――積極的なM&Aで拡大を続けてきました。

「新型コロナウイルスの感染拡大の前までは、M&Aを検討した企業の現場に全部足を運びました。アポは入れずに、ふらっと現場を見に行きます。もちろん、ある段階で私が現場を回っていることが相手企業に知られますが、それでいいのです。その時に『学研は本気なんだな』と思ってもらえるからです。学研も高額な投資をするので、心配だから足を運ぶのは当然です。社長みずから塾の教室を全部回った人はほとんどいないと思います。だから、他社と競り合った時も、金額で負けたことはあっても、同じ価格であれば学研に、という例が多いです。ただ、最近はコロナの影響で現場に足を運ぶ機会が減っているのが気がかりです」

「学研の中で一番仕事していると思います」と笑う。年間約1000冊の学研グループの出版物にはすべて目を通す

「1月にグループ企業化した保育大手のJPホールディングスも、先方の社長とよく会って話しました。そのほかに7~8年じっくり時間をかけてM&Aを実施した企業もあります。学研グループに入ったあと、初年度から最高益という企業が多いのです。学研の経営がうまいというわけではなく、M&Aに際して数字の表だけでなく、裏もしっかり見るようにしているからです。例えば、保育事業にとってのリスクは園児のケガが多いなど安全面対策が不十分なことが見過ごされている、といった点です。それは現場の事務所に実際に行ってみるとよく分かりますし、その点を社長に聞いたりします。相手企業がどこまで突き詰めているか、分かるまで徹底的に見るということです」

人事の話、納得できなくても理解してもらう

――社員との接し方で気をつけていることはありますか。

「気をつけているのは、言葉だけでは人は動かないということです。社内で人事の話をする際は、ものすごく時間をかけます。異動などで納得できないという人もいますが、少なくとも理解してもらえるまでしっかり時間をかけて話をします。押してだめなら引いてみるなど、その人に合った方法で話をすることも心がけています」

「社員との接し方も、企業のM&Aと基本は同じかもしれません。例えば2人の社員が同じ営業成績を上げていても、担当するマーケットが違えば評価は違うはずです。東京で1億円を売り上げた社員と、青森県で3000万円の売り上げを達成した社員がいたら、上の立場の人は青森の社員を褒めるべきです。M&Aでも表の数字だけでは見えない部分に思いを巡らせる。人材の評価や育成も、見えないところをどのように見えるようにするか。それに向き合う姿勢が大切だと思います。学研は子どもたちに探究心を持とうと伝えていますが、これは大人になっても大事なことだと思います」

宮原博昭
1959年広島県生まれ。82年防衛大卒、貿易会社を経て86年学習研究社(現学研HD)に勤務地限定社員として入社。兵庫県内の「学研教室」のフランチャイズチェーン事業を担当し、95年に阪神大震災を経験。2009年取締役、同年学研HD取締役などを経て、10年から現職。

(桜井芳野)

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