2021/3/21
「M5コンペティション」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4990×1905×1475mm、ホイールベースは1980mm。車重は1940kgと発表されている

先代の7段DCTから、8段ステップATへとトランスミッションが代替されたのに合わせ、M5は現行型への世代交代時に駆動系をフルモデルチェンジしている。M5の歴史はここに至って、ひとつの大きな転換期を迎えたといってもいいだろう。

そんな現行型の最新バージョンへと乗り込んでスターターボタンをプッシュすると、前述のごとく標準仕様に対して25PSのエキストラパワーが与えられた心臓は瞬時に目を覚ます。ただし、その際に標準で装備される「Mスポーツエキゾーストシステム」から周囲に放たれるのは、早朝・深夜の住宅街では間違いなくはばかられる大音量! ライバルとなるAMGの場合とは異なり、うっかり「一番高いやつ持ってこい!」のノリで手を出すと、「こんなはずではなかったのに……」ということになりかねないのは、今も昔も変わることのない“ピュアなMモデル”ならではの要注意ポイントなのだ。

4.4リッターV8ツインターボエンジンは最高出力625PS/6000rpm、最大トルク750N・m/1800-5860rpmを発生
インテリアデザインは基本的に「5シリーズ」と同様。試乗車は「アラゴンブラウン/ブラック」のコンビネーションからなる、オプションのフルレザーメリノインテリアが選択されていた

速さはスーパーカー級

かくして“重厚長大”化の歴史をたどってきたM5最新モデルの重量は、前述のように新たに4WDシャシーを採り入れたこともあって、今やとうとう1.9t超。しかし、そこはそもそも4.4リッターという排気量の持ち主である。ターボブーストの高まりに頼るまでもなく、その動力性能はあらゆるシーンでヘビー級の車重を一切意識させないゆとりにあふれている。

さらに、ある程度以上にアクセルの踏み込み量を増し、有効なターボブーストが得られる領域へと入ってくると、このモデルの動力性能はまた新たな局面をうかがわせる。もはや「パワーは無尽蔵に湧き上がる」という印象へと至り、瞬時に前方へとワープをするかのごとく、何かに吸い込まれるかのような加速感が延々と得られることになるからだ。

試乗車は「M5コンペティション」に標準装備される「Mマルチファンクションシート」に、オプションのマッサージ機構を組み込んでいた
前後ドアにソフトクローズシステムを標準装備。リアシートの背もたれには、40:20:40の分割可倒機構が備わる

なにせ、0-100km/h加速は3.3秒というデータ。その速さは完全なるスーパーカー級だ。常識的な感覚の持ち主であれば、もはや恐怖心が先に立って「アクセル全開状態は1秒と維持できない」に違いないのが、このモデルの“速すぎる加速力”なのである。

かくして、絶対的な加速能力という点では注文などあろうはずもない一方で、そんな“常識外れ”のパワーユニット性能ゆえに、「V8サウンドや緻密な回転のフィーリングなどを、悠長に味わっている暇もない」という印象を抱いてしまうのもまた事実。今となって振り返ってみれば、M5というモデルの動力性能に最も刺激と感銘を覚えたのは、初めて400PSという大台に乗ったV8エンジンを搭載したE39型や、そこから世代交代してF1マシンを連想させるV10エンジンを搭載したE60型という、いずれも自然吸気エンジン時代のM5であったことを思い起こす。

過給機が付いて絶対的な速さが増した一方で、「フィーリング面でのエモーショナルさが薄れてしまった」というのは、ブランドを問わず実は今の時代にはありがちなハナシ。そして残念なことにM5の場合も、まさにその典型という印象なのだ。

荷室容量は、5人乗車の通常使用時で530リッター。リアバンパー下に足をかざす動作でトランクリッドの開閉が行える「オートマチックトランクリッドオペレーション」を標準装備している
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快適性に課題あり