寒い季節になると食べたくなるのが「ドリア」や「グラタン」などのオーブン料理。特にドリアはファミリーレストランでも人気のメニューであり、残りもので簡単に作れるとあって、外食でも家庭料理でもおなじみの存在だ。とろーりと濃厚なソースとチーズの味わいは西洋の料理のようにも思えるが、実は日本生まれ。今回はドリアの誕生秘話や人気の秘密をひもといていこう。
ドリアとは「マカロニグラタン」の「おコメバージョン」とでもいうべき料理。ピラフなどのご飯の上にホワイトソース(ベシャメルソース)などをかけチーズをのせてオーブンで焼いたものである。これが誕生したのは横浜市にある老舗のホテルだ。
「ドリアはホテルニューグランド発祥のメニューでございます。誕生した年度は定かではございません。開業が1927年で、1935年のメニューには記載がございますので、おそらく1930年ごろではないかと推測しております」(ホテルニューグランド営業企画部の横山ひとみさん)
生みの親は初代総料理長のサリー・ワイル氏。同ホテル開業時にパリから招へいされたスイス人シェフで、フランス料理が専門だが、西欧料理全般に通じていたという。普段から「メニュー外のいかなるご要望にも応じます」と、国籍も多様な客からのリクエストに応え、さまざまな料理を作っては提供していたそうだ。
あるとき、外国人客からの「体調が良くないので、のど越しの良いものを」との要望を受け、即興で作ったものがドリア。バターライスにエビのクリーム煮をのせ、グラタンソースにチーズをかけてオーブンで焼いたものだった。
これが好評を博し、ホテルのレギュラーメニューに。さらにワイル氏の弟子たちによってほかのホテルや街の洋食店でも提供されるようになり、全国に広まっていった。今ではファミレスやコンビニ弁当のメニューにもなるほど一般的なメニューである。