遠くまで移動しても安全?

多くの人が現在、親戚や友人と直接顔をあわせたのはもう何カ月も前という状態にあるが、ワクチン接種を受ければ、世界中を旅するのが安全になるわけではない。

「最終的には、人々が何に安心感を得るかという問題になるのだとは思いますが、忘れてはならないのは、現状、新規変異株がいつ、どこで発生するのか、そしてワクチン接種を受けた人たちに防御力があるのかどうかを予測できないということです」とリーファー氏は言う。「ワクチン接種を受ければ、その場で無敵の盾を手に入れられるわけではありません」

スワルツバーグ氏は、そう遠くないうちに、ワクチンを接種した人同士が少人数で集まるのは安全に感じられるようになるものの、飛行機での移動はまた別の話だと述べている。「空港や飛行機の中にはだれがいるかわかりません。あの飛行機やあの空港にはワクチン接種を受けていない人はあまりいないはずだと自信を持って言えるようになるまでには、まだ長い時間がかかるでしょう」

「普通の生活が戻る」までに、どのくらいかかる?

気楽に過ごしていた2019年の世界はもはや遠い記憶のように感じられるかもしれないが、ワクチン接種が進行していることを考えれば、レストランでの食事、通学、友人とのカラオケといった普通の生活の一端は、少しずつ手の届くものになっていくと思われる。

集団免疫に至るまでの途上でも、普通の生活が戻ってくる兆しは感じられるだろう。

「おそらく段階的な移行をへてパンデミック前の時代に戻っていくのではないかと、わたしは考えています」とモス氏は言う。最初のステップは、ワクチン接種によって感染者、入院者、死者の数を減らし、徹底した接触者追跡を効果的に実施できるようにすることだ。「追跡については過去にも検討されましたが、実際には米国全土で感染者数があまりに多くなり、追跡システムが圧倒されてしまったのです」

現在までのところ、ワクチンを接種した人は世界中で1億700万人以上にのぼる。米国では、人口の約3%がワクチン接種を完全に済ませている。現在のペースで進めた場合、9月中旬までには米国の人口の70%が、少なくとも部分的にワクチン接種を受けることになると推定される。研究者によると、集団免疫を確立するには、人口の75~80%の人がワクチン接種を受ける必要があるという。

リーファー氏は、創造的な流通・製造計画によって、ワクチン接種のスピードが上がることを期待している。「夏の終わりまでにはこれを実現して、学生たちが学校に戻れるようになってほしいと思っています」

ワクチンはどこへでも出かけられるようになる魔法のチケットではない。だが、ワクチンのおかげで、人々はリスクを減らして愛する人たちのもとへ早く戻れる手段を手にすることができるだろう。

(文 SHAENA MONTANARI、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年2月17日付の記事を再構成]

ナショジオメルマガ