コロナ禍に世界が巻き込まれ始めた2020年、各国の首脳が自国国民に状況や対策について語りかけるシーンが増えました。日本ももちろん、前首相が懸命に会見を開いていましたよね。私は各国の会見も注視していましたが、やはり他国首脳と比べて、どうも我が国の会見は弱いなあ、と思わざるを得ませんでした。

それは日本の前首相が原稿やプロンプターを見ていたからでしょうか? いいえ、そうではないのです。他国の首脳も原稿を用意し、場面によってはそれを読み上げていました。当たり前ですよね。大事な事実や数字を間違えるわけにはいかないのですから。

ただ、各国首脳の多くは事実や数字を読み上げると目を上げて、視線を強く、表情には誠意を込めて、国民に(実際はカメラに)アイコンタクトをして「このような行動をしてほしい」と語りかけることが多かったのです。淡々と事実を述べるときと、熱意を込めて聞き手に話しかけるときでは、その目や表情に違いがありました。

目線、表情、声は動いているか

「目線の使い方」「表情の変化」「声の強弱と抑揚」が言っている内容とリンクしていること。これが人を話で引きつけたい人にとっては何よりも重要なポイントです。聞き手にとっては、話している人の目線、表情、声の変化が、内容の要所要所に反応する手がかりとなるからです。

目線、表情、声、動作などはコミュニケーションにおける「非言語要素」であり、「言語」以上にコミュニケーションに影響します。感覚的に聞き手に作用し、無意識に話の内容に入り込みやすい状況を作るのです。非言語要素の使い方だけで思いや内容の伝わりやすさは全く違います。

プレゼンには言葉選びやロジックも重要ですが、コミュニケーションの一つであることを忘れてはいけません。しかも、1対多のコミュニケーションです。伝えたいことを多くの人にわかりやすく伝えるには、非言語要素は絶対に無視できません。

しかし、こんな言い方をするのは申し訳ありませんが、我が国の政治家のみなさんは非言語表現が乏しいと思うことが多いのです。重要なことを話す時にも、目線も表情も声もほとんど変化がなく、特に目に力がありません。これは政治家だけでなく、多くの経営者やリーダー職にある人も同様なのです。

私はふだん「エグゼクティブプレゼンス」(エグゼクティブらしい威厳や格のある雰囲気や振る舞い、リーダーとしての心得)についてトレーニングやコーチングをさせていただいていますが、その一巻の研修では、多くの方の「表情の無さ」が気になります。この表情の無さに関しては、日本は世界で上位にくるのではないかと思います。

多くの人が「目や口」を思い通りに動かせません。「熱意を込めた目」「人を元気づける力強い笑顔」など、リーダー的立場には必要な表情を必要なときに出せる人は非常に少ないのです。あなたの目や口は動きますか?

日本人はもともと「何も言わずにわかり合う」意識が強く、表現能力よりも読み取り能力に重きを置くという「ハイコンテクスト」傾向が強いといわれます。それが日本人らしいといっても、グローバル・スタンダードの現代ではそのような傾向に甘んじてはいられません。

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テレカンでの身ぶり手ぶりは「ノイズ」に
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