働き方改革で個人が創造性を刺激する時間が必要という

チャラ男を生み出す会社にしたい

白河 素晴らしいですね。無駄をなくし、多様な人材を育てて、新しい価値を生む仕事が生まれる動きを加速していこう、と。実際に斬新な新商品も生まれているそうですね。

橋本 象徴的なのは、18年にリリースした「Vitality(バイタリティ)」という保険商品です。加入後の健康診断の結果や、継続的な運動習慣など健康増進活動を評価して保険料が変動するという、お客さまの「健康増進」を応援し、リスクを「減らす」サポートをする商品です。これはある職員が南アフリカに面白い保険商品があることを見つけてきて、私に直接プレゼンしてきたことから始まったんです。最初は眉唾物に感じたのですが、あまりに熱心だったので現地に調査に行かせました。帰ってきた本人に話を聞くとなかなか面白くて可能性を感じ、開発へと動き出したという経緯です。この商品は、住友生命が自社だけで商品開発したのではなく、10社以上の企業と協業したという点でも画期的でした。

発案者の彼は社外のネットワークが広く、いろんな情報をキャッチし、斬新な企画に結びつけた。さらに、これを実現するための予算や人員確保には、他のベテラン職員が活躍してくれました。早稲田大学大学院ビジネススクールの入山章栄教授が「イノベーションを起こすために、『チャラ男』と『根回しオヤジ』のタッグが最強だ」とおっしゃっているのですが、まさに近い事例だと思います。チャラ男というと彼に怒られるかもしれませんが、要は多様な人脈と行動力を生かして「創造性」を担う人材であるという意味です。

白河 チャラ男と根回しオヤジのタッグ。面白いですね。

橋本 根回しオヤジというのは、企画を実現する橋渡し役となる存在です。この根回しオヤジは、サラリーマンの世界では自然に量産されやすいのですが、チャラ男のほうは自然発生しないんです。意識的に社外活動に充てられる時間をつくる環境を整えて、一定の確率で発生するのを待つしかない。だから、働き方改革が重要なんです。もちろん、みんながチャラ男になったら困るんだけど(笑)、一人でも生み出すためには個人が創造性を刺激する時間が必要だということです。

白河 ユニークなアイデアを取り逃がさないためには、何をすべきなのでしょうか。これまではおそらく、「そんなとっぴな企画は採用されないよ」と潰されてしまっていたケースが多いのでは。

橋本 ご指摘のとおりです。今、当社で一生懸命やろうとしているのは、創造的なアイデアを企画として育てるための恒常的なシステムの構築です。新規ビジネスを扱う部門を新設し、役員が意識改革できる機会も増やしました。毎月のようにスタートアップの経営者や旬のキーパーソンをお招きして勉強会を開催しているんです。この取材の前もそうだったのですが、今日は人工知能(AI)のレクチャーを(オンライン会議システムの)Zoomで開催し、課長クラス以上の役職者全員で聴きました。

白河 変化の時代に対応できる会社へと変えていこうとされているのですね。

橋本 特定の能力を身につけるというより、変化に機敏に対応できる力が重要になりますよね。外の世界にある面白いものを受け入れてコラボレーションできる器の広さのようなもの。「これしかダメだ」と自分の考えに固執するようでは、これからの時代は難しい。会社も自社単独の力だけでできることは、極めて限られてくると予測しています。働き方を変えなければ、イノベーションを生む人材は生まれません。朝から晩まで住友生命のことしか考えない働き方からは絶対に出てこないと思います。結果として、働き方を変えた人はパフォーマンスも上がるはずですから、放っておいても評価されるようになるでしょう。

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