニンジンも、この100年の間に小型化し、葉も小さくなっている。

牛氏によると、中国政府はF. delavayiに対する脅威が増していることを踏まえて保全状況を再評価しており、おそらくは保護を強化することになるだろうという。現在、どのくらいの数が生育しているのかはわかっていないが、最近の調査によれば、野生環境での生育数は減少している可能性がある。

「この論文で現状が記録されただけでも、第一歩として大きな意味があります」とルービン氏は話している。

(文 SARAH GIBBENS、訳 鈴木和博、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年2月11日付の記事を再構成]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_